コンサルタントのネタモト帳+(プラス)

ビジネスにも料理にも役立つ“ネタ”が満載!社労士・診断士のコンサルタント立石智工による経営&料理ヒント集

TOB合戦:ドンキvsイオン!

2006-01-30 | マネジメント
本日はもう1つエントリを。

ライブドア事件の影でひっそりとしたニュースになっていましたが、1月15日付けにてドンキホーテがオリジン東秀の株式を公開買い付けする旨の発表が行われていました。
オリジン東秀は名古屋ではなじみがないのですが、関東圏で弁当や惣菜、料理店のチェーン店を展開する会社です。(店舗数は9月決算時点で633店舗とのことですから、相当大きなチェーンですね。)

さて、このドンキホーテのTOB発表に対し、1月23日の段階でオリジン東秀側は「反対表明」を出しています。この時点で、ドンキホーテのTOBはいわゆる「敵対的TOB」ということがはっきりしました。

とはいえ、取締役会が反対表明を出したとしても株主がTOBに応じることはは自由です。したがってオリジン東秀側としては、TOBをかけられている以上のんきに指を加えてみているわけにはいきません。

そこで今回取られたのが「イオンによるTOB」です。支援先としてのイオンがオリジン東秀に対してより良い条件で友好的TOBを仕掛けることにより、ドンキホーテによるTOBを防ごうという作戦に出ました。言うなれば「自ら(経営陣)の意思でイオン傘下入りすることを望むことでより、自らの意思ではないドンキホーテ傘下に入ることを防ぐ」というところでしょうか?

ただ、イオンのTOBが成立すればオリジン東秀はイオン傘下に入ることになりますので、いずれにせよ今後の経営基盤は大きく変わってくることになるでしょう。

これまでのところの情報を見る限り、双方比較的“きれいに”対応している様子が見られ、TOB合戦としては非常に筋を通した形になっているのではないかと感じます。とりあえず現在は「守りの布陣が引かれた」段階ですが、これに対して「攻撃側」のドンキホーテがどのように対応するかが注目されるところです。

ちなみに、この一連の動きの中でオリジン東秀側が代表取締役を1名増員しています。恐らく証券会社からのアドバイスを受けての措置だと思われますが、このような部分まで手当てを行うんだな~、と於印象に残ったリリースでした。(というか、代表取締役が1名のみの上場企業ってたくさんあるのでしょうか?もし多くあると知れば、企業のリスク対応としてはいかがなものかと思いますが・・・)

派遣業:1月申請分から登録免許税がかかります!

2006-01-30 | 経営実務
昨日のエントリでご紹介した「派遣業関連の登録免許税改正」に関してですが、本日愛知労働局と厚生労働省に問い合わせたところ、以下の取り扱いになることが判明いたしました。

(今国会で法改正が行われることを前提条件とした上で)
○一般人材派遣事業・有料職業紹介事業ともに4月1日以降の許可分より登録免許税(各9万円)が課せられる。
○(少なくとも愛知県は)1月申請分については4月1日許可となるので、1月申請分から登録免許税の対象となる。


つまい、このまま順調に法改正が行われた場合には、今後新たに人材派遣業を行う場合には、申請時に9万円(紹介予定派遣を行う場合には18万円)の実費がかかることを見込まなければなりません。

なお、愛知労働局に確認したところ、1月以降の申請分について、登録免許税改正法が正式に施行されるまでは労働局の指示に従って納付を行うようにとのことでした。

以上、追加情報でした。

制度改正:平成18年度にはこんな動きが・・・・

2006-01-29 | 経営実務
通常国会も始まり、いよいよ平成18年度にむえた様々な施策の動きが始まります。その中でも、社労士・診断士の視点から、ぜひ今のうちに知って頂きたい動きを3つご紹介いたします。

(1)人材派遣業・有料職業紹介の登録に「登録免許税」かかるようになります!


まずは税制改正に絡んだ動きです。1月17日付に平成18年度税制改正要綱が財務省から発表されていますが、この中で事業免許にかかる登録免許税の見直しがひっそりと挙がっています(八:その他 - 8)。

今回新たに課せられることとなる登録免許税は別紙にまとめられていますが、その中で
・一般労働者派遣事業の許可 1件につき 9万円
・有料職業紹介事業の許可  1件につき 9万円

とされています。

したがって、平成18年4月以降、法改正等が行われる一定の時期より、人材派遣のみを行う派遣業なら9万円、紹介予定派遣も行う場合には18万円が実費としてかかることになる見通しです。

また、派遣業に関する登録免許税が「いつ申請した分」からかかようになるのかについてはいまのところ不明です。 今後情報が入り次第このブログでご案内したいと存じます。

(2)経営革新補助金が廃止になります!


