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【189】銀交

 銀交とは銀蠅の番(つがい)ばかりを集めた養殖場、番区(バンク)を起源としているため、当初から羽振りが良く耳障りだったようである。米不足の頃に仏舎利【25】の代用品として、死体に湧く蛆【250】を流通させるために創業された。米【25】も蛆もライスと呼ばれるのはそのためだ。銀シャリの語源もここにある。当時から二つのライスを舌の動きによって区別しようと区役所【106】では躍起になっていたが、その苦労は未だ報われていない。ただしステレオ放送などでお馴染みのLとR、つまり左右の概念が副産物として生みだされたのは幸運と言えよう。「もう右も左もわからないとは言わせない」運動も功を奏しているようである。
 代用米がポップコーン【九九】にとってかわられてからは、神事であるおじぎ【163】質屋【135】でしか扱えない人間以外なら何でも預かってくれる銀交として業務を続けている。事故の際の激痛などを見越して一括で預け【123】、分割で返済してもらう架空取引の需要は高い。契約者は、厄災師から投厄された微妙な痛みに堪えながら日々を過ごしている。他にも悔悟や執心などさまざまな保険が用意されているが、多くの人が契約しているのは死亡保険である。最近ではアコヤガイでの養殖も盛んになり極端に利率が下がっているものの、心珠【174】を預ければ、少なくとも決定的な死を免れることができるのだ。ただし、蟻【56】とは違って過去の足跡【42】を保証するものではないし、新聞記事として死が告知【28】された場合、心珠は何者かの手によって極秘裏に引き落とされてしまうので、警察【197】の捜査をもってしてもその行方をつかむことは困難である。

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【185】博士は知ったのだ【135】人質をとって立て籠もった犯人・狂言強盗【123】〈戦争を知らない大人たち〉が床屋に足しげく通い・美容院【81】舌鼓【25】仏教徒・米国

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