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意思による楽観のための読書日記

そして最後にヒトが残った クライブ・フィンレイソン ****

ネアンデルタール人が滅亡し、現生人類が生き残り競争で優位になった理由。地球環境変化で、それまで地上に多くあった森林地帯の割合が減少し、草原が増えた。その結果、大型動物を獲物としていたネアンデルタール人は不利になり、小型の動物を獲物にするのが得意だった現生人類がたまたま生き残った。しかしそれまでは、ネアンデルタール人のほうが競争優位で、その場所に現生人類が入り込むスキはなかったのかもしれない。

ネアンデルタール人と現生人類はDNA分析によれば80.4万年前に分岐、ネアンデルタール人とデニソワ人は64万年前に分岐した。メラネシア人のゲノム4-6%がデニソワ人固有のものと一致、非アフリカ系現生人類のゲノムもネアンデルタール人由来が1-4%あるという。この意味するところは、アフリカ大陸から出てきた人類は何波にもわたり、現生人類以外は死滅したが、デニソワ人やネアンデルタール人と現生人類とは各地で共存する時期があり交雑した。

ネアンデルタール人は現生人類より大きな脳を持ち発話もできたし、大型動物を獲物とするように丈夫な骨格を獲得もした。その結果、ヨーロッパ各地、北アジア、シベリア、モンゴル、中国まで勢力を広げていたが、寒冷化に伴う環境変化でヨーロッパの片隅にまで追い詰められ、最後の一族はジブラルタルの岩にある洞窟で暮らしていたことが確認された。現生人類も寒冷化の影響を受けたはずだが、生き残った。生き残ったのはより賢かったのではなく、偶然に獲得していた特性が変化した環境に合致したから。いい時期にいい場所に偶々いたから。



森が減って草原の割合が増えた時、ネアンデルタール人も現生人類もその場所にいた。森に暮らしながら狩りで食料を得ていたときには、数十人の血族でグループを形成していた。狩りをするにはより多くの人手があること有利だったが、あまりに多くなりすぎると統率を取る方法がなかった。社会活動とは、複数の利害関係のなかで自分を相対化することであり、そのためには複雑な人間関係を処理する能力が必要とされた。また獲物の場所や獲得しやすい時期を認識する能力は、時間経過や場所の認識能力と強く結びつく。こうした能力獲得が生き残りには有利に働いた。同時に、森の面積が減ると狩りの方法も変わり、一族全員で行う狩りから、若い男が遠くまででかけ、住んでいる場所で子育てをし必要な日常の道具作りなどをする女性と老人子供というグループ分けが有利に働いた。どういう方法がより多くの子孫を残せるのかが長い時間をかけてネアンデルタール人と現生人類に影響を与え続けた。

生き残りやすかったのは、生きるのに有利な住居地域の中心に暮らす一族よりも、常に変化と環境からの影響を受けやすかった周辺に暮らす一族だった。大きな環境変化は、保守的な一族よりもイノベーターたり得た一族がより生き残りに有利に働いた。生き残りの原因は賢さや俊敏さではなく、偶然の積み重なりであり、その変化が起きた時期でもあった。

数十万年の現生人類の歴史の中で、農耕生活は最近の1-2万年。それは食料獲得にとっては革命的な出来事で、狩猟民族は農耕民族に置き換わった。食べやすく改良された植物と飼いならされた動物たち、食べやすく改良された食用家畜。人類は飼いならしたはずの動植物に縛られる生活を送るようになってはいないだろうか。これから起きる温暖化、寒冷化、疫病、大災害などの環境変化は予測ができない。それらがどのような影響を現生人類に与えるかも予測不能である。本書内容はここまで。

 

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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