萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

secret talk42 独占 ―dead of night

2017-12-08 22:51:13 | dead of night 陽はまた昇る
自分を映して、
英二side story追伸@第5話 道刻


secret talk42 独占 ―dead of night

「…ラーメン、」

いつもそればかりだ、君は。
外は夏の炎天、それなのに熱い丼かかえたがる。
それが君の笑顔くれるなら、異存なんて勿論ないけれど?

―なんでラーメンばっかりなんだろ、湯原?

もうちょっと「いい」とこ連れていきたい。
そのほうが空気「もつれこめる」かもしれな?そんな期待もある。
それでも箸の使い方きれいで、いつも見惚れている。

―ラーメン屋でも育ちの良さが出るんだよな、きれいで…どきっとする、

だから異存はないな?
本音つい微笑んだ湯気ごし、黒目がちの瞳こちら見た。

「…なに?」

なんで見てくる?

そんな無言が不審がち見つめてくれる。
どう言えばいいだろう?思案すこし笑いかけた。

「どうして湯原、いつもラーメン屋なのかな思って、」

単なるラーメン好き、とは思えない。
それくらい不慣れな躾うつくしい小さな手、ちょっと停まった。

「…変?」

問いかけてくれる瞳、やわらかな前髪を透かす。
黒目がち澄んだ眼はきれいで、惹きこまれる声が続けた。

「ぼ…俺、あまり行ったことなかったから…こういうの」

おだやかな深い声、かすかに羞かむ。
丼くゆらす湯気に小さな顔すこし赤い、その色もきれいで笑いかけた。

「こういうの、湯原は楽しい?」

楽しいなら嬉しい、錯覚を期待して。
楽しい理由が「自分と」だという錯覚、そうしたら君は離れない。

ほら、なんて言ってくれる?

「…、」

芳ばしい湯気くゆらす丼、長い睫うつむく。
炎天の真昼に熱いテーブル、すこし厚い唇そっと動いた。

「…はやくたべないとのびる」

ぼそり、

つぶやいた唇また箸たぐる。
黙々すする黄色あわい麺、それだけの返事。

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