これまで、新しい取り組みで経営を革新していこうとする中小企業を支援する制度として「経営革新支援制度」が行われていましたが、このうち、経営革新補助金制度については平成18年度の予算措置が見送られ、新たな補助金交付は実施行われないこととなりました。(経営革新支援制度自体は存続しますので、これまで同様経営革新計画の認定を受けることは可能です。)

なお、複数の中小企業者が連携して新たな事業展開を行うことを支援する「新連携支援制度」における「新連携対策補助金」は引き続き実施されます。詳しい内容は中小企業庁の公募案内をご覧ください。

また、愛知・岐阜・三重で新連携について知りたいと言う方は、私も支援専門員として活動している中小機構の新連携支援事務局までお気軽にお問い合わせください。相談は随時受付中です!(今も多いときで週2~3件の新規お問い合わせを頂いております!)

(3)労働審判制度が始まります!


最後は「労働審判制度の開始」についてです。労働審判制度とは、会社(事業主)と従業員との間における個別の労働関係に関する何らかの争いについて迅速な解決を図るために新たに設けられる解決制度です。

労働審判制度では、裁判所に設置される「労働審判委員会(裁判官1名と労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名で構成)」において審理が行われます。そして、原則3回の期日の中で双方の主張を整理し、原則として「調停」により、調停が整わないときには「審判」により解決が図られます。そしてこれらの調停・審判は裁判上の「和解」と同じ効力を有するものとなります。(例えば、労働審判において「会社側は労働者に○○万円支払いなさい」との審判がされ、双方から異議申し立てが行われなかった場合には、会社側は○○万円支払う義務が生じ、支払わないときには強制執行される可能性があります。)

今回の「労働審判制度」は
○当事者の一方がいなくても審理が進む(従来のあっせん・調停は双方出席が必要)
○審理が迅速(従来の民事裁判では時間がかかるケースが多かった)
という特徴があります。従来の「あっせん」と「訴訟」の中間手段として、今後「労働審判」が活用される場面が多くなると思われます。

労働審判制度についての詳細は「労働審判法の概要(官邸)」や「労働審判Q&A(愛知県弁護士会)」をご覧ください。

会社側から労働審判に持ち込むと言うケースは少ないと思われますが、退職した従業員などから労働審判に持ち込まれるケースは十分に考えられます。労働審判はこれまでのあっせん・調停制度とは異なり「対応しなくても勝手に進んでしまう(=対応しないと、相手の主張を認めた)」ということになってしまいますので、慎重な対応が求められます。

ただ、一番大切なことは、労働紛争を起こさないような対応を常日頃取っておくことです。<storng>従業員の皆様に「気持ちよく働いてもらう」、そして「気持ちよく報酬を支払う」ことが出来るように、法律対応を含めた労働環境整備が今後ますます求められるようになります。

以上、次々と変わる法制度に向け、迅速な対応が求められます。心積もり

上記につきましてのご質問・御相談は、社会保険労務士・中小企業診断士 立石智工事務所までお気軽にお問い合わせください。

機関設計:ライブドアに見る“執行役員社長”とは?

2006-01-28 | 経営実務
おかげさまで体調は快方に向かっております。早めの投薬が功を奏したようです。

さて、今日は予告どおり「執行役員」について。ライブドアに「執行役員社長」という一見不思議とも感じられる役職が誕生しましたが、これについて見て生きたいと思います。

そもそも執行役員とは?


現在多くの企業で取り入られるようになった「執行役員」ですが、取締役とは異なり商法上に定められたものではなく、会社が任意に設置する機関です。「部長より上、取締役より下」というのが一般的な位置づけではないかと思います。

執行役員は、取締役会の決定にしたがって業務遂行の責任を持ち、必要な業務執行権限を付与されていることが一般的です。また、通常は商法上の業務執行者である代表取締役の指揮命令を受けることとなります。

さて、この執行役員の法律上の地位ですが、前述の通り商法には何の定めもありませんので、会社の内部規程として定めていくことになります。このときの考え方には主に次の2通りの中から考えられます。

(1)商法上の「支配人」に準じる地位
まず第一の考え方が、執行役員を商法上の「支配人」と同様に考えるものです。

商法上の支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する者であり、会社の本店又は支店において任意に選任することができます(もちろん、選任しなくてもかまいません)。

この考え方を準用して、特定の事業部門や業務執行範囲に対する業務執行権を与えるものとして「執行役員」を定めることができます。

この場合、執行役員の選任・解任は「重要な使用人の選解任」にあたりますので、商法上で取締役会の決議をもって執行役員の選任・解任を行います。

(2)高級従業員としての地位
もう一つの考え方はすなわち権限と責任が強化された従業員としてとらえるものです。

この場合の執行役員は部長より上位の社内役職とされ、最上級の幹部従業員として職務につくことが一般的です。この場合には、社内での決裁権は広範に与えられるものの、対外的な契約行為等については限定的な権限しか持たない(最終決裁は代表取締役や取締役会が行う)場合が多くみられます。

このため、高級従業員としての執行役員の場合、(議論の余地はありますが)必ずしも取締役会の決議を持って選任することまでは求められません。

なお、会社と執行役員の関係は「委任関係」「雇用関係」のいずれになるのかについて学説が分かれていますが、個人的な見解では(1)の場合は「委任関係」の色彩が強く、(2)の場合には「雇用関係」にあると言えるのではないかと考えております。

「執行役員社長」はどのような地位なのか?


