去る6月1日から4日まで、志賀高原は高天ヶ原のホテルを拠点にトレッキングを楽しんできました。
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C旅行社催行の3泊4日のバスツアーでしたが、旅行社が直接関与するのは各出発地~現地ホテル間の送迎だけで、ホテル滞在中はすべて自由行動という形式をとっており、しかも、送りのバスがそのまま3日前から来ていた客を乗せて帰るという、きわめて効率性を重視したユニークなものでした。
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6月1日
朝、千葉、津田沼を経て到着したバスに松戸の集合場所から乗車し、一路、外環道、関越道を通って、渋川・伊香保インターからは一般道を行き、途中、浅間酒造観光センターで昼食をとり、高天ヶ原の志賀パークホテルに着いたのは14時20分でした。
この日は、ホテル側から滞在中のオプションを含め諸事項の説明などがあったため、外出は見合わせ、温泉に浸かり、明日からのトレッキングに向け、英気を養った次第です。
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6月2日
ホテル主催のオプショナル・ツアー「自然探勝コース」に妻とともに参加しました。参加者は意外に少なく、44名中の16人でした。恐らく別行動をとった数組の山のベテランを除いては、温泉三昧を楽しんだ方々が殆どだったようです。
9時30分、マイクロバスにてホテルを出発。ガイドにはホテルのT課長が付き、案内してくれましたので、目の悪い私でも安心でした。
巡ったコースは、ホテルから30分程バスで行ったところの木戸池を出発点に、湿原や湖沼群、原生林などの大自然をトレッキングするものですが、その前に時間に余裕があるからと、木戸池にほど近い笠越ミズバショウ公園に案内してくれました。
この公園は、笠岳の雪解け水に育てられたミズバシ ョウの群生している湿原に木道をめぐらして公園としているもので、まずはミズバショウを観賞しつつ、一回りすること20分、トレッキン グに備えた絶好のウォーミングアップになりましたし、ここから見ると入道頭のような標高2076mの笠岳をバックに白樺の木々の連なる風景は実に爽快感を覚えるものでした。
ミズバショウはややピークは過ぎておりましたが、それでもまだまだ見応えは十分でした。また、黄色いリュウキンカも共生しており、目を楽しませてくれました。
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さて、木戸池までバスで戻り、さあ、いよいよ自然探索コースを歩くトレッキングに出発です。
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このコースは、本来、蓮池そばのロープウェイ駐車場 が起点となっているようですが、ガイドさんが我々の年齢層に配慮し、逆コースのほうが下りが多いのでと、気を利かせてくれ、木戸池から出発することになったわけです。
一般向けの一日コースで、全長5.5km、約3時間半の行程ということでした。
西から天気は崩れてきているようでしたが、今日一杯はどうにかもちそうということで、幸いでした。
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ガイドさんから標識板を前にコースの説明を受けた後、10時20分、木戸池を出発しましたが、まずはこの木戸池のご紹介から。
この池は、標高1620mの地点にあり、深さ6m、透 明度4m、PH6.5の貧栄養型湖沼で酸性度が低いため、フナ、ワカサギ、ニジマスなどが放養されているとか。そこには、いかにも鄙びた高原の池という風情が漂っていました。
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木戸池を後に山道を登ってしばらく行くと、ゲレンデ越しに田の原湿原が見えてきました。
この湿原は標高1610mに位置し、面積7.9ヘクタール、志賀高原で最も典型的な高層湿原で、ミズゴケ 類、モウセンゴケ、ヒメシャクナゲ、ワタスゲなどで覆われています。そしてこれらの植物の下にはミズゴケ類の遺体が腐敗せずに泥炭化して厚く堆積しているとのこと。
またこの湿原は、かつて佐久間象山が開田研究したところとして知られています。
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次いで一旦車道(292号線)を横切って進み、着いたところは三 角池です。その形状からミスマ池ともサンカク池とも呼ばれるこの池は、標高1630m、深さ8.5m、透明度7m、PH4.4の腐植栄養型湖沼で、主 として降雨と湧水で水位を維持してお り、酸性度が高いため、水生動物が少ないとか。周囲は亜高山帯に属する樹林に覆われ、近くにはオオカメノキの花が咲いているのが見られました。
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さて、三角池を後に更に歩を進めていくと、この辺りは熊の出没地域とみえ、「熊威し」が備えられているのが目に止まりました。熊を見かけたら、これを打ち付けると、カランカランという音がし、その音で熊は逃げ去るとか。
この辺りは日影湿原と言い、ミズバショウの群生地でもあるので、熊はそれを食べに現れるということです。そう言えば、先ほどの笠岳ミズバショウ公園の木道にも同じような「熊威し」があったことを思い出しました。
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更に進むと、根っこから木が一旦下に伸びた後、弧を描くように上に伸びている奇木があり、皆がそれを見て感嘆の声を上げる一方で、目立たぬようささやかに咲いているイワカガミの花が見つかるなど、変化に富んだ道程でした。
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11時40分、上の小池にさしかかりました。この池は、標高1570mに位置し、深さ4.9m、PH4.9の腐植 栄養型湖沼で、周辺は古い街道沿いにあったため、針葉樹が伐採され、今ではシラカンバ(白樺)やダケカンバなどの二次林が生育しています。
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12時丁度にほぼ中間点である長池に着きました。
長池は、海抜1584mに位置し、志賀火山の新しい 溶岩台地(南側・おたの申す平)と古い溶岩の丘(北側・ツツジヶ丘)の窪地にできた、志賀高原では3番目に大きな池で、流れ込む川はなく、雪解け水や雨水が溜まったもので、南側はコメツガなどの針葉樹の原生林、北側は伐採後に伸びてきたダケカンバなどの二次林になっています。
池の端で赤い綺麗な花を見つけました。ムラサキヤ シオツツジだそうですが、この辺りには高層湿原が形成され、かつては長池がもっと広がっていたと考えられています。
なお、この辺りは信州大学の志賀自然教育園になっていて、動植物を始め自然研究の場になっているようです。
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さて、ここでお昼の休憩ということになりましたが、その前に山道を10分程登ったところに通称たこ松と呼ばれる珍しい木があると聞き、有志のみ行ってみることにしました。
足場が悪くややきつい道でしたが、どうにか登り終えると、奇妙な形の木がありました。
この木はコメツガといい、岩の上など厳しい場所でも 成長できるとか。何百年と生き続けてきた自然のたくましさが感じられます。
なぜこんな姿になったのでしょうか。岩のまわりが下がったのか、根が大岩を抱くように土に向かって下へ伸びたのか。いずれにせよ、水や養分を求める根の強い生命力には驚嘆を禁じえません。
根は数えてみると8本あり、その数や形状から「たこ松」と呼ばれるようになったそうです。
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再びもと来た道を辿って長池に戻って、大きなダケカンバの下の切り株に腰掛けて昼食の弁当をとり、小憩後、再び292号線を横切って、木道に入り、ゴールの蓮池を目指し歩き始めました。
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10分ほど行った左手にまた池がありました。下の小池です。
この池は、標高1610m、最大水深3m、PH4.6の、 志賀高原で最も代表的な高層湿原の池とのこと。 池中に生息するミツガシワ(リンドウ科)は北方系冷水適応植物として知られ、またイモリが棲み、シュレーゲルアオガエルが産卵するとか。
何となく不気味さを漂わせている池ではありました。
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