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ブログと私(6) 「父の日記」の持つ可能性

2005-02-23 17:22:34 | ブログと私
「父の日記」の持つ可能性


 先日、gooの新着記事で、偶然に発見したブログ。

父の日記

 このブログでは、ただ淡々と父が残したという日記を1日づつアップするのみである。だが、その父というのが、大東亜戦争(アジア太平洋戦争)に従軍した兵士の一人であり、しかも前線での様子を日記に残しているのである。
 そして何よりも目をひくのが、日付の一致。例えば、父が、昭和17年2月22日に記した日記を、平成17年2月22日にブログにアップしているのである(ブログでは、時間の刻印はされてないが、午前8時位の早い時間帯に既にその日の日記がアップされるようだ)。

 このブログの試みは、いろいろな可能性があるように思う。



■過去の体験記としての価値
 戦争を体験しない人間が日本人の多くを占めている今日、合衆国と戦争をした過去があることを知らない子どもも多いと聞く。
 歴史の教科書でもちろん触れられるアジア太平洋戦争ではあるが、詳細は述べられないし、東条英機とか、首脳陣の名前が出てくるだけだ。
 学校では、戦争はいけないことだと、一面的な感情論で洗脳されるだけ。(戦争は避けるべきことだと僕も思ってます。好戦主義じゃないので。。)

 そういう中で、戦争を生きた人々の一人一人の言が見られるということは価値あることと思う。時代を形成した一人一人の生活や考え方が見られるのは、またとない機会だ。



 ちなみに、この日記の作者は、南方に出征している。射撃隊に属し、前線の歩兵を援護する役割のようだ。このあたりの役割や用語や作戦の意味などが解しきれないのが惜しいところだが。。。自分の属する隊の長への批判なども見られる。
 射撃隊に属しているからなのか、命のやりとりに対して、そこまでの切迫感は感じられない。しかし、歩兵の被害などを気にかけ、命の尊さはよく認識している。また、自分自身も既に覚悟を決めているようで、いつ命を失ってもよいという潔さが見られる。このあたりは、出征の前に既に覚悟を決めたのだろうと想像され、軍人としての心理が垣間見られる。
 開戦のニュースの時の興奮なども描かれており、現在の価値観で当時の善悪をはかることが、いかに無意味なことかをよく知らせてくれる。



■ブログとしての価値
 さて、ブログというものは、日記という性格が強い。現在日本で流行しているブログサービスの特徴は。。。
・タグを使わずにコンテンツをアップできる。つまり、専門知識がいらない。
・アップした日付時間が打刻され、時間系列でコンテンツを遡る。同じ話題同士のカテゴライズには不向きで、アーカイブの整理には向いていない。この不利な点が、日記の性格を増している。
・コメント機能。閲覧した者が感想を書きこめ、新たなコンテンツの広がりを可能にする。
・トラックバック機能。閲覧したブログ管理者が自分のブログと相手のブログを関連付けることが可能になる。



 まず、日記という性格の強いブログで、過去の日記をアップするという作業が、非常に相性がよいという点があげられる。ここに日付の同一という価値が生まれる。昭和と同じ日付の平成に記事がアップされるなんて、すごくおもしろい企画だと思う。そこに64年(63年?)のタイムラグがあり、時の重みを感じやすくさせてくれる。
 現在流行っているブログの特徴は、いわば「垂れ流し」。今思ったことを、今書いていることで、そこに書かれていることは、醸成という作業が全くない。今の空気をとどめておくという価値はあるけど、逆にいえば、時の流れを経ていない、熟成されないものばかりだ。
 そうしたブログの欠点を、この「父の日記」は見事に覆している。元々は「いまの」文章だったものが、月日を経て、熟成が行われている。

 そして、コンテンツの内容、つまり戦争を描く日記が、若者によく目が触れられるメディアに登場するということ、しかも、それが閲覧者のコミュニケーションを可能にするという点で、新たな価値を創造しているんじゃないだろうか。戦争を知らない日本人たちが、戦争の生の記述を見て、そこで感想を交換するという機会を提供していることは、稀有の存在と思う。

 こうした点は、ブログが専門知識を要さない点に寄与していると考えられる。この「父の日記」の管理者の方も、計算すれば、定年を迎えられるあたりの年だと考えられるので、HP作成となると、壁が一段高くなると思われる。それが、ブログというシステムによって、こうした試みを可能にしたというのは、意義深いかと思う。



■ブログというメディアを使った可能性
 『電車男』が話題になって1年くらい。書籍化までされて、今は『今週、妻が浮気します』とか、ネットコンテンツの書籍化が流行りつつある。「父の日記」もまた、そうした可能性はもつものじゃないだろうか。
 ただし、それは、前述のコミュニティが活性化すればの話。ネットの書籍化のうまみは、コンテンツを名もない一般人が一言づつ書き込みをして形成されたもので、執筆にお金がかからないことにある。
 対して、こちらは戦中の日記で、このコンテンツのみならば過去に書籍化されているものもよくある。ネットで発表され、コミュニティという付加価値がつくことでこそ、書籍化する意味もみえてくると思う。著作権等の問題も発生するだろうけど、過去の歴史をブログを通して知り、それに対してコメントがつく。このコンテンツ全体が書籍化されれば、それは貴重な資料となりうると思う。



 このブログが広くネットユーザーの目にとまって、活発な議論がおきればと思う。(と言いながら書き込みしたことないが。。。)
 また、ブログ管理者の方には、ご苦労が多いことかと思うが、ブログ作成を続けていっていただければと思う。愛読してます。がんばってください!



■ここにトラバ打ちました
読んで下さる方へ【父の日記】



■関連リンク
父の日記
昭和17年の日記 日米開戦からフィリピン戦線~日本軍はフィリピンへ敵前上陸マニラ占領後バターン半島の米軍掃討を目指す



藤井忠俊『兵たちの戦争―手紙・日記・体験記を読み解く』朝日選書
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林尹夫『わがいのち月明に燃ゆ』ちくま文庫



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映画と私(4) 『ソンツェ(太陽)』
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
父の日記 (m-cedar)
2005-02-25 16:05:44
読んでくださってありがとうございます

若い人に読んでもらいたい 当時の一般的?な日本人の気持ちを知りたいという思いが同じようで よかったです。

そしてなにより本当のことを知りたいのです。二度と愚かな戦争をしないために。

 これからもよろしくおねがいいたします
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>m-cedarさん (tarodeyoshi)
2005-02-25 21:32:09
コメントありがとうございます。

こうやって管理者さんご本人をお迎えすると、偉そうなことを申し上げてしまったなと、恐縮する限りです。



ご指摘のように、「父の日記」のブログの方は、当時の方々の考え方を知りたいと思いながら拝見している次第です。理解することは不可能だろうとは思いながらも、こうしたものには、より多く触れておくべきと思っています。



知っておくことで、今後の自分の人生の判断の一基準とさせていただければと。読書(?)でも、それが自分の経験として、血肉となり判断決断に生きればと思っています。



ちなみに、インターネットという新たなメディアでの試みとしての可能性の持論を展開させていただきました。。ネットというメディアについて、いろいろと興味があるもので。。



今後ともよろしくお願い申し上げます。
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