”玲瓏”管理人のつぶやき

"玲瓏:羽生善治(棋士)データベース"管理人たいがーの独り言(HP更新情報含む)

第44回東急東横将棋まつり

2010年08月06日 | 羽生善治
 8月1日、羽生さんと連絡がとれる。「もし可能でしたら明日東急東横将棋まつりの出番前11:20に控え室に来てもらえますか?」名人就位式前の恒例のインタビューが流れたのでその代わりの時間だ。玲瓏クンでは一般の人が参加できる講演会はスケジュールに出しているが、それ以外・・・例えば企業や会員制の講演会などが他にもあり、スケジュールがいっぱいで早めの日時ではここだったのだ。

 8月2日、昨年の失敗を教訓に生かし、茶々丸さんと待ち合わせて8:45に東急百貨店の入り口前に並ぶ。中学生くらいの少年が1番。われわれが2、3番だ。週刊将棋を読みながら近況を報告しあっていて待つこと1時間ちょっとはあっと言う間。用意されていた席、最前列中央をゲットする。



 女流棋士会IT部長?のあさんと話。「あ、羽生さん、来てましたよ。入りが早いですねと聞くと、『ええ、今日はちょっと待ち合わせをしていまして』と言われてました。」あ、それ、自分のことだ、とお忙しいところをありがたく思う。この日の将棋まつりは西尾先生と連盟職員の方がUSTREAM中継をしていた。



 白瀧あゆみ杯1局目、初美ちゃんとマリカ号だが、11:15過ぎには茶々丸さんと控え室前に。将棋まつり司会の連盟職員の方に尋ねるも訝しがられる。関係者の出入りで控え室カーテンがめくれ、中で腰掛ける羽生さんと目が合い、「あ、この人たちは応援ページの管理人の方なので大丈夫です。」と招き入れてもらった。羽生さん含めプロ棋士の控え室は厳戒態勢なのだなあと感じる。まずはインタビュー前の2ショット記念写真。



『羽生さんへの質問 2010年08月02日 東急東横将棋まつり棋士控え室にて』

「名人、棋聖のストレート防衛おめでとうございます。今回はtwitterやねこまど将棋カフェでたいがーが募った質問を用意してきましたのでよろしくお応えください。」

[質問1]
最近はタイトル戦でもつれることが多かったのですが、今回のタイトル戦を拝見していると厳しく勝負に徹しているという印象もうけました。中原先生も、ある程度お年をめされてからタイトル戦の戦い方を変えたと聞いたことがあるのですが。タイトル戦を戦う上での、考え方・心構えの変化など、何かあったのでしょうか?
[回答1]
戦い方を変えたということはまだありません。従来と変わっていないと思います。ただ名人戦は名人戦、棋聖戦は棋聖戦で集中できたのが大きかったと思います。タイトル戦はもつれると後半交互にタイトル戦をこなさなければならないスケジュールになりますので、かなり調整が難しくなるんです。タイトル戦ごとに集中できたのが良かったですね。

[質問2]
将棋世界8月号の小暮さんのインタビューは読み応えありました。研究将棋について「一本の筋を細かく掘り下げるのではなく、何十本の道筋からどれを選ぶかの取捨選択だ」と言われています。三浦さんの12時間の研究時間も話題になりました。いわゆる研究将棋で、事前研究とその場での読みは、どちらが重要と考えられているでしょうか。例えば、名人戦第二局は、三浦さんの研究を羽生さんのその場の読みが上回ったという言い方もされるのですが、どのようにお考えでしょうか?
[回答2]
どちらかというよりはどちらも重要ですね。事前研究も重要なんです。事前研究があれば、それを起点に深く洞察することができます。事前研究がないといろんなことを考えなくてはなりません。もちろん、その場での読みは重要ですが、事前研究も重要と思うんです。

[質問3]
名人戦では、三浦八段の盤上没我の集中した戦いぶりがファンの間で話題になりました。以前羽生さんも同じように話題になったとは記憶しておりますが、実際に盤をはさんでいて、三浦さんの対局ぶりについて、何か感じられたことはおありですか?
[回答3]
9時間という長丁場でありながらずっと集中されていましたし、相当準備してこられたんだなとひしひしと感じました。