それでは、今回のライブドアで誕生した「執行役員社長」とはどのような地位なのでしょうか? これは「執行役員+社長」と分解して考えることになります。

このうち、執行役員の地位としてはおおむね前述の通りと推測できます。また、もう一方の社長としての地位についてはisologueに寄せられていたコメントの中で、ライブドアの“定款”に書かれている内容が紹介されていました。

第21条 社長は、当会社を代表し、会社の業務を統轄する。

(定款内容については、EDINETを利用し、有価証券報告書の添付書類として添付されていた「定款」にて記載内容を確認しました。)

これを考えると、「執行役員社長」は「会社の業務執行全般に関する責任と権限を有する執行社員であり、かつ、会社を代表する者」という形になるのではないか?と考えられます(いまいち判然としませんが・・・)

「執行役員社長」は可能なのか?


さて、ここで問題となるのが、商法との兼ね合いで「執行役員社長」は問題ないのかどうかということです。

まず、単純に商法のみの話からいえば、「執行役員社長」という名称のポストを社内に設けても差し支えはありません。ただし、商法上では、株式会社の代表者を「代表取締役」という機関におくよう定めており、また社長は一般的に「会社を代表する者」とみなされますので、代表取締役でない(執行役員)社長が為した行為は「代表取締役の権限を持った者が行った行為」とみなされることになります(商法第262条:表見代表取締役)。

しかし、ライブドアの場合には定款の中で
(役付取締役)
第20 条 取締役会の決議を以て、取締役の中から、社長1 名を選任し、必要に応じて、副社長、専務取締役、常務取締役各若干名を選任することができる。
(代表取締役)
第21 条 社長は、当会社を代表し、会社の業務を統轄する。
2 取締役会の決議を以て、前条の役付取締役の中から会社を代表する取締役を定めることができる。

との定めを置いてしまっているとのことです。

こうなると、今回のライブドアの場合には、取締役ではない人を社長として選任してしまっており、定款第20条に違反した状態となってしまっています。(なお、「役付取締役でないものを代表取締役に選任している」点も同様に定款第21条に違反しています。)

このような取締役会の決議内容が定款に違反した場合について、商法では特段の規定を置いていません。ただ、過去の判例では「会社の利益と第三者の利益を衡量して判断」する取り扱いが為されており、その多くは「相手方が善意・無重過失なら対抗できない」としています。したがって、このような決議が直ちに無効とはいえないかもしれませんが、通常では望ましいとは言いがたい状況です。

この状況の回避策はあるか?


とはいえ、“非常事態”の渦中にあるライブドアにとっては、社内の指揮命令系統の一刻も早い建て直しが急務だったのでしょう。(これだけ注目を集めている中で、まさか定款を十分確認しないままこのような取締役会決議を行ったわけはないでしょうし・・・)

そうなると、次善策があったかどうかということになりますが、個人的な意見では次のような方法が取り得たのではないかと考えています。
○代表取締役副社長(専務・常務でも可)として熊谷氏を選任。
○その上で、従来堀江前社長が有していた「最高経営責任者」を(現社長の)平松氏とする。(経営委員会委員長でもよいかも)
○加えて、次回株主総会までの臨時措置として平松氏をライブドアにおける全ての本支店の「支配人」として選任する。(これで、平松氏の名で営業についての一切を「代理」できる。)
○「社長」は空位にしておく。

これもあくまで「緊急避難措置」ですが、現在行おうとしている意図を維持したまま、取締役会決議としての瑕疵は一応ない形になる・・・かな?と思います。(まぁ、こんなことを悠長に考える前にもっと考えることがいっぱいあるとは思いますが・・・)

ふと気づいたのですが、今のライブドアは「現行商法でのぎりぎりの取締役数」しかいない状態になっているのですね(^^;; 万が一「もう1名取締役が欠ける」という状態にでもなったら・・・・これはこれで大変怖いですね(^^;;

熱発:なれない頭を使ったせいか・・・・

2006-01-25 | よもやま話
ここしばらくライブドアやらヒューザーやらの事件について、無い知恵を絞りながらブログを書いていましたら、今日になって熱発してしまいました。(現時点で38.3度です・・・・。)

喉に“爆弾”を抱えている私としては、「いつものヤツのですか?」とかかりつけの耳鼻科に診察へ。とりあえず今回に関しては「いつものヤツ」ではなかったので一安心。(ちなみに、「いつものヤツ」だと、超早期に炎症止めの点滴治療を受けなければ、40度コース3日間の旅になってしまいます・・・・)

また、きょうの時点の検査では「インフルエンザ」でもないとのことで一安心(インフルエンザだと強制的に休まなければならなくなるので、大変厳しいです)。とりあえず今日は薬を安静にして休むように言われました。

しかし、開業早々いきなりやってしまいました・・・
何とか明日までにある程度回復しないと・・・・

というこで、本当は今日のブログで「合意形成」か「執行役員制度」について触れたかったところなのですが、明日以降に持ち越しさせていただきます

報道に見る(3):誰が彼を裁くのか?

