私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

「新・台湾の主張」(その3)~「積極開放、有効管理」の対中経済政策

2005年08月02日 | 台湾
先日の陳総統のインターネット講演は「アジア太平洋情勢と安全保障」をテーマにしたものでしたが、終了後の記者との質疑応答ではそれ以外にもあれこれやり取りがなされていたようです。
万年野党が与党になった時のアキレス腱は経済政策だとよく言われますが、激動の21世紀に船出した陳政権も失業率や株価対策等種々苦心していたようです。もっとも、誰が舵を取っても一筋縄ではいかない感もある昨今の台湾の経済政策に関して、この質疑応答からも陳総統ならではの「新・台湾の主張」が感じられ、大変興味深く思えます。

◆陳水扁総統テレビ会議 質疑応答全文(台湾週報)

第二期李登輝政権から現在に至るまで、両岸の政治的緊張は一貫して高まりましたが、それと反比例するかのように両岸の経済的な結びつきは深化を遂げました。
李登輝政権時代は、規制緩和を図りつつも、台湾の技術や資金が中国へ流れることへの警戒から「戒急用忍」(急がず、忍耐強く)、「南向政策」(ASEAN諸国への投資奨励)という政策を敷いていましたが、香港やタックスヘイブンの投資会社を経由した大陸への闇投資が急増したそうです。まさに「上に政策あれば、下に対策あり」ということですが、台湾の対中投資に関しては、日本企業が台湾の企業と合弁会社を設立する形態での「日台合弁型対中投資」という側面も無視できないものがあります。(IT関連等電気、電子産業や自動車部品等が多いのでしょうが、新光三越に続いて、何と居酒屋「和民」のワタミフードサービスも合弁設立とは・・・・)
陳総統は台商の対中投資を尊重する姿勢を示しており、「積極開放、有効管理」路線はこうした現実を受けての政策変更なのでしょうが、「台商の経済活動は、台湾という母国があってこそのものだ」として、「台湾優先」「経済優先」「投資優先」「台湾に対する投資優先」という「四つの優先」策を呼びかけています。「積極開放、有効管理」のポートフォリオの割合としては、
『無条件で全面開放することはあり得ず、「有効管理」のもとでこそ、「積極開放」があるということです。「有効管理」がうまくできなければ、これ以上積極的な開放はしないつもりです』
と記者に回答しているように、「積極開放」というより「有効管理」の方に力点を置いているようです。当然のことながら、その背景には中国が台湾への武力攻撃を目論み、かつ「自由でオープンな市場経済の国、真の民主法治国家」ではない特殊な国であるという認識があり、対中投資や経済関係に伴う政治リスクへの警鐘も促しています。
手放しの対中投資自由化はあり得ないということを述べる際に、EU諸国の対中武器禁輸措置という効果的な例を挙げて一般化しているのは、選挙演説が巧みらしい陳総統の面目躍如といった感じで唸らされた次第です。陳総統が台北市長当時の政策を真似て、石原都知事がディーゼル規制を敷いた話は有名ですが、知的財産保護等の体制作りに言及している件等も含め、陳総統の優れた政策は我が国においても参考とすべき点が多々あると思います。
中国からの軍事的脅威に晒されている我が国においても、仮想敵国の中国に対して能天気かつ無批判な貿易や投資が許されるはずはありません。私が中学の頃でしたでしょうか、我が国の輸出製品がソ連の原潜に化けたという東芝COCOM違反事件というものが世間を賑わせましたが、中国の軍事的脅威が高まる一方の今日、対中COCOMという話が遡上に昇らないのが正直不思議でなりません。

何だか台中の経済関係は「ハリネズミシンドローム」を連想させます。寒い冬に、ハリネズミの夫婦がお互いの体で暖めあおうとして近寄るのだが、悲しいかなお互いの針で相手を刺し、傷つけてしまうので、なかなか近づけない。しかし、ある一定の距離を置くと、暖かくもあり、かつ刺し合うこともないという距離に落ち着くという話です。
蒋経國総統に倣い、「新国家十大建設」という公共事業政策を打ち出すことは出来ても、対中三不政策(近づかず、交渉せず、妥協せず)を今さら復活させるという訳にはいかないのですから、この「適度な距離感」を如何に保っていくかということと、「Win-Win」の関係を構築できるかどうかがが両岸の経済関係の焦点であるように思います。

PS:うぉっと!「アジアのトンデモ大国」様からTB頂いた記事なのですが、羽田の電源落ちに続くが如く(←関係ないって。しかし、今日は休みでダラダラしてましたが、これはテロかと思いました)またまた陳総統の主張が・・・・

◆陳水扁総統「中華民国は台湾だ」(読売)

「<3>李登輝政権時、『中華民国』は台湾に存在<4>2000年に発足した陳政権以降、『中華民国』は台湾」
この記事の記述だけでは、少なくとも半年前の私なら<3>と<4>の違いが全く判らなかったでしょう。
李登輝前総統の言う「中華民國在台湾」と言うのは、「中華民國は、建国以来独立した主権を有しており、〝現在は〟台湾にある」というもので、〝一応〟将来の流動的要素への含みも匂わせた意味とも取れるものだった(1991年に国家統一委員会を設立しています)のに対し、陳総統は、「中華民國=台湾」という固定化、最終完成系を宣言したと言うことですね。しかしまぁ、読売が台湾とか中華民國とかごちゃごちゃ書いているから更に判らないのですが、主権独立国家と言い出したのは別に陳総統が初めてではない訳で、不正確な記述と言うことになります。

写真・・・・東沙諸島の視察に向かう陳総統(総統府)

実は船酔いで必至の笑顔とか?

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