朧堂の扉

その世界のどこかに、朧堂はあります。ここもまた朧堂の扉のひとつ。※多分にフィクションが含まれますので、ご了承下さいませ。

なにやら石が酒を飲みたいらしい、という夢を見た

2012-01-09 21:37:47 | Weblog
こんな夢を見た。


人がすれ違うのもやっとというような細い坂道の通りは、灰色の土が踏み固められて、
土間のように黒く滑らかだった。
そこは間口の小さな商店が連なり、今居る蕎麦屋も、その通りの中の一軒だった。

小さな蕎麦屋に、ぞろぞろと入ってきた客は、
男も女も一様に無口で、奥の壁際にずらりと並んだが、押し黙ったまま。
しかもその空気の重苦しいことといったらなんとも陰鬱で、
蕎麦屋の主も扱いに困っていることが伺えた。

偶偶居合わせた丸髷の女は二、三軒ばかり隣の石屋の女房だが、
石屋といっても墓屋ではなく、奇岩名石を扱っている。
その石屋の女房は件の団体客を一目見ては血相を変え、
「すまないねぇ、直ぐにどうにかするよ」と蕎麦屋を飛び出した。

石屋に戻った女房は、上がり框で手代に「うちのひとは?!」と吊り上った目で問うた。
手代曰く、主人は祝い事に呼ばれてしこたま飲んで帰って、今は二階の自室とのこと。
框の直ぐの急な階段の上に向かって
「あんた!瑪瑙石に水晶石、虎目石に玄武石、殺生石の姐さんまで!!」と。

驚いた様子の石屋の主人は転がり落ちるように階段を下り、
女房とともに蕎麦屋へ向かった。

そこでは先ほどと同じように壁に張り付くように七、八人の男女が立っている。
蕎麦屋は蕎麦屋で座を進めてよいか困り果てて居、
立っている者共も、勝手がわからず間誤付いている。

石屋の主が石共に問うてみるには、主人は何やら宴席で楽しんで帰った様子、
どれ我等も酒を所望、と思うて出かけてはみたものの如何に『楽しむ』ものか分らず
結局困っていたのだという。

石屋夫妻は、石共の為に石屋に一席、宴席を設けることにして、蕎麦屋に詫びて、皆を連れて帰った。




なんでしょう。日本昔話的な(?)夢でした。