2006-01-24 | マネジメント
今日になって、堀江社長の「代表取締役と社長からの辞任」と「ライブドア新体制」が発表されました。私としては今回の新体制は大変興味深いのですが、その前にどうしても触れなければならない

今回の件を見ていると、この1週間の捜査や報道を見ていると「ライブドア=悪」という“予断”が入っているのではないかという気がしてなりません。

今回の逮捕容疑は、「証券取引法第158条違反(偽計取引・風説の流布)」でした。改めて確認すると、この条文は
第158条 何人も、有価証券の募集、売出し若しくは売買その他の取引若しくは有価証券指数等先物取引等、有価証券オプション取引等、外国市場証券先物取引等若しくは有価証券店頭デリバティブ取引等のため、又は有価証券等の相場の変動を図る目的をもつて、風説を流布し、偽計を用い、又は暴行若しくは脅迫をしてはならない。

ということです。今回は「ライブドアの一連の取引が『偽計を用い』に該当し、また、『風説を流布』したことに該当する」ということで、強制捜査・逮捕に至っているとのことです。

しかし、昨日のブログにも書きましたが、今回の逮捕及びその後の報道を見ていて、「具体的な容疑事実は何か?」ということがいまいちよくわかりません。少なくとも検察からの正式発表は無いようですが、「何が」偽計取引とされ、また「何が」風説の流布とされているのかについて、少なくとも報道ベースで明らかになってきていないのです。

「マネーライフ社とライブドアマーケティング社の取引」が逮捕容疑なのか、それともこれに加えて「100分割」まで加わっているのか、はたまた「これらの連続した取引が一つの意図のために為された一個の取引とみなし」ているのかどうか、この点が現時点における本来の【論点・争点】であると思っています。しかし、残念ながらこれらについての報道はあまり行われていません。強制捜査が入る、逮捕される等のことはあれだけ早く速報されたにもかかわらず、です。

私のこの疑問の根源である「危惧」については、47th氏によるふぉーりん・あとにーの憂鬱「正義のコスト」に詳しく論じられています。

今回の一連の騒動・事件は、「ライブドアが良いか悪いか」という点を全く抜きにして、「検察の捜査手法・手続きは果たして妥当であったのかどうか?」「裁判所による結論が出る前に、社会的経済的に致命的な不利益を被ることが良いことなのかどうか?」というきわめて「憲法的・民主主義的」な根っこの部分での問題をはらんでいると思います。この点について、ぜひ一度47th氏のブログをご覧頂き、皆様にもお考え頂きたいと思います。

今回の事件を通してみていると、ライブドア・堀江氏はすでに「制裁」を受けてしまっているような気がしてなりません。少なくとも

○スピード逮捕により、代表取締役としての機能停止に追い込まれたこと。
○「疑惑」報道により、「悪意を持って犯罪行為を行っていた」と印象を与えられたこと。

の2点において、ライブドア・堀江氏は不利益(47th氏の言葉を借りると『コスト』)を被っています。

しかし、法治国家である日本は、「法」の下で裁かれなければなりません。その意味において、まだ現時点においてはライブドア・堀江氏は「単に検察の自己判断による嫌疑をかけられている」に過ぎない状態です。

検察に与えられた権限とは「犯罪行為が行われているという嫌疑のかかっている事実に対して、強制力を持って捜査(調査)を行う」というものであり、決して「嫌疑の妥当性を判断」するものではありません。

もちろん、マスコミも「彼が善人か悪人か」ということを判断するところではありません。こと事件報道については「彼にかかっている嫌疑は何なのか?」「それに対して、どのような理論構成が行われているのか?」「さらに、嫌疑をかけられた側はどのような反証を行っているのか?」ということを中心として、あくまで「ありのままの事実を伝える」ことが、マスコミの使命ではないでしょうか?

マスコミが有識者や「関係者と称する人」の意見・判断を伝えること、はたまた嫌疑をかけられている人の過去の言動等から人格を推定することは“どうでもいいこと”であると、私は感じます。まして、「悪人を作り出す」ことは、マスコミの本旨から全く外れた行為であると考えます。(これは、ヒューザー事件を初め、他の様々な事件にも共通することですが・・・)

かつて日本の報道機関は、松本サリン事件の際に、大変大きな「誤報による」を起こしています。不確実な情報を下に無関係な人をあたかも「容疑者」であるかのように報道した結果、彼のプライバシーはおろか、彼を取り巻く人々、そして彼の人生をも回復不可能なほど著しい影響を与えてしまっています。今の報道を見ると、このときの反省は本当に生かされているのかどうか、正直疑問に感じてしまいます。

ライブドア事件について、現時点では「公判を維持できるだけの証拠がそろっている」かどうかはわかりません(検察のつかんでいる「事実」についての報道がありませんので・・・・)。この場合、可能性としては「堀江氏不起訴(又は起訴猶予)」という可能性もまだ十分あるのですが、もし仮にそうなったとするとマスコミはいったいどう対応するのでしょうか?

