福岡伸一「プリオン説はほんとうか? タンパク質病原体説をめぐるミステリー」
ブルーバックスB-1504、講談社2005年
牛の狂牛病、ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病の病原体は何か?多くの研究者が懸命な探索を繰り返したが、全く分からなかった。そんな時、この病気にかかった動物の脳に蓄積する特殊なタンパクが発見された。このタンパク質が病原体であるのを発見したノーベル賞を受賞したスタンリー・プルシナーである。プルシナーはタンパク質をプリオンと呼び、その名が一般的になっている。
著者が「まえがき」で述べているように本書はプリオン説の解説書でも啓蒙書ではなくもう一度プリオン説をさまざまな局面から再検討してみようというだけあって、プリオン説の誕生、その弱点、再検討で分かってきたこと、さらに、この病原体はウイルスではいかと思わせる事実など、専門的な用語も多く、話も複雑ではあるが、ミステリーに迫る展開に興味をそそられる本になっている。
野口恵子『バカ丁寧化する日本語 敬語コミュニケーションの行方』光文社新書、光文社2009年
私は昔の人間だからか、今の日本語が気にかかって仕方がありません。テレビでも「では歌って頂こうと思います」と言ってすぐ歌になりますが、なぜ「では歌って頂きます」ではなくていちいち「思う」が入るのか分かりません。政治家でも行政の人も「・・・・と考えているところでございます」と言うのを聞くと、その考えが変わったら、と思ったり、その考えはすぐ変わるのではないかと不安になったりします。リクエストを聞いていると「ではメールのほういってみたいと思います」と何で「ほう」なのかも分かりません。
そんな私はこの本の帯に出ている実例その1「皆様にワタクシの政策をお訴えさせていただきたく」(選挙の候補者)、実例その2「[凶器の使い方を]ご自宅でもかなり練習されていたそうです」(若いアナウンサー)を目にしてこれは面白そうとすぐに買ってしまった本です。
まず、「させて」いただく」が取り上げられていますが、「都合により本日休ませていただきます」が不快という人とこのような表現が好ましいという人がいますが、日本語の丁寧化とともに店に低姿勢を求めるようになってきたというのです。「させていただく」を使わないなら「都合により本日臨時休業いたします」という日本語があります。歌手が昨年はCDを2枚出させていただきました」と言うと、別に我々がCDを出させてあげたわけではない、いったいだれに感謝しているのだろうと思ってしますというのも同感です。「おかげさまで、昨年はCDを2枚出すことことができました」という言い方があるではないかという著者の言葉に同感です。
さて、お訴えさせていただきたくですが、訴えには本来の意味からすれば、敬語にする必要のない言葉で、さはいわゆる「さ入れ言葉」。「切らせていただきます」にさ
を入れれば手っ取り早く謙譲語になるから、をも「拝命をしました」の時のように余分なをとなります。「さ入れ」「を入れ」「ら抜き」と読んでいくと、自分でも知らずに使っているような気がします。以上はほんの一例を紹介したに過ぎません。
(この本のどこにあったか)病院でもさんが様になり、看護婦さんが看護師になって何か突き放された感じがあり、買い物に行けばマニュアル通りの丁寧な言葉とは裏腹に顔も見ないレジと人間味が失せたような気がするのは、私が旧式の人間だからかもしれません。・・・・・ときりがありません。ともかく、言葉に関心のある人にはお勧めの一冊です。
ブルーバックスB-1504、講談社2005年
牛の狂牛病、ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病の病原体は何か?多くの研究者が懸命な探索を繰り返したが、全く分からなかった。そんな時、この病気にかかった動物の脳に蓄積する特殊なタンパクが発見された。このタンパク質が病原体であるのを発見したノーベル賞を受賞したスタンリー・プルシナーである。プルシナーはタンパク質をプリオンと呼び、その名が一般的になっている。
著者が「まえがき」で述べているように本書はプリオン説の解説書でも啓蒙書ではなくもう一度プリオン説をさまざまな局面から再検討してみようというだけあって、プリオン説の誕生、その弱点、再検討で分かってきたこと、さらに、この病原体はウイルスではいかと思わせる事実など、専門的な用語も多く、話も複雑ではあるが、ミステリーに迫る展開に興味をそそられる本になっている。
野口恵子『バカ丁寧化する日本語 敬語コミュニケーションの行方』光文社新書、光文社2009年
私は昔の人間だからか、今の日本語が気にかかって仕方がありません。テレビでも「では歌って頂こうと思います」と言ってすぐ歌になりますが、なぜ「では歌って頂きます」ではなくていちいち「思う」が入るのか分かりません。政治家でも行政の人も「・・・・と考えているところでございます」と言うのを聞くと、その考えが変わったら、と思ったり、その考えはすぐ変わるのではないかと不安になったりします。リクエストを聞いていると「ではメールのほういってみたいと思います」と何で「ほう」なのかも分かりません。
そんな私はこの本の帯に出ている実例その1「皆様にワタクシの政策をお訴えさせていただきたく」(選挙の候補者)、実例その2「[凶器の使い方を]ご自宅でもかなり練習されていたそうです」(若いアナウンサー)を目にしてこれは面白そうとすぐに買ってしまった本です。
まず、「させて」いただく」が取り上げられていますが、「都合により本日休ませていただきます」が不快という人とこのような表現が好ましいという人がいますが、日本語の丁寧化とともに店に低姿勢を求めるようになってきたというのです。「させていただく」を使わないなら「都合により本日臨時休業いたします」という日本語があります。歌手が昨年はCDを2枚出させていただきました」と言うと、別に我々がCDを出させてあげたわけではない、いったいだれに感謝しているのだろうと思ってしますというのも同感です。「おかげさまで、昨年はCDを2枚出すことことができました」という言い方があるではないかという著者の言葉に同感です。
さて、お訴えさせていただきたくですが、訴えには本来の意味からすれば、敬語にする必要のない言葉で、さはいわゆる「さ入れ言葉」。「切らせていただきます」にさ
を入れれば手っ取り早く謙譲語になるから、をも「拝命をしました」の時のように余分なをとなります。「さ入れ」「を入れ」「ら抜き」と読んでいくと、自分でも知らずに使っているような気がします。以上はほんの一例を紹介したに過ぎません。
(この本のどこにあったか)病院でもさんが様になり、看護婦さんが看護師になって何か突き放された感じがあり、買い物に行けばマニュアル通りの丁寧な言葉とは裏腹に顔も見ないレジと人間味が失せたような気がするのは、私が旧式の人間だからかもしれません。・・・・・ときりがありません。ともかく、言葉に関心のある人にはお勧めの一冊です。