長野県/司法書士竹内利一♪【黒姫法律実務研究所】

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【判例】認知症高齢者への販売行為につき意思無能力による契約無効が一部認められた事例

2015-03-24 | Weblog
類似するケースで,裁判をあきらめたことがあります。

ある方の成年後見人の私は,自分一人だけの判断だけでなく,弁護士にも法律相談しましたが,
結果として訴訟手続をあきらめる結果となりました。

2年前に作成された診断書には5年前から認知症が進行していると書かれていました。
ちょうどそのころに悪質商法の業者に支払うために多額の借金を作ってしまったこの方の財産は,
4月に年金が入らないと残金0円となるというケースです。
それまで貯蓄していたはずの数百万円の財産は,借金の返済のために消費されていました。

悪質な販売をした事業者を調べたところ現在廃業して行方がつかめず,
苦虫をかみつぶしたような気分になったことを思い出します。


国民生活センターのサイトに掲載されていました。

詳しくは

http://www.kokusen.go.jp/hanrei/data/201502_1.html

【解説から引用】
 意思能力とは、自己の行為の結果を判断できる精神能力である。意思能力は、問題とされる法律行為の種類、特に行為の複雑性や重大性の程度によって異なり、その有無は個別に判断しなければならない。判例・学説上、意思無能力者 の行為には法的効果が生じないとされている。

 意思無能力の原因には低年齢(7歳程度以下と説明されることが多い)のほか、精神上の障害がある。後者の場合で意思能力なしとされた判決としては、本件のような認知症のケース(参考判例(1)~(7)など)のほか、脳血管性障害のケース(参考判例(8)など)、精神遅滞のケース(参考判例(9)など)、統合失調症のケース(参考判例(10)など)などがある。

 意思能力の有無は、問題となる法律行為の時点で判断されるため、その時点での医師の診断書がある等の事情がなければ意思能力がないことの立証は難しい。本件でも、Xの主治医の陳述書について、主治医の診断経験に基づく意見に過ぎないなどとして「上記陳述書のみを根拠として直ちに2005年当時、Xの意思能力がなかったと認めるに足りる合理的な立証がなされたとはいえない」としているが、主治医の陳述書をより重視した解決が望ましいと思われる。

 本件で、Xは、ブティックAの担当者Eが、1年間に100回以上もXと会話したのであれば、Xの認知能力が低下していたことに気づかないはずはなく、Xに対し、衣料品とは関係のない健康食品の販売をしたこと、決済不足となったXに対しEが銀行窓口まで同行することは、Eが、アルツハイマー型認知症により判断能力等が衰えていたXに対して、そのような状況を知り、または少なくとも知り得べき状態にあったから行ったことであり、その能力を考慮することなく、自ら販売利益を得るために、過剰に婦人服等を販売したものであり、このような売買行為は、商品販売活動として社会的に許容される相当性を逸脱する行為であり、公序良俗に反すると主張している。Xに対する販売行為の態様が、この主張のとおりだとすると、これは、暴利行為ないし状況の濫用(らんよう)に該当する可能性のある行為であり、公序良俗違反により無効とする余地もあったと思われる。