長くなりましたが、今日はこれにて。

速報:ライブドア堀江社長逮捕

2006-01-23 | よもやま話
ライブドアの堀江社長が逮捕されました。容疑事実は「証券取引法違反」ということです。取締役3名も合わせて逮捕されました。

逮捕容疑の詳細は今のところまだ不明ですが、逮捕にいたった容疑事実を「マネーライフ社とライブドアマーケティング社の間における取引」と仮定すると、“風説の流布”での逮捕なのか、それとも“有価証券報告書への虚偽記載”としているのかという点が気になるところです。

また、上記以外の事実についても逮捕容疑がかかっているとすれば、どこまでを“今回の逮捕容疑”としているのかについても気になります。

いずれにせよ、これで完全に「刑事事件」となったライブドア事件ですが、行為の「良し悪し」は別にして、刑事事件としてどのように立証していくのか、今後注目していきたいと思っております。

ちなみに、磯崎先生のブログisologueでは、“予告編”が出ていましたね・・・。マスコミはこのような「情報」をどのように事前入手しているのか、若干不思議なところでした。


報道に見る:刑事と民事の狭間(ヒューザー編)

2006-01-22 | 経営実務
一日空けてしまいましたが、予告どおり「ヒューザー」の話題について見ていきます。例によって、「ヒューザー」を擁護したり糾弾したりする意図はありません。

こちらはまず「民事的視点」について。今回の“事件”では、耐震基準を満たさない構造設計により建築された建物の売主であるヒューザーに対しては、次の2つの法律から売主としての“瑕疵担保責任”が発生することになります。

【その1】
「住宅の構造耐力上主要な部分等の隠れた瑕疵」については、売主が10年間の瑕疵担保責任を負う(住宅の品質確保の促進等に関する法律 第八十八条(新築住宅の売主の瑕疵担保責任の特例)


【その2】
宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において瑕疵担保責任期間を定めるときには、引渡しの時から2年以上としなければならない。


さて、ここで考えなければならないのが、「そもそも瑕疵担保責任とは?」ということです。瑕疵担保責任の根拠法規である「民法五百七十条」ですので、こちらの条文をみてみましょう。
民法第570条(売主の瑕疵担保責任)
 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

さらに準用される民法第566条を見ると・・・
第566条(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2 前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。3 前2項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない。


すなわち、瑕疵担保責任の発動効果としては基本的には「契約の解除(今回の場合は、売買契約の解除)」、それができない場合に「損害賠償の請求」の2つとなります。(「瑕疵の修補(問題のある所を直せ!)」という請求は出来ない点に注意が必要です。)

瑕疵担保責任は「無過失責任」ですので、過失があろうとなかろうとも、ヒューザーとしては「契約の解除(売買契約の解除)」又は「損害賠償の請求」を受けざるを得ないという状況です。ただし、現に相当期間居住されている方の場合にはすでに売買契約が終了しているため「売買契約の解除」ということはできませんので、相当額の「損害賠償の請求」を行うということになります。(ただ、居住期間に応じて価値が減耗している部分がありますので、購入金額の全額の賠償とはいかないでしょう。)

では、ヒューザーは黙って泣き寝入りしなければならないのか?ということですが、これにはいくつかの検討が必要になるでしょう。
まずは「注文者ヒューザー」として今回の物件の発注先=「請負人」である木村建設に瑕疵担保責任の履行を求める方法です。しかし、木村建設は自己破産してしまいましたので、現実的には不可能です。

次に考えなければならないのが「確認検査を行ったイーホームズや地方公共団体」に対して、「不適正な確認検査により損害を被った」ということで損害賠償を請求するということです。(ここにきて、小嶋社長からこの種の発言が出ていますね。)

そうすると、この「確認検査」がどのような行為であるかが問題となります。そこで建築基準法を確認すると、第6条第1項にて
建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない(抄)

とあり、さらに同条第6項にて
第一項の確認済証の交付を受けた後でなければ、同項の建築物の建築、大規模の修繕又は大規模の模様替の工事は、することができない。

と定められています。

これは、「大規模建築工事を一般に禁止し、これを確認済証の交付を受けるという特定の場合において禁止事項を解除している」ということになります。すなわち言葉では“確認検査”となっていますが、行政行為としては立派な「許可」行為と解釈されます。

そうすると、このような行政行為が行われたときにどのような効力が発生するかということですが、ここで重要となるのが「公定力」という考え方です。

“公定力”とは、ある行政行為がたとえ違法であったとしても、当該行政行為が取り消されるまでは適法の推定が働き、その内容が実体的にも適法かつ有効なものとして承認して従わなければならない。という、行政行為にのみ認められた非常に強い効力のことです。

この「公定力」により、地方公共団体が行った確認検査の結果に従って工事が行われていれば、たとえ確認検査に瑕疵があったとしても「適法な確認検査に基づく工事」ということが出来るようになりますし、確認検査に瑕疵があった場合にはこれによって被った損害に対して賠償請求することが出来るようになると考えられます(行政に対する賠償なので、国家賠償訴訟等の枠組みで行われることになろうかと考えられます)。

一方、イーホームズ等の指定確認検査機関が行った確認検査については、解釈が難しくなります。というのも「指定確認検査機関」が行った行為が「行政行為」となるかどうかという点を考えなければならないためです。

