昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

三鷹通信(219)第25回読書ミーティング(1)

2017-10-22 05:48:06 | 三鷹通信
 現役編集者が主宰する第25回読書ミーティングが、昨日三鷹市民協働センターで開催された。
 冷たい雨の降る中、10人が集まった。9か月の身重のKさんが参加されたのには感激した。

 最初は講師推薦のベストセラーとして、ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロが採り上げられた。
 
 1954年長崎県で生まれた日系イギリス人の小説家でロンドン在住。
 5歳まで長崎市に住まい、当時幼稚園の担任田中さんによれば、絵本をよく読んでいたのが特に印象に残っているそうだ。
 1960年、父親石黒鎭雄さんが英国立海洋研究所所長ジョージ・ディーコンの招きで渡英、北海で油田調査をすることになり、一家でサリー州ギルフォードに移住、現地の小学校に通う。
 1978年にケント大学英文科、1980年にはイースト・アングリア大学大学院創作学科にて作家マルカム・ブラッドベリの指導を受け、小説を書き始めた。
 卒業後に一時ミュージシャンを目指すも、文学者に進路を転じた。

 1982年に「遠い山なみの光」でデビュー。
 1989年に長編小説「日の名残り」でイギリス最高の文学賞ブッカー賞を受賞している。
 
 そして今回ノーベル文学賞を受賞した。
 
 <早川書房が邦訳独占契約>
 「遠い山なみの光」「日の名残り」の文庫化から早川書房が邦訳独占契約をすることになった。
 二代目の早川浩さんが創業社長の命で、翻訳したい有望作家の発掘のために米英を訪問。カズオ・イシグロを発見した。
 
 個人的な親交も深く、2015年ロンドンで専門演劇を専攻した息子、三代目の仲人をカズオ・イシグロ氏に頼んでいる。
 今回のノーベル文学賞の受賞には涙したそうだ。
 
 なお、「わたしを離さないで」は2014年ホリプロの企画制作で舞台化。
 
 2016年1月TBS{金曜ドラマ」で主演綾瀬はるかでドラマ化されている。
 
 いずれも、ボクはカズオ・イシグロの名前も知らなかった。
 それに引き換え、S講師は当初から彼に着目、イシグロの作品を数冊も持参。さすが、と敬意!
 
 ノーベル財団は、公式には出生地で分類する方針を採っているので、カズオ。イシグロへの授賞は川端康成、大江健三郎に次ぐ三人目の日本作家への栄誉として記録される。
 受賞直後のインタビューで彼は語っている。
「私はイギリス育ちだが、物の見方、芸術的な感性はやはり日本が影響している。親は日本人で、家では日本語が話されていた。誰もがそうであるように、親の目を通して世界を見ていた」
「川端さん、大江さんの足跡に連なることに感謝している」

 そして「偉大な作家に思いを馳せれば、真っ先に村上春樹さんが浮かんでくる」とも語っている。
 (早川浩氏から早川書房の地下にあるレストランで二人は個人的に紹介され、意気投合し、ジャズやジョギングの話で盛り上がった仲の村上春樹氏に先んじて受賞したことを気遣っての発言だろうか・・・)
「村上春樹さんも大好きだが、イシグロは我々英国人にとって偉大な作家」というのが、イギリスの本好きの多数意見であることが新聞で紹介されている。
 
 いつも有力候補になる村上春樹が<別格>の理由は?
 英国圏のみならず50数ヵ国語に翻訳されている村上春樹は「自分のことが書かれている」と世界中に評価される特別の作家であることは間違いない。
 しかし、普遍性はあるが個別の問題を突き詰めないところがノーベル賞に向かないのだろうか?

 明日はカズオ・イシグロの主要作品について・・・