ある日の早朝、人影も疎らな信越本線黒井駅、1本の貨物列車が朝日を浴びながら出発を待っていました。その名も4380レ、北陸、西日本方面から3561レ、東北、関東方面から3560レでやってきた化成品をまとめ、妙高山麓の二本木駅まで送り込む列車です。カマ屋の皆様なら、急行「能登」牽引の間合仕業で、EF62最後の定期貨物仕業として記憶されるところでしょうが、「能登」が電車化され、更に碓氷峠を越えること自体無くなってしまったこの頃は、牽引機はEF64-1000へ交代していました。
この列車、運転区間は短いものの、珍車も多く、酢酸専用タキ3700や、青化ソーダ液専用タキ22900が5-6輌ズラリと連なった姿は壮観ですらありました。また、出発する黒井駅ではホーム真横に、3線開きの発着線に引き出されるので、編成調査や撮影に最適だったのも忘れられません。バックは架線が少々五月蠅いものの、季節問わず完全順光かつ、駅周辺に人家が少ないこともあり、ホームに人影が少ないことも好都合でした。
記録した2002年10月12日の当列車は、オール化成品タンク車の現車16輌と非常に見応えのある編成で、当時セメントや石油以外でこれだけ見事なタンク車編成は他では見られなかったと思います。
機:EF641016(高機)
1:タキ3760(ダイセル/新井) 安治川口→新井 氷酢酸
2:タキ3752(ダイセル/新井) 安治川口→新井 氷酢酸
3:タキ3732(JOT/名古屋南港) 中条→新井 酢酸
4:タキ3768(クラレ/中条) 中条→新井 酢酸
5:アタキ3710(ダイセル/新井) 中条→新井 酢酸
6:タキ3771(ダイセル/新井) 中条→新井 酢酸
7:タキ11255(ダイセル/新井) 椎津→新井 アセトアルデヒド
8:タキ22917(日本曹達/二本木)千鳥町→二本木 青化ソーダ
9:タキ22918(日本曹達/二本木)千鳥町→二本木 青化ソーダ
10:タキ23628(JOT/郡山) 根岸→二本木 溶融イオウ
11:タキ22910(日本曹達/二本木)千鳥町→二本木 青化ソーダ
12:タキ11804(JOT/郡山) 千鳥町→二本木 青化ソーダ
13:タキ22905(日本曹達/二本木)千鳥町→二本木 青化ソーダ
14:コタキ10112(日本硫炭/安治川口)安治川口→二本木 返空
15:コタキ5132(日本硫炭/安治川口) ※車票不明
16:コタキ17767(日本曹達/二本木) ※車票不明
写真を撮って、車票を調べ、記録を取って、とホームを行ったり来たりする楽しい時間はあっという間に過ぎて行き、やがて発車時刻になりました。甲高いホイッスル一声、ガチャガチャガチャーンとカプラーのぶつかり合う大音響が周囲に響き渡り、EF64の重厚な唸り、タンク車の奏でる軽快なジョイント音と共に二本木へ向けて走り去っていきました。さて、私も次の電車で追い掛けていくことにするか。