これについては、建築基準法第6条の2にて
前条第一項各号に掲げる建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて、第七十七条の十八から第七十七条の二十一までの規定の定めるところにより国土交通大臣又は都道府県知事が指定した者の確認を受け、国土交通省令で定めるところにより確認済証の交付を受けたときは、当該確認は前条第一項の規定による確認と、当該確認済証は同項の確認済証とみなす。 (抄録)

というみなし規定があることから、「行政行為に準じた行為」として同様の効力(公定力等)が働くことになると思われます。

そうすると、地方公共団体による本来の建築確認と同様、その確認検査に瑕疵があった場合にはこれによって被った損害に対して賠償請求することが出来るようになると考えられます(ただ、こちらは民間に対する賠償なので、民法の損害賠償請求の枠組みで行われることになろうかと考えられます)。

いずれにせよ、「確認検査」という“許可”を与える行政行為が行われている以上、仮にヒューザーが故意に確認検査を忌避し、又は錯誤をさせるような行為を指示していない限り、確認検査を行ったイーホームズや自治体に対する損害賠償責任が発生する可能性は十分に考えられます。

イーホームズが、“設計書の偽装が行われていた可能性=建築確認検査に瑕疵があった可能性”をいつどこでどのようにヒューザーに伝えたは知りませんが、そんなことは「建築確認検査にあった瑕疵」に対する責任を負うか否かとは関係のない話であり、この瑕疵に対する損害については、“ヒューザーに対して”きちんと賠償する責任を負わなければならないと私は考えます。

今回の事件では、“ヒューザー”が一方的に悪者として報道されていますが、きちんと紐解いていくと「ヒューザーが負っているのは“無過失であっても負わなければならない責任”」であって、実際に過失があったのは「イーホームズ等が行った確認検査」という様相が見て取れます。(ヒューザーとして報道対応などにリードミスがあった点は否めませんが・・・)

今後、どのように自治体・イーホームズ等が対応を進めるのか注目を集めるところではありますが、報道を見る際には「どこに過失の事実」があって、それに対して「誰が誰に対して責任を負わなければならないのか」をしっかりと考える必要があると思います。

なお、私としては、たとえヒューザーが破産宣告を受けたとしても、必ず破産管財人の弁護士がイーホームズや損害賠償請求を行うと思っています。もしそうでなければ、“過失により瑕疵を与えた”者が逃げ切ってしまう可能性がありますし、被害者(購入者)への賠償もままならないことになってしまうと考えるためです。“見抜けなかった”の一言では「過失はなかった」ということには全くならないと私は考えます。


報道に見る:刑事と民事の狭間(ライブドア編)

2006-01-20 | 経営実務
さて、一昨日に引き続いて「ライブドア」の話題。次々と“新事実”が報道をされていますが、このブログでは少し違った角度から考えたいと思います。というのも、今回の“事件”は、「刑事的視点」と「民事的視点」でずいぶん様相が異なる印象を受けるためです。

奇しくも、愛読ブログである47th氏のふぉーりん・あとにーの憂鬱磯崎先生のisologueと、で、それぞれ大変興味深いコメントがありました。

まず、47th氏のエントリを紹介します。
ただ、それでも、ひとたび「責任」や「刑罰・行政罰」の世界の話として、それが「違法」かと言われれば、それは別の話ではないかという疑問が残ります。例えば、法律の世界でも、「明文では明らかではないけど、趣旨から考えると違法とされる可能性のある取引」というのは、いくらでもあり、まさに、その典型の一つがライブドアがニッポン放送株式買収の際に用いた「ToSTNET-1を用いた時間外取引」だったわけです(この辺りの詳細は過去記事(これとかこれとかこれとか)をご参照下さい)。

過去記事の中でも書きましたが、件の事件以前の段階で、こういう取引についての多くのビジネス・ロイヤーの立場は「OKを出すべきではない」ということだったと思います。ただ、他方で、実際にそれが起きたときに、それが「100%違法になる」というものでもありません。
その意味では、あれは我々からみれば「制度の穴」だったわけで、それを「利用すべきでない」とは言えても、実際に利用した人間を必ず「法律違反」に問えるかというと、そういうわけでもないと考えていたわけです。(最終的には、なぜか金融庁長官の解釈でお墨付きが出てしまったような形になってしまった後で法律改正がなされたわけですが・・・)

(上記は一部の抜粋です。本体はこちら


一方で、会計士である磯崎先生はこう述べています。
会計原則でいう「真実」とは、「絶対的な真実」とは違って、業種・業態や人間の判断によって若干ゆらぐ性質の「相対的真実」である、てなことが言われ、「罪刑法定主義」とか「租税法律主義」というのとは違って、(明文の)ルールに沿っているかどうかが問われるのではなく、会計の目的(大原則)にそっているかどうかが問われると考えます。もちろん、「相対的真実」なので、人によって若干考え方が違う面はありますが、「企業の財政状態や利益を適正に表示すること」は大原則中の大原則。にもかかわらず資本取引と損益取引を混同して利益を大きく表示しようというのは、会計で最も避けなければならないことなわけです。つまり、財務諸表論の1時間目で習うようなお話。

