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数学ほぼ0点なのに合格だったシステム会社がコワくて就職しなかった理系志向の文系です。「心を時空間で解説する」本とか原稿中

アメリカの覇権が終わり始めた第三次世界大戦。すでに「破綻国家」だったウクライナ。

2023-04-20 17:12:06 | 読むもの

ウクライナ紛争のために緊急出版されたエマニュエル・トッドの『第三次世界大戦はもう始まっている』。その後の紛争を巡る世界の展開を踏まえて出版されたのが本書『トッド人類史入門 西洋の没落』。サブタイトルの西洋の没落」は現況の世界の混乱をソ連邦崩壊直後から予期したもう一人の世界的な論者パトリック・J. ブキャナンの著作名を想起させます。彼はソ連崩壊直後から米国の崩壊をも予期しています。

2015年パリで週間新聞社シャルリ・エブドが襲撃された事件で、大規模な抗議デモが行われ、それが特定の宗教を批判するものであるためにトッドは『シャルリとは誰か?』を出版し、強く批判しました。そのためにトッドはすべての友人を失いましたが、逆に、それこそが自分の正しさを証明するものだと判断し主張を曲げることはありませんでした。

2022年2月以降、日本でも政府をはじめ専門家とマスメディアがロシア非難を繰り広げ、世論も全政党も同調し反ロシアの言説を連日繰り広げる情況は、シャルリ事件を巡りトッドが見た世界と相同です。大多数が特定のものをただただハゲシクdisる情況は民主主義の社会として健全ではありません。ヨーロッパではどこの国でも政府が英米NATOと同調してロシアを批判し、逆に市民は停戦やロシアへの理解や支持を示してもいます。日本ではマスメディアをはじめ多数あるいは主流な意見として反ロシア言説が満ちています。

ウクライナ紛争やロシアを理解しようとすることそのものが利敵行為だと専門家が叫ぶ中、公安調査庁までがネオナチへのWEBの注意喚起文を取り下げるほど。言論は一色に染まり、左翼政党の幹部がウクライナ軍の紋章入りTシャツを着て連帯を強調するパフォーマンス。この閉塞した雰囲気の中で風穴を開けてくれたのがエマニュエル・トッドの「文藝春秋」2022年5月号への寄稿でした。佐藤優氏は以下のように述べています。

 

   トッドさんが『文藝春秋』2022年5月号に「第三次世界大戦はすでに始まっている」と寄稿するまで、
   日本のメディアはウクライナ擁護一色でした。
   私は勇気が足りないので、『文藝春秋』には思っていることを書きませんでした(笑)。(P54)

 


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