いきけんこう!

生き健康、意気兼行、粋健康、意気軒昂
などを当て字にしたいボケ封じ観音様と
元気印シニアとの対話。

千鳥足でつぶやく『映画ばなし』その2:天国からのエールに涙する

2011-10-11 23:45:24 | いろいろ
だれが監督をしたか、脚本はだれが書いたか、主演は・・・。
このような順をたどって観る映画を選択していますが、『天国からのエール』は、主演の阿部 寛(写真)が決め手になりました。

彼の愛称、阿部ちゃんを借用して本稿を書き進めますので、ご容赦願います。

『チームバチスターの栄光』で阿部ちゃんが演じた白鳥 圭輔が最初の出会い、『ジェネラール・ルージュの凱旋』で記憶に留まり、TBSが放映したテレビ・ドラマ『新参者』を観てからは、阿部ちゃんが主演する映画は「観たい映画」の選択肢に加わっていたから。

そんな背景があって、阿部ちゃんが秋山 好古を好演している『坂の上の雲』(NHK総合)を見る羽目に陥っている次第。役者もどき主演者が「セリフが難しい」と弱音を吐くので脚本家が書き改めた、時代物では時代考証が疎かである、などなどの噂を小耳に挟んでいたので、かの局の大河ドラマはこれまでに観たことがなかった。阿部ちゃんは、かの局の視聴率アップの功労者になっている訳ですね。

周りを海と山に囲まれ、「太陽と海と緑」をキャッチフレーズにしている沖縄県北部の国頭郡(くにがみぐん)にある小さな町、本部町(もとぶちょう)がこの映画の舞台。

ところで、この町は「琉球三山時代」から「第2尚氏王朝時代」を経て現在に至っているようですが、昭和20(1945)年の大東亜戦争において沖縄戦の戦場となり、町全体が壊滅的な打撃を被ったとも、町のWebサイトに掲載されています。また、昭和50(1975)年に開催された「沖縄国際海洋博覧会」の会場となっているから、全国的になじみ深く、足を運んだ方も多いでしょう。

沖縄県立本部高等学校と通信制の八州(やしま)学園大学国際高等学校、小学校3校、中学校2校、3校の小中学校があるこの町に、おおよそ1万3千人が生活しています。

さて、阿部ちゃん演じるところの大城 陽(おおしろ・あきら)は、学生たちから「ニイニイ」の愛称で呼ばれている「あじさい音楽村」の創始者。かつ、稽古演奏でロックバンドが弾くエレキ・ギターやドラムの音が大きく、周りから「うるさい!他でやれ!!」と苦情の矢が放たれ、行き場を失っている高校生たちの打ち拉がれる境遇に居ても立ってもいられなくなったニイニイは、若者が夢を追いかける環境を作る決意を固めます。銀行から建設資金の融資を断られても、自前で音楽スタジオを建ててしまう。

高校を自主退学して海上自衛隊に入隊。退官後の18歳で上京して起こした運送会社も10年で畳み、本部町に帰ってきた「ニイニイ」ならではの決断だった。

「このスタジオと機材は、自由に使っていい。お金はいらない」

若者が抱く夢も実現させない環境に陥れる世間常識に憤慨する半面、ニイニイもそのひとりであるとの自省から、音楽スタジオ「あじさい音楽村」を無料開放にしたのです。このスタジオの名を「AJISAI STUDIO」とニイニイが命名するシーンから、若者達の本格的な音楽活動が始まります。

ちいちゃな弁当屋「あじさい弁当」を営みながらニイニイは、スタジオを利用しているグループの中に将来性を見込めるそれには、献身的な支援を惜しみません。彼等にプロとして欠かせない自立の心構えを会得させるために、町で開催するイベントに参加させて、そのことを実体験させます。
その一方で、彼等のスタジオ演奏を録音しテープを作って、地元放送局のディスクジョッキーを友人の誼で訪ね、そのテープを番組で流すように平身低頭して頼み込む苦労人でもあります。

この映画では、陽が弁当屋を開いた平成8年から、腎臓がんで亡くなる平成13年の出来事を芯にして描いている。実在したニイニイを演じる阿部ちゃんには、かなりプレッシャーがあったようですが、頑固一徹のなかにも、人として失ってはならない徳目溢れる人物像を創り好演している。

まず、ニイニイはAJISAI STUDIOを無料で利用する条件を守れない者は、即時、使用禁止にすることを告知し厳守させるのです。

   あじさい10か条
 1.あいさつしましょう!
 2.赤点は絶対ダメです!!
 3.機材の取扱いに注意!
 4.線を越えない!
 5.イベント全員協力!
 6.後輩には優しくおしえましょう!
 7.9時以降の音出しやめましょう!
 8.勉強andバイト優先しよう!
 9.カギの管理はリーダーがしっかり!
 10.人の痛みのわかる人間になれ!