いくら明文のルールに書いてなくても、会計士100人に聞いて100人ともが「なんじゃそりゃ?」と言う会計処理や表示は、「公正なる会計慣行」とはいわないと思います。

(同じく一部抜粋です。本エントリはこちら


この二つを読み比べてみて改めて感じたことは、まず「会計原則や会計基準など、会計に関する話はあくまでも『民事(私対私の関係)』の話である」ということです。

今回の事件は、磯崎先生も御指摘の通り、“会計を通じて、企業は自ら真実の姿を明らかにする”という「企業会計原則」の根本的概念を踏まえると、恐らく何らかの「企業会計原則に従わなかった行為(特に資本取引・損益取引区分の原則)」があったというように判断するのが合理的なのだと思います。この面で言えば、これにより損害を被った者がいたとしれば、ライブドアに対して「不法行為による賠償責任」を請求できる余地は十分に用意されていると思われます。(ただ、「相当因果関係」があると認められる範囲がどこまでかということの判断は難しそうですが・・・)

一方、この話をそのまま刑事罰を与えるということにつながってよいのかどうかについては、議論の余地があるのではないかということも感じます。

刑事罰という制裁を与える行為は、「国から民に対する強制的公権力の行使」です。しかし、この制裁行為が「権力を持っている人の気分」で無制限に濫用されてしまっては、民主国家の基本である「自由」を大きく損なってしまうことになってしまいます。そこで、憲法では第31条にて
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
という「罪刑法定主義」を定めているのです。

そこで問題となるのが、「会計的にアウト=刑事的にもアウト」という等号関係が成り立つのかどうかということです。

この点について、47th氏のエントリで

ただ、それでも、ひとたび「責任」や「刑罰・行政罰」の世界の話として、それが「違法」かと言われれば、それは別の話ではないかという疑問が残ります。
(中略)
法律家というのは、(中略)本能的に国家権力がフリーハンドを持つことに強い警戒感を持っているので、「粉飾」という概念が事実上捜査機関に大きな裁量を与えてしまうんじゃないかということもまた非常に気になるわけです。これは、「何で弁護士は大量殺人犯を弁護するのか?」というのと少し似ているのかも知れません・・・(まあ、ライブドアは大量殺人犯ではないわけですが・・・)

と述べられている通りかと存じます。

個人的には磯崎先生・47th氏どちらの御意見も大変素晴らしいものであると感じています。ただ、それでもなお、国家が公権力を行使することについては、民事のそれとは異なるより厳格な条件で運用されるべきことであると思っていますので(そのための罪刑法定主義ですし)、報道が事実だったとしても、その事実を持って「ライブドアが刑事的な訴追・罰を受けるべきかどうか」いう話は切り離して考えるべき問題であると感じています。

報道が事実だとあくまで仮定した場合ですが、ライブドアは民事的な責任(例えば上場廃止なども含めて)を負ってしかるべきとは思います。しかし、刑事的な罰を受けるべきかどうかというと、会計慣行に沿っているかどうかではなく、あくまで証券取引法における刑罰規定と厳密に照らし合わせて判断されるべきなのではないかと、私は考えます。

実はこのあたりの話は「ヒューザー」の話題にもつながっています。明日のエントリでは「行政行為」も含めた観点から、ヒューザーの“報道”について見ていきたいと思います。

疑問:ヒューザー・ライブドア報道を見ていて・・・

2006-01-18 | 経営実務
昨日から紙面をにぎわせている2つの事件を見ていて、素朴な疑問が浮かんでいます。それは・・・

「彼らはいったい『何を』問われているのか?」

ということです。

なお、あらかじめお断りしておきますが、当然のことですが、このエントリでの意見は決してヒューザー・ライブドアを支持するものでもありません。というか、彼らがはたして「悪人」なのかそうでないのかには、まったく興味がありません。

ここでは単純に、報道を見ていて「法律面から見て、これってどうなの?」という疑問を感じた部分について、私見を交えて述べさせていただきたいと存じます。

ヒューザーのケース


まず、ヒューザーの「喚問証言拒否」についてです。仕事の都合でリアルタイムタイムに喚問の様子を見ることは出来ませんでしたが、その後の報道を見る範囲では

「刑事訴追の恐れがあるので」という理由で、証言を拒否した

という点が「誠実でない!」と非難を浴びているようです。(証言拒否罪なるものまで飛び交っていますが・・・)

さて、そうなると、「証言を拒否することがどこまで違法なのか?」というのが論点となります。

ここで確認しておきたいのが、日本国憲法です。少し憲法を読まれたことのある肩なら御存知でしょうが、憲法第38条1項には
何人も、自己に不利益な供述を強要されない

と書かれています。(一般的には「黙秘権」と呼ばれているものですね。)

これに対し、議院証言法第7条では
正当の理由がなくて、証人が出頭せず、現在場所において証言すべきことの要求を拒み、若しくは要求された書類を提出しないとき、又は証人が宣誓若しくは証言を拒んだときは、一年以下の禁錮又は十万円以下の罰金に処する。

