昨日と一転、曇り。
8時30分ロビーに集合。
「これからバスに乗り込みますが、このツアーでは6回バスに乗る機会があります。いつも同じ座席というのではみなさんのご不満もあろうかと思いますので、二組に分けて、前方、後方に偏らないようにしたいと思います」
仏ちゃんがメンバー表を配りだした。
19人づつA組とB組になっていて、ぼくたちはB組だ。
「これからブタペストまで、A組の方が前方の席、B組の方が後ろになります。明日は逆になります。よろしくお願いします」
経験から彼女が考え出した方式だ。
「こんな目印を作ったのでみなさんこれについて来て下さい」
成田空港で<紅葉の目印>を高く掲げて彼女は言った。
<もみじ>の目印といい、なかなかユニークな発想だ。
「私の名前が出ていません!」
突然声が上がった。
「えっ! そんな・・・」
仏ちゃんのちょっと受け気味の小さな口がぎゅっと噤んでいる。
両方とも19人づつ。合計38人。漏れているはずがない。
「あっ! 問題は解決しました。私のミスでした。ゴメンナサイ。Sさんを両方にダブって載せてしまいました。SさんはA組、KさんをB組とします」
「Kさんスイマセン・・・」
バスに乗り込むとあらためてお詫びのひと言から仏ちゃんの解説が始まった。
「今日はあいにく天気がはっきりしませんが、私は晴れ女ですからみなさん安心して下さい。一週間前出発したツアーは雪に見舞われてたいへんでした。みなさんは運がいいいのです」
仏ちゃんはなかなか強気なツアーディレクターだ。初っ端のミスにもへこたれていない。
「そうよ、寒波が襲来して、雪だなんて聞いていたから防寒具がかさばっちゃって・・・」
あちこちから声が上がった。
「これからハンガリーに入ります。これがハンガリーの国旗です」
仏ちゃんが国旗の絵を掲げて説明を始めた。
「赤、白、緑の横三分割です。赤は血を表します。白は純潔、緑は希望です。赤は血塗られたハンガリーの歴史を表しているのでしょうが、ちょっと気持ちが悪いですね」
「・・・」
「わたし、歴史が苦手なんです。どうせ現地ガイドの方が説明されると思うので省略させていただきます・・・」
仏ちゃんはしっかりしているようで、まだ20代だろうか、率直で乙女っぽいところもある。
彼女の話は、ハンガリー料理の作り方のに入ったのでぼくの耳を素通りしていった。
オーストリアを離れ、窓外には平和なハンガリーの田園風景が延々と流れていった。
─続く─
8時30分ロビーに集合。
「これからバスに乗り込みますが、このツアーでは6回バスに乗る機会があります。いつも同じ座席というのではみなさんのご不満もあろうかと思いますので、二組に分けて、前方、後方に偏らないようにしたいと思います」
仏ちゃんがメンバー表を配りだした。
19人づつA組とB組になっていて、ぼくたちはB組だ。
「これからブタペストまで、A組の方が前方の席、B組の方が後ろになります。明日は逆になります。よろしくお願いします」
経験から彼女が考え出した方式だ。
「こんな目印を作ったのでみなさんこれについて来て下さい」
成田空港で<紅葉の目印>を高く掲げて彼女は言った。
<もみじ>の目印といい、なかなかユニークな発想だ。
「私の名前が出ていません!」
突然声が上がった。
「えっ! そんな・・・」
仏ちゃんのちょっと受け気味の小さな口がぎゅっと噤んでいる。
両方とも19人づつ。合計38人。漏れているはずがない。
「あっ! 問題は解決しました。私のミスでした。ゴメンナサイ。Sさんを両方にダブって載せてしまいました。SさんはA組、KさんをB組とします」
「Kさんスイマセン・・・」
バスに乗り込むとあらためてお詫びのひと言から仏ちゃんの解説が始まった。
「今日はあいにく天気がはっきりしませんが、私は晴れ女ですからみなさん安心して下さい。一週間前出発したツアーは雪に見舞われてたいへんでした。みなさんは運がいいいのです」
仏ちゃんはなかなか強気なツアーディレクターだ。初っ端のミスにもへこたれていない。
「そうよ、寒波が襲来して、雪だなんて聞いていたから防寒具がかさばっちゃって・・・」
あちこちから声が上がった。
「これからハンガリーに入ります。これがハンガリーの国旗です」
仏ちゃんが国旗の絵を掲げて説明を始めた。
「赤、白、緑の横三分割です。赤は血を表します。白は純潔、緑は希望です。赤は血塗られたハンガリーの歴史を表しているのでしょうが、ちょっと気持ちが悪いですね」
「・・・」
「わたし、歴史が苦手なんです。どうせ現地ガイドの方が説明されると思うので省略させていただきます・・・」
仏ちゃんはしっかりしているようで、まだ20代だろうか、率直で乙女っぽいところもある。
彼女の話は、ハンガリー料理の作り方のに入ったのでぼくの耳を素通りしていった。
オーストリアを離れ、窓外には平和なハンガリーの田園風景が延々と流れていった。
─続く─
とっても分かりやすく楽しませてもらっています。
旅の仲間の方とのお付き合いも楽しい。
いろんな方がいます。
血で勝ち取った自由の歴史、
それも現実の話なんですね。
あちらではあなたのコメントに愛を感じています。今後とも期待しています。
よろしく。