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府中本町・武蔵国府関連遺跡出土、異形石製品(琴柱形石製品)について

2010年05月18日 | Weblog
 5月15日に行われた現場見学会では出土した遺物も展示された。
 そのなかで、異形石製品について興味があったので手持ちの資料からまとめてみた。
 古墳時代前期(4C)の遺構から2.5cmほどの管玉と一緒に、幅約2.3cm、高さ約2.3cmの異型石製品(滑石製)が出土している。一見して、亀井正道氏が分類した琴柱形石製品のうちの本村型(ほんむらかた)ではないかと感じた。上部に懸垂用の小孔2個があり、小型のペンダント状で、しかも下部に勾玉状の突起を外向きにつけた形態で、外形は本村遺跡(浦和市・埼玉大学構内)とそっくりである。ただ、本村遺跡出土品が上方に格子文があるのに対し、本遺跡出土品は模様がはじめからなかったか、あるいは磨耗で見えなくなったか、肉眼では模様が見えない。
 竪穴建物跡から管玉と一緒に出土していることから、祭祀用としてでなく装飾用として使用した可能性が高いとみられる。
 ちなみに、これまでに出土した本村型の一覧表を下記に表してみる。資料は5年ほど前に調べたものなので、新たに発見されたものは含んでいないし、資料ごとに寸法がやや違う場合もあるし、残欠品も多く、その場合寸法は推定で記したものもある。

琴柱形石製品(異形石製品)一覧
(◎は下部に勾玉状の突起を外向きにつけた形態のもの、□は下部横列に三日月状の穴を開けた形態のもの)
◎ 下槙遺跡(山形県) 2点 20W×25H、20W×27H 滑石製 5前半
◎ 厩洞穴(富山県) 1点
◎ 厨1号洞穴(福井・越前町) 1点 18H×22W 滑石製 4後半~5初
◎□ 下佐野遺跡(高崎市) 未完成品218点 古墳前期、玉作工房跡から出土、三波川変成帯の蛇紋岩・滑石で製作
◎ 能野堂遺跡(高崎市) 1点 23W×27H滑石(蛇紋岩)製
□ 千鳥遺跡(伊勢崎市)・1点 古墳前期 36W×39H 滑石製
◎ 本村遺跡(埼玉大学構内) 1点 24H×24W 6C前半 滑石製
□ 向新田遺跡(印西市)1点 古墳前期 滑石製
□ 閏井戸西山遺跡(市原市) 1点 25W×31H 古墳前期前半 蛇紋岩(秩父産?) 
□ 上谷本第二遺跡(横浜市) 1点 24W×34H 滑石製、5C前半
□ 永塚下り畑遺跡(小田原市) 26W×26H 滑石製
□ 小深田遺跡(焼津市) 1点 20W×29H 滑石製 古墳前期
? 大谷古墳群(掛川市) 1点 21W×26H? 滑石製 山頂遺物包括層より出土
□ 鬼釜遺跡(長野県池田町) 1点 24W×25H 滑石?
□ 長瀬高浜遺跡(鳥取県羽合町)1点 ?W×26H 滑石製 古墳前期

参考資料
琴柱形石製品考(『東京国立博物館紀要』8) /1973亀井正道
古墳時代前期の異形垂飾品(所謂本村型琴柱石製品)について /伊丹徹(葉山町教育委員会)
「閏井戸西山遺跡」鈴木英啓 /1986(財)市原市文化財センター
下槙遺跡発掘調査報告書/山形県埋蔵文化財調査報告書39/ 1981長橋至
下佐野遺跡Ⅱ地区(1)縄文時代・古墳時代編(1986 群馬県教委・(財)群馬県埋蔵文化財、日本鉄道建設公社)
下佐野遺跡2地区. 縄文時代・古墳時代編 / 群馬県埋蔵文化財調査事業団 編 1986年
下曽我遺跡・永塚下り畑跡第Ⅳ地点2002.9 鎌倉遺跡調査会/下曽我遺跡調査団
熊野堂遺跡(2)遺物編1/群馬県教育委員会、群馬県埋蔵文化調査団、JR 1990
千葉県文化財センター年報No.9 「向新田遺跡」

過去の関連ニュース
 武蔵国府関連遺跡2010.5.15現場見学会

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