[質問4]
棋聖戦、深浦さんとは、これまでのタイトル戦において、毎回フルセットの激闘を繰り広げられてきましたが、今回の棋聖戦ではストレート防衛でかつ内容でも圧倒されていました。今回、指す上で意識的に変えられている部分などありましたでしょうか?
[回答4]
深浦さんは序盤から主導権をとるのがうまいんです。今回の棋聖戦ではうまく主導権を握られないように出だしから慎重に駒組の工夫をしたというのはあります。

[質問5]
仮想のお話です。漫画「ヒカルの碁」で、かつて本因坊秀策を指導していた存在が、現代に現れて名人と戦うという設定があります。大山先生とは対戦経験がおありですが、常々現代のスピード感覚を棋譜に感じるとされる升田先生が現代の定跡を完全にマスターした上で、羽生名人と戦ったらどうなるとお考えですか?
[回答5]
「ヒカルの碁」の本因坊秀策ですね、はい。ええ、大山先生とは対局しました。升田先生が現代の定跡を完全にマスターされたら、きっと現代においても前例のない斬新なアイデアで新手を出されていたと確信します。戦ったら?ですか・・・うーん、どうでしょう、わかりません(笑)

[質問6]
羽生名人は、常々人間とコンピューターソフトでは、考える過程や方式が根本的に異なると言われています。ただ、最近GPS将棋がrtwitterでプロ将棋を公開解析しているのを観ると、他のプロが思いつかなくて羽生さんだけが気がついていた意表の素晴らしい手を、特に終盤でソフトが当てるということがたまにあります。コンピューターの先入観のなさがよい方向に働くと考えられるのでしょうか?
[回答6]
GPS 将棋の読み筋は twitter で見たことあります。ええ、よい方向に働くことはあると思います。コンピュータ将棋では、ソフトの開発度合いに比較してハードの開発度合いが遅れていたところ、昨今ハードの開発が追いついてきたと聞いていますので今後が楽しみじゃないでしょうか。

[質問7]
現在のコンピュータ将棋ソフトの実力をどう考えられていますか?チェスを引き合いに出されて近い将来、コンピューター将棋はプロ棋士の作戦参謀的な関係もあると講演にて発言されたこともありますが、ある種の共存発展の関係を望めるものなのでしょうか?羽生名人は最近のコンピュータ将棋ソフトと将棋を指されることはありましたでしょうか?
[回答7]
チェスではエンドゲームデータベースというのがあり6個の駒しか盤上にない場合においては完全に解かれているんです。将棋においては終盤の詰みがある場合においてはかなりのレベルまで来ていると思われますが、そうでない場合においてもかなりのレベルまで来れば作戦参謀的な関係ということはありえると思います。その意味で、ええ、コンピュータ将棋ソフトとは指してないですね。

[質問8]
かつての古典的な将棋、例えば昔の矢倉や角道を止める振り飛車と現代的な将棋、一手損角換わりや角交換振り飛車があり、羽生さんはちらにも興味をもって精力的に指されたているわけですが、どちらの方が好きだというようなことはおありなのでしょうか?例えば、郷田九段は後手一手損角換わりは指さない(郷田九段は今回の東急東横将棋まつりで渡辺竜王との特選対局で初めて採用された!)と発言されていますが、羽生さんにとって受け付けない現代戦法はありますでしょうか?
[回答8]
まずやってみる、やってみてダメだったらやらない、そんな感じでしょうか。どちらが好きだとかはないですね。後手一手損角換わりは、ええ、理屈からいうと変なんですよ。ただ、受け付けないということはないですね。

[質問9]
羽生さんが理想とする将棋は、どのような基準で考えられているのでしょうか。以前講演会にて良い手というのは駒の配置が美しいんですと発言されたこともあります。その美的感覚というのはどのような基準でまたどのように培われたものでしょうか?
[回答9]
これまで積み重ねてきた経験から来る「直感」と理屈では説明できない「閃き」というのがあります。「直感」だけでもなく「閃き」も混ざり合っているものなんでしょうか?うーん、頭にパっと浮かんで来るものなので説明が難しいですね。



