読書日記

いろいろな本のレビュー

黒龍江省から来た女 

2008-05-17 23:28:49 | Weblog

黒龍江省から来た女 永瀬隼介  新潮社

 夫にインシュリンを射ち殺害し行方をくらませた中国人妻、史艶秋。彼女は黒龍江省出身で、「お見合いツアー」に参加し、21歳年上の日本人と結婚。千葉県の九十九里浜の寒村に住んだが、夫との結婚生活がうまくいかず二子を儲けたが、家に放火し夫の両親も殺害した廉で指名手配された。その後、彼女は整形し、東京浅草で人気風俗嬢へと変身していた。本書は、この「千葉インシュリン事件」のルポである。
 最初は週刊新潮か週刊文春の揚げ足取りの記事レベルかなと思ったが、後半の中国現地取材のあたりから俄然面白くなってきた。彼女の故郷黒龍江省方正県からお見合いツアーで日本を目指す中国人女性が多いのは、この地が満州国崩壊のあと日本を目指して帰国しようとしてソ連軍の犠牲になった入植者が子供をたくさん中国人養父母に預けた、いわゆる中国残留孤児の里であったがゆえという事実が判明する仕掛けになっている。その関係で日本との交流が盛んなのである。このことを知らないと中国人の女性は日本を目指して金儲けを企む、あつかましいのが多いというような誤解を招く。中国で貧困にあえぐ農民の女性が、嫁のキテのない日本の農村の男性と結婚する。言葉もろくに話せない二人が意思疎通を欠いた状況の中で急に結婚とはなかなか難しいことである。だからどうしろということは私には言えないが、満州国建国の余波が80年以上経っても消えないということに歴史の重みを感じる。それにしても疲弊した日本の農村を何とかしないと日本の将来は危うい。食量の自給問題も含めて考え直すべきだ。



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