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【52】車・容器を抱えた人々の列・機関坊 

 昆虫【26】を含む甲殻類の遠い祖先だと考えられている車(ミッシング・リンクをつなぐのは車海老である)だが、絶滅した現在では、莢沿道にぷっくりくるまれた化石として発掘されるのみである。失われていた神経組織や臓器などを機関坊(車坊。カーボーイとも。人間から分化【55】した〈坊〉の一属のうち坊走属にあたる)との融合によって取り戻した車は、乗物として活用されるようになった。失われた車掌【193】の代わりには、弾力性のあるプレーンな真似菌【312】をゴム製の皮膜で封じて接合してある。機関坊は我素【196】が少なく心珠【174】も持たないがゆえに、頭蓋を満たす球形の脳礁【85】は刻々と変化する地球と完全にシンクロしたカーナビゲーションとなる。放っておくと昏睡状態に陥るため薄荷プラグを鼻腔に差し込んで覚醒させねばならないし、剥き出しの神経でできたハンドルやクラッチを優しく握り、足裏からなるアクセルをそっと踏みしめるといった温かい触れ合いによって、透病【158】から守りつつ運転しなければならない。車は高草建築物【213】が路上に落とす樹液や果実(その成分には宿泊客の夢が含まれているため、タイヤ内部の真似菌【312】がなんらかの反応【176】を示すことが確認されている)を主食とし、車体後部の分泌孔からは可燃性の液体、つまりは化石燃料を分泌するため、停車しているとすぐに人々の列ができてしまう。四面【134】にできる行列が最も長いが、その七割はサクラ【59】であろう。

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