とあります。

つまり、最上位の法規範である憲法の条文を、議院証言法で修正しているわけです。しかし、憲法第38条で保障しているのは「精神的自由」の一形態である黙秘権(自己負罪拒否特権)ですので、これに制限をかけられるとなると、単に「公共の福利のために必要」とは片付けられない話となります。(判例でも、精神的自由に対する制限は、合憲性の推定を受けないとされています。)

また、そもそも「ヒューザー」が行った行為(「瑕疵を認識した上で販売したのではないか」)という点ですが、これも「瑕疵を認識していたかどうか」というのは非常に微妙な話です。なぜならば民間機関とはいえ、公の事務に基づく「確認検査」を受けたわけですから、「明白かつ重大な過失」がない限り、この結果は「こ正しい」という一応の推定(「公定力」)が働くことになります。

そこで、この「正しいという推定が働いている確認検査結果」を信じて販売した「ヒューザー」には、瑕疵担保責任以外に、果たしてどのような「責任」があるのか、不思議に感じるところです。

これが、例えばイーホームズが「確認検査結果を取り消す。ついては、建設・販売・引渡しを中止するように」と明確に示したとすればまた別の話となると思いますが、単に「危ないかもしれない、どうしよう?」と言われたレベルでは、正しいという推定を打ち消す材料とは言いがたいのではないでしょうか?

そもそも、ヒューザーが×というなら、シノケンを初めとした他のデベロッパーも、場合によってはホテルの事業主も×ということにならないのでしょうか?

ヒューザーは営業停止状態に追い込まれていますが、“確認検査で瑕疵を見逃した”イーホームズはまだ営業を続けています。また、ホームページでは次のようなプレスリリースを出しています。
今日の証人喚問を聞き、事件の全容解明には、政治家の不当な関与が明らかになることが重要だと思います。全容が解明されることで、この事件の責任の所在が明らかになり、被害者の救済が図られるはずです。

あなたは、これをどのように読みますでしょうか?

私には、あえてイーホームズに聴きたいことがあります。

瑕疵があると判断したときに、あなた方は「確認検査結果の取り消し」を明確に行いましたか?

ライブドアのケース


次にライブドアの事件です。これもいまいち「何が問題か」ということがよくわかりません。

まず、直接の嫌疑となったM&Aに絡む開示の取り扱いの点ですが、当時の開示情報を見る限り、100%株主として投資組合がきちんと明示されており、一応「形式的には」整っているように見えます。今回の“投資組合”がライブドアが実質支配していたとしても、このような事実は「調べればわかる」範囲な気がします。

また、47thさんのふぉーりん・あとにーの憂鬱でも御指摘の通り、もし投資組合がライブドア配下であることを開示しないという不作為が「不適正な開示」ということに該当するのであれば、
少なくとも証券取引法上は、流通市場において開示すべき内容というのは、有価証券報告書と臨時報告書の提出義務の中にとりこまれていて、これに関する不実記載やmaterial omission(重要事項の不記載)を罰する

というのが本筋なるのではないかと思うわけです。
(ただ、この場合はこの“実質支配”が重要事項に該当するかどうかが争点になりますが・・・)

さらに、今日になって「ライブドア本体の粉飾決算」という話も出てきています。これもいまいち「報道姿勢」の影で本質が見えにくくなってしまっている気がするのですが、どうやら連結企業内での利益調整という色彩が強そうな印象があります。そうすると、「連結決算」への影響はきわめて限定的(単純に言えば0)となりますので、果たしてどこまで「株価を上げる目的」というところがいえるのかどうかというのが微妙になってきます。(もちろん、本当に行われていたとすれば望ましいとは言いがたいのですが・・・)
(1.19追記:この点については「野球参入」との話題も絡んできていますね。また、どうやら「連結対象になる前の買収先企業から架空の(?)売り上げを立てた」という話も出てきているようですので、話は変わってくるかもしれません。)

そもそも、この「粉飾決算疑惑」が“本丸としての狙い”だったとしたら、17日の「ライブドアマーケティング社の開示内容に関する証券取引法違反容疑」での捜索令状で資料を押収した資料を「粉飾決算疑惑」の操作のために使っていいものかどうかという点が、「訴訟手続きの適法性(いわゆる「別件捜査」が認められていいのか?)」という部分で大変気になります。

大きな事件になるほどこのような捜査事例を見るのですが、国家が義務を強制することになる捜査・訴訟手続きだけに、果たして「法律(憲法)的に」許され得る行為なのかどうかということに疑問を感じてしまいます。(巨悪の解明のためには「別件捜査」も同義的に許される・・・ということですむ話ではないと個人的には思います。)

(ちなみに、個人情報保護法では「特定の利用目的を示して受け取った個人情報は、知っているからといって黙って勝手に別の利用目的で使ってはいけません!」ということになっています。民間はだめで国家なら良い・・・・・ってことはないですよね?)

この2つの事案は大きく取り上げられているがゆえに、ともすれば「こいつが悪い!」「悪いやつは全部悪い!」となってしまいがちです。だからこそ、「本当のところって、どうなの?」という姿勢で、事実として何が起こっており、それが“法律に照らし合わせて”どう適合していないのかという視点から常に見据えていかなければならないのだろうと考えます。

大変長くなりましたが今日はこれにて。

(1.19一部追記修正しました。)