[質問10]
ずいぶん昔のインタビュー、10年くらい前でしょうか、将棋の神様と指すとしたら手合いは角落ちでと応えられたことがあります。ただ将棋の2割か3割しかわかっていないと述べられたこともあります。現在はどのくらいの手合いとお考えでしょうか?10年前のご自身と比べて、将棋の神様との手合いに変化があると考えられているでしょうか?
[回答10]
10年前とは変わってないと思います。いろいろな引き出しは増えたと思いますが、ええ、10年前とは変わっていないと思うんです。

[質問11]
公式戦、タイトル戦、リーグ戦、トーナメント戦で異なるかもしれませんが、中終盤の難しい局面にて、手数はかかるけど勝ちやすい手と、危険だけど踏み込んだ手とどちらを選択するものでしょうか?
[回答11]
これは形勢に依存しますね。優勢か劣勢かに依ると思います。また遊び駒がどれくらいあるかにも依存します。長手数になると遊び駒が働いてきちゃうんですよ。押並べて、タイトル戦、リーグ戦、トーナメント戦関係なく、危険だけど踏み込んだ手を選択することが多いでしょうか。

[質問12]
以前F1ドライバの故アイルトン・セナのファンだとインタビューで答えられていました。何が羽生さんを魅了したのでしょうか?
[回答12]
アイルトン・セナは、単にレースに勝つだけでなく、オーバーテイクや限界まで攻め込むその走り自体が魅力的でした。またあの時代はドライバの個性が浮き彫りになっていましたよね。ハイテク時代になってドライバの個性が影を潜めるようになってしまった。今はF1を観なくなってしまいました。

[質問13]
羽生さんの日常の過ごし方を教えてください。朝は家の周りの散歩から始まるのでしょうか?
[回答13]
いや、まったくもって決まった過ごし方がないんですよ。散歩も朝したり夕方したりしなかったりで・・・。その日、その日で過ごし方は変わりますね。

[質問14]
長岡四段とのVSを始められたとお聞きしました。木村さん、松尾さん、村山さんとの研究会(名前は羽生研でよい?)に加えてVSを始めようとしたきっかけはありましたか?
[回答14]
木村さんたちとの研究会には名前はないですね。長岡さんとは八王子将棋倶楽部での指導対局のときによく手伝いにきてくれたんですよ。それでやろうかと。でも、長岡さんはなんかいろいろな研究会に参加しているみたいですね。

[質問15]
羽生さん世代の登場からおよそ四半世紀経って第二次チャイルドブランド時代と言われつつあります。糸谷・豊島・稲葉・永瀬・阿部・菅井さんなど、彼らの将棋を見て何か感想はありますか?
[回答15]
あげられた名前を見ても個性派揃いですよね。みんなそれぞれ将棋が違うのでまとめて言うのは難しいですが、25年前とあきらかに違うのは順位戦C級2組の陣容です。今は若手と中堅しかいません。それだけ若手の密度が濃くなっていると思います。

[質問16]
第69期A級順位戦が始まりました。渡辺竜王・久保二冠が加わり激戦必至です。先日も、谷川九段vs久保二冠は深夜の熱戦となり谷川九段が制しました。今後の展開について一言お願いします。
[回答16]
はい、先日は熱戦でした。そうですね、誰がということではないんですが、きっと星が偏るんじゃないかと予想しています。

[質問17]
女流棋界、里見さんと甲斐さんが二冠となり、長らく続いてきた、清水・中井時代、そして矢内・石橋といった次世代の棋士を退けて大きく動き始めてきた感があります。里見さん、甲斐さんの将棋について一言お願いします。
[回答17]
里見さんと甲斐さんの将棋は正反対だと思うんです。里見さんの将棋は実戦派、甲斐さんの将棋は崩れにくい、矢内さんの将棋に似ていると言いましょうか、はい、そう思います。

[質問18]
女流棋界では先日LPSA日レス杯にて林葉直子さんが久々に公式戦に登場しました。昔の将棋マガジンなど将棋雑誌の林葉さんの手記に羽生さんもしばしば登場しています。林葉さんの復帰について一言お願いします。
[回答18]
はい、ええ、頑張ってください、と。