この掟の中でニイニイが特に気を配っていた1.4.10。
話の転換などで他の掟も描かれていますが、やはり、ニイニイが本心で狙っていたのは、この3っつを厳守させることでしょう。それらが厳守できれば、残りの掟は自ずと身に付く。

 「それは、観る人の主観によりますよ、元気印さん」
 「ボケ封じ観音さまは、どうなんですか?」
 「さあ、どうなんでしょう」

比嘉(ひが)アヤを演じた桜庭 ななみとは、『最後の忠臣蔵』の可音(かね)以来の再会でした。
大石家の用心・瀬尾 孫左衛門(役所 宏司)に預けられ養育された大石 内蔵助の隠し子・可音。
彼女に一目惚れした茶屋 修一郎(山本 耕史)のもとへ嫁ぐ役柄でした。

「通常は役柄に合うか合わないかが選考のポイントになるんですが、今回は素材が持つエネルギーによって選んだ。役所宏司さんが平伏しても成立する、位負けしないエネルギーが欲しかった。彼女(桜庭 ななみ)が持っている品の美しさ、それと都会の匂いを背負っていない感じがよかった」

この作品の要となる可音役を選ぶのに一番気を使った杉田 茂道監督の桜庭 ななみ評は続きます。

「ただし、演技的には、初歩から訓練する必要がありましたけれども。桜庭君はいい意味で不器用なので、言われたことを一所懸命やろうとする。撮影に入った最初の頃には、大石家のお姫様として上からものを言う感じを出すのに緊張していたところがありましたが徐々に自信をつけて、泣き言一つ言わずによくやってくれたと思います」(最後の忠臣蔵プログラム)。

その甲斐あって、第35回報知新聞映画新人賞、第84回キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞、第53回ブルーリボン賞新人賞などを受賞した桜庭 ななみは、これからが楽しみな若手です。
受賞歴は『天国からのエール』プログラムからの受け売りですが、監督のしごきに耐えながら役に没頭できるのは、才能だと思っているから、期待している訳です。

『天国からのエール』では、エレキ・ギターを弾く女子高生・アヤ役。
あじさい音楽村で成長していく4人組バンド「ハイド・ランジア」を引っ張るアヤには、天性の明るさと無意識のうちに人を魅了する輝きを放つ桜庭 ななみ、とプログラムに記載されていますが、監督の熊沢 誓人(くまざわ・まこと)のアヤ役の評価は見当たらず、脚本の尾崎 将也、うえの きみこと共に、初対面の映画でした。

ハイド・ランジアでエレキ・ギターを担当する真喜志(まきし) ユウヤ役の矢野 聖人(やの・まさと)が醸しだす存在感には、圧倒されたよ。蜷川 幸雄が演出する「身毒丸」( しんとくまる )の主役オーデイションでグランプリを受賞してからは、蜷川演出のしごきに耐え抜いた賜物でしょう。いわくありげな高校生を見事に演じています。平成2(1991)年12月生まれの若者です。今後の躍進を見守りたくなりました。

人の痛みのわかる人間になれ!
映画を観終わり劇場を出てからも、天国から送ってくるニイニイのエールが聴こえてきます。
ニイニイとハイド・ランジ [メンバー:アヤ、ユウヤ、カイ(森崎 ウイン)、キヨシ(野村 周平)]が一本立ちするまでの交流を通して描かれているのは、

 人に優しくなれるのも、人に嫌われるもの、すべて自分自身だよ

「挨拶が出来ないようであれば誰にも相手にされませんね。自分がやらなければならないことには無頓着なのに、他人の領域に口を出しても相手を傷つけるだけで、無益なことです。天に向かって唾を吐くようなもの。人の痛みがわかるようになれば、一回り大きくなり、人望も備わってきます」

ボケ封じ観音さまは、ニイニイが定めた掟の心を噛み砕いてくれました。

ここから、千鳥足の映画ばなしは横道に入ります。
昨夜、『幸せの黄色いハンカチ』現代版が日本テレビで放映されました!!
阿部 寛と夏川 結衣が島夫婦、カップルは堀北 真希と濱田 岳。岩本 仁志監督の主な作品に、20数本のテレビ・ドラマと2本の映画があります(ウイキベデイア)。脚本は、『天国のエール』を書いた尾崎 将也(まさや)です。
山田 洋次監督は監修・脚本で全面協力し、倍賞 千恵子、武田 鉄矢も脇を固めていました。

山田監督の『幸せの黄色いハンカチ』は、網走から夕張へ車で向かうロードムービーでしたが、テレビ版は網走から現在の羽幌町へ舞台を移し、羽幌へは列車で向かいます。
島 勇作が住んでいた夕張の炭住は、焼尻島(やぎしりとう)にある漁師の住居になっているので、勇作との再会を待つ光枝が掲げた黄色いハンカチを、若いカップルが発見するまでの演出は見所でした。

結論を言いますと、テレビを観終わった感想は、残念ですが、高倉 健、倍賞 千恵子の夫婦、桃井 かおり、武田 鉄矢のカップルに軍配を挙げざるを得ません。
勇作役は、枯れた渋さが持ち味の高倉 健のイメージが強く残っているので・・・。
とはいいながら、実在したニイニイや名作と言われている映画の主役・勇作に挑戦した、脂が乗っている阿部 寛の役者魂に拍手を送って、本稿の終りにします。

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