21世紀の徒然草

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第79回「21世紀の徒然草」

2008年10月04日 | Weblog
一皮むけた医療

 わが尊敬する南原繁(戦後初代東大総長)のご長男、南原実氏(『沈黙の春』の訳者)は現在、東京と長野、秋田にそれぞれ居を構えておられる。東京におられる間はお招きいただくことがあり、いつも俗事を忘れる貴重な時間をご一緒している。実は近日、南原氏の肝いりで、北秋田市阿仁にて「これからの医療を考える―がんになっても、がんでは死なない―」市民公開講座が開催される。一皮むけた「地域の医療」について考える、まさに『メディカルタウンの地方(ぢかた)学』(to be出版)の個別実践である。

 2月の「30年後の医療の姿を考える会 市民公開シンポジウム」(聖路加看護大学)の記録集『メディカルタウンの地方学』が発刊されたのを受けて、出版記念会が催された。「遠方より朋きたる」頼もしい人たちが集った。時代の流れ・方向性を確認するひと時でもあった。

 『がん哲学外来の話』が小学館より発行されてから、いろいろ動きが出てきた。高松での日本産婦人科学会中国・四国合同地方部会総会には、「がん哲学外来—がん医療の隙間—」の特別講演に招かれた。島根県の出雲高校の同級生との再会の時であった。

 また、「横浜がん哲学外来」も先週スタートした。広島の患者会以来、院外に出て、『診察や治療でも、セカンドオピニオン』でもない、ただ患者やその家族と向き合うひと時をもった。「横浜がん哲学外来」事務局の溝口修氏の献身的な働きにはただただ感謝である。まさに「なすべきことをなそうとする愛」の実践である。「東久留米がん哲学外来」も今月スタートとのことである。さらに、今後の「お茶の水がん哲学外来」を含めた3拠点で、密に連携すれば、病院閉鎖型から地域開放型の医療の共同体を目指す「メディカルタウン」の「事前の舵取り」になる予感がする。

 先週は、お茶の水女子大学での公開講座「知ることは全ての第1-歩―アスベストとナノマテリアルを例題にして―」においては「アスベスト・中皮腫から発がんについて考える―先憂後楽—」。日本人類遺伝学会(横浜)のシンポ「がんオミックス研究の成果とその臨床応用」では「遺伝性腎発がん研究からアスベスト・中皮腫への臨床応用—橋渡し研究の実例—」で、それぞれ講演の機会が与えられた。

 「リスク評価」、「リスクコミュニケーション」は古くて新しいテーマである。「山極勝三郎・吉田富三」を輩出した日本国は、化学発がんの創始国である。21世紀は「環境発がん」の予防・診断・治療で日本国は世界に貢献する時である。