 18問目の質問途中に、予定では12:00からのサイン会が、サイン会用に用意されていた羽生さんの本が売り切れたということからか、10分前の11:50にはサイン会のお呼び。くぅ、あと2問が・・・残念。初美ちゃんとマリカ号の対局すっぽり羽生さんインタビューで初美ちゃんがどうやら勝ったらしいことを知る。

 サイン会には羽生さんの後ろを追うように控え室を出てシャッター。凄い人だかりでなかなか良いショットが撮れない。なんだかこれまで二人で話していた(茶々丸さんはカメラマン)のが嘘のようである。あの1番乗りの中学生が羽生さんのサインをもらって満面の笑み。思わずこちらも顔が綻ぶ。限定50人のため後半は人がはけてくれてそこそこのショットを撮ることができた。



 白瀧あゆみ杯2局目。永瀬-井道戦。解説はフレッシュコンビで長岡クンとマリカ号だが、真面目過ぎる。時折二人の性格の話も出てくるが、専ら手の技術解説。観客にはこっくりさんが多い。解説会では、裏話をもっとフンダンに盛り込まないと観客も盛り上がらない。とちぎ将棋まつり、特に将棋界のエンターテイナー神吉先生や藤井先生、先崎先生は盛り上げ方がうまかったなあ、と回想する。




 そしてお待ちかね、羽生さん-佐藤康光九段戦。大熱戦を華麗な寄せで締めくくったのは羽生さん。羽生さんの先手石田流三間飛車なんて珍しいけど、どうしても久保さん意識しているでしょ?と心の中で突っ込んでしまう。この対局は先述したとおり西尾先生が全国にUSTREAMで中継されている。




 感想戦の折に、この特選対局にて羽生さんが帰られるとのことだったので、茶々丸さんと挨拶して行きましょうと控え室に訪問。佐藤さんと談笑している羽生さん。控え室では、他の棋士の方もおられたが、やはり羽生さん、佐藤さんは特別な存在っぽい席の配置。

 羽生さん「あ、どうも。(佐藤さんを見て)あ、ご存知でしたっけ?応援サイトの管理人をしてもらってる・・・」
 佐藤さん「ああ、知ってます。先日、お会いした…。いやあ、うちの管理人とはもうずっと音信不通なんですよ。」

 やっぱり、羽生さん、佐藤さんクラスでも、いや、というか羽生さん、佐藤さんクラスだからこそ、自分のサイトを持ってアクティブに情報発信したいのだなあ、というのを実感してちょっとだけ自分のやっていることを誇らしげに思えた瞬間であった。

 その後、ごとげんさんと雑談。ごとげんさんの「ここはサインをもらう一手ですよ。」という言葉に唆される。見るとサイン会の席には北浜さんと飛び入り参加の戸辺っち。戸辺っちの本はまだ自分には難しい(苦笑)し、先日ホテルフォレスタで話かけてもらった北浜さんを選択。9手詰め本をそそくさと購入しサインをいただく。「先日はお世話になりました。」「ああ、その節はどうも。本を買ってくださってありがとうございます。じゃあ、(サインとともに書く9手詰め)難しめで?」「いえ、易しいので(笑)」

 

 佐藤康光さんの指導対局、藤森ナツコ先生のご子息哲也クンの挑戦手合いを観戦したあと、茶々丸さんと渋谷で1次会。「ハッシーバーって行ったことないんだよねぇ」で急遽池袋へ2次会。ハッシーがいなくても昔あきらたんの管理人をしていたりょうちんに会うことができればと思っていたが二人ともお休みとのこと。しかし折角だからと飯島篤也指導棋士に飛車落ちで教わる。いやあ、勉強になりました。要所での考え方を教えてもらったのは目から鱗でした。また飯島さんに教えてもらおう。

 そんなこんなで将棋漬けの一日が過ぎたのでした。

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2 コメント

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東急 (オジサン)
2010-08-07 10:44:38
やっぱり月曜日に行く一手だったなあ。
ぶりちゃんはどうしてるんだろうなあ?
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コメントありがとうございます (たいがー@玲瓏管理人)
2010-08-08 12:14:57
>オジサン
そうですよ、月曜日行く一手でしたよ。
ぶりさん同業種としてお会いしてみたいですけどねー。
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