アーミッシュはプロテスタントの一派で、ローマ・カトリックの弾圧を恐れて新大陸アメリカに逃れてきた。創始者のメノ・サイモンズ(1496~1561)の名前をとってメノナイトと言われ、メノナイトの一員ヤコブ・アマンが1639年ごく少数の同調者とともに旗揚げしたのがアーミッシュである。幼児洗礼ではなく成人洗礼を主張したので再洗礼派と呼ばれる。イエスの教えを日常生活に取り入れて、聖書に忠実に生きることを旨とするアマンの主張は多くの支持者を生んだ。チャーミング・ナンシー号でアメリカにやってきた21家族を皮切りに、1700年代の終わりまでに約500人、さらには1800年代には、およそ3000人のアーミッシュがアメリカに渡った。
アーミッシュの特徴は彼らの生活スタイルがこの200年間全く変わらなかったことである。服装は当時のまま。自動車は使わず、馬車。電気は使わず、農業を生業とする。読書は聖書以外禁止。義務教育以上の高等教育は受けない。税は払うが社会保障には入らない。離婚は禁止等々、富と自由を求めてやってきた移民とは完全に一線を画している。彼らは家族、コミュニティのネットワークで助け合って暮らしている。アーミッシュの子供は16歳になると一度親元を離れて俗世で暮らす「ラムスプリンガ」という期間に入る。アーミッシュの掟から完全に解放され、時間制限もない。子供たちはその間に、酒、たばこ、ドラッグなどを含む多くの快楽を経験する。そして18歳・成人になる際に一年間アーミッシュのコミュニティーから離れた後に戻るかアーミッシュと絶縁して俗世で暮らすかを選択することが許されるが、ほとんどの者が洗礼を受けて生涯アーミッシュとして生きる。その結果、彼らの人口は20年ごとに倍増している。
この現代社会のアンチテーゼと思われる彼らの生き方がいま注目されている。文明化に異を唱える新興宗教のコミュニティーも多くあるが、多くはカルト集団になってしまうことが多い。だが、アーミッシュの場合は200年の伝統があるので、その存在は揺るがない。本書はタイトルのごとく彼らの「老いと終焉」をルポしているが、彼らの死生観は、あるがままの老いと向き合い、ありのままに受け入れる。そして死は生の延長上のことであると考える。そして死は自宅で迎えるのが普通だと著者は言う。介護問題も大変だと思うが、先述のコミュニティーの協力でやっているようだ。アーミッシュの医療事情を著者は次のように言う、彼らは医療保険に入っていないので、体の不調を感じてもすぐ病院には行かず、まず一般薬とサプリメントを服用するが、それだけではなく各家庭に伝統的に伝わる家庭薬を使い、症状に合わせた食品を摂って治癒を図る。それでもだめならカイロプラクターに行き、それでもだめなら病院へ行く。ただし、けがと妊娠中のトラブルに限ってはためらわずに病院に行くのだと。
文明の進歩に伴ってコミュニティーは核家族化が進み人間関係が砂のように希薄になる中で、文明を拒否して生きるアーミッシュの濃い人間関係の中で、助け合うという人間の基本が守られているのは学ぶべきものがある。ここにはキリスト教精神が背景にあるとはいえ、高齢者介護の問題を考えるヒントがある。「金持ってても晩年は寂しい」では生きてきた甲斐がない。アーミッシュの生き方には、ある種、老荘思想の力強さがある。
アーミッシュの特徴は彼らの生活スタイルがこの200年間全く変わらなかったことである。服装は当時のまま。自動車は使わず、馬車。電気は使わず、農業を生業とする。読書は聖書以外禁止。義務教育以上の高等教育は受けない。税は払うが社会保障には入らない。離婚は禁止等々、富と自由を求めてやってきた移民とは完全に一線を画している。彼らは家族、コミュニティのネットワークで助け合って暮らしている。アーミッシュの子供は16歳になると一度親元を離れて俗世で暮らす「ラムスプリンガ」という期間に入る。アーミッシュの掟から完全に解放され、時間制限もない。子供たちはその間に、酒、たばこ、ドラッグなどを含む多くの快楽を経験する。そして18歳・成人になる際に一年間アーミッシュのコミュニティーから離れた後に戻るかアーミッシュと絶縁して俗世で暮らすかを選択することが許されるが、ほとんどの者が洗礼を受けて生涯アーミッシュとして生きる。その結果、彼らの人口は20年ごとに倍増している。
この現代社会のアンチテーゼと思われる彼らの生き方がいま注目されている。文明化に異を唱える新興宗教のコミュニティーも多くあるが、多くはカルト集団になってしまうことが多い。だが、アーミッシュの場合は200年の伝統があるので、その存在は揺るがない。本書はタイトルのごとく彼らの「老いと終焉」をルポしているが、彼らの死生観は、あるがままの老いと向き合い、ありのままに受け入れる。そして死は生の延長上のことであると考える。そして死は自宅で迎えるのが普通だと著者は言う。介護問題も大変だと思うが、先述のコミュニティーの協力でやっているようだ。アーミッシュの医療事情を著者は次のように言う、彼らは医療保険に入っていないので、体の不調を感じてもすぐ病院には行かず、まず一般薬とサプリメントを服用するが、それだけではなく各家庭に伝統的に伝わる家庭薬を使い、症状に合わせた食品を摂って治癒を図る。それでもだめならカイロプラクターに行き、それでもだめなら病院へ行く。ただし、けがと妊娠中のトラブルに限ってはためらわずに病院に行くのだと。
文明の進歩に伴ってコミュニティーは核家族化が進み人間関係が砂のように希薄になる中で、文明を拒否して生きるアーミッシュの濃い人間関係の中で、助け合うという人間の基本が守られているのは学ぶべきものがある。ここにはキリスト教精神が背景にあるとはいえ、高齢者介護の問題を考えるヒントがある。「金持ってても晩年は寂しい」では生きてきた甲斐がない。アーミッシュの生き方には、ある種、老荘思想の力強さがある。