滝川薫の未来日記

スイスより、持続可能な未来づくりに関わる出来事を、興味がおもむくままにお伝えしていきます

SJSの欧州視察 サステイナブル・トレイル(10月13~19日)参加者募集中!

2024-04-04 00:39:05 | お知らせ
スイスは例年よりもひと月ほど早く、春の花が満開の季節となりました。
今日はSJS独自企画による視察セミナー「サステイナブル・トレイル2024」のご案内です。

日本各地で持続可能な社会づくりに取り組まれている方々と、欧州のパイオニアの方々の間に、生の交流の場を設けたいという想いでプログラムを策定しました。

ボーデン湖周辺のスイスーオーストリアードイツを巡りながら、持続可能性やエネルギー自立に取り組むトップランナーの中小企業や自治体、農家や学校、住宅を視察します。
100%オーガニックのグルメなビオホテルへの宿泊体験(2泊朝夕食付)も含まれています。

【視察概要】
視察期間:2024年10月13日(日)〜19日(土) 現地6泊7日
集合解散:スイス・チューリッヒ空港
最少催行人数:9名〜 *最大13名まで
申込締切:2024年6月28日(金)
視察料金:385,000円〜465,000円 お一人様(往復航空券は自己手配をお願いします)

【ハイライト】
● 東スイスのエコ・シェア集合住宅地
● 東スイスのオーガニック(バイオダイナミック)・ZEBワイナリー・レンツの見学と試飲
● オーストリアの公立小中学校における持続可能な教育現場
● オーストリア・ブレゲンツの森地方の山間自治体における脱炭素化、持続可能な村づくり
● オーストリア・ブレゲンツの森地方のビオホテル・シュヴァ―ネン
● ドイツ持続可能賞を受賞した中小企業2社(洗剤メーカ、スポーツ用品メーカ)における総合的な取り組み
● スイス先進都市チューリッヒの生ごみ・緑のゴミの堆肥化・バイオガス設備
● 中小企業における100%再エネやカーボンニュートラルの取り組み
など

【企画・主催】
SJSスイス-日本サステナビリティ交流会

【コーディネーター・案内人】
プログラムやお申込み方法は、下記からご覧ください。

皆さんのご参加を楽しみにしております!

©Biohotel Schwanen
© Popp_Hackner-Vorarberg Tourismus 



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記録的なソーラーブーム

2024-03-05 23:39:22 | お知らせ

写真:地元の中小企業の事業所での典型的な設置例。見えにくいが東西向きの屋根、南北向きの屋根にもぎっしり設置されている。ここでは南外壁にも設置。


スイスは例年よりもひと月早く春が訪れました。早い春の訪れと共に、庭の設計と施工、メンテナンスがいっきに押し寄せてくる感じです。

先週、建築視察に訪れた方が、太陽光発電があまりついていないね、という印象を述べられていました。ソーラーブームですが、確かに太陽光発電は目立ちません。

野立てがほぼなく、設備が建物に一体化されていたり、外から見えないように配慮されているものが多いという理由もありますが、他方ではまだ建物上のポテンシャルのごく一部しか使われていないのも現実です。

というわけで、今日は最近のソーラーブームについて少しご報告します。


スイスは屋根置き太陽光だけで電力の10%
一昨年のエネルギー危機以来、スイスでも電気代が高騰しており、また太陽光発電の発電コストの方が安い事から、太陽光設置ブームの記録が更新され続けています。

その結果、2023年は九州くらいの大きさのスイスでは1500MW以上の設置がありました。そして、電力需要の1割が太陽光で供給されるようになりました。電力消費に占める再エネの割合は65%となっています。

原則として野立ては行わず、屋根や外壁といった建物上への設置、なおかつ自家消費がベースのスイスでも、これだけ設置されるようになったのは素晴らしい発展です。


1人当たりの累積設置容量はヨーロッパで三位
スイスにおける累積設置量は6.2GWですが、その半分以上が過去3年間で設置された事からも、ブームの様子がうかがえます。

スイス・エネルギー庁の太陽光発電担当者ヴィーラント・ヒンツ氏へのインタビュー記事(※)によると、2023年末の人口一人あたりの累積設置容量は、スイスは700Wで、オランダ(1400W)とドイツ(970W)に次いで欧州第三位だそうです。第一位のオランダとは二倍もの差がありますが・・。

また、2023年の1人当たりの新規設置容量については、スイスは180Wとなっており、こちらもオランダとオーストリア(各225W)に次いで第三位となっています。


将来は40%が太陽光発電
昨年は、地域の中小の産業建築の屋根に、自家消費用の太陽光を新設している現場を良く目にしました。実際には、上記のエネルギー庁インタビューによると、新規の設置出力の半分が戸建てに設置され、残りの半分が産業建築・工場や集合住宅の屋根に設置されているそうです。

また、建物上のポテンシャルはまだまだあり、屋根のポテンシャルの85%が未利用、ファサードのほとんどが未利用とのこと。ヒンツ氏は2020代末までには電力消費の25%を太陽光発電で賄うことになるだろうと予測しています。

スイスでは、国による建物上の現実的ポテンシャルだけでも、今日のスイスの電力需要以上の発電量を得られる事が分かっています。また国の気候中立のシナリオでは、電力需要の40%が太陽光発電により担われるとされています。


太陽光施工者が連邦職業資格に
こういったソーラーブームの中、昨年には建物外皮関連の職業の一環として、「太陽光施工者」(ソラトア)が連邦職業資格となりました。蓄電池を含む太陽光発電システムの施工や補修や解体の専門家です。

教育期間は3年間で、職業教育中は週の4日を企業で教育を受けながら働き、1日を職業学校で勉強します。今年から、スイス全国の169社が「太陽光施工者」の職業教育生を受け入れています。

スイスの子供たちの3分2が中学校の卒業後に職業教育制度の道を選びますが、その中で太陽光発電の専門家が職業の選択肢のひとつとなったのも喜ばしい発展です。


ドイツ・ソーラーコンプレックス社でのソーラーブーム
お隣の大国ドイツでも同様のブームとなっており、23年の新規設置出力は約14GWとなりました。

南ドイツの市民エネルギー企業であるソーラーコンプレックス社でも最高記録を更新しています。23年は屋根置きで20MW、野立て25MWの合計45MWを地域の市民出資の会社として設置しています。ここでも工場の屋根面に設置した自家消費用の設備がケースが多く、最大規模では7MWという設備もありました。

同社の大型の太陽光では発電コストが約5セントとのこと。電力価格は高止まりしていますので、価格とスピード感においてダントツのメリットがあります。2023年は風力の発電量も多く、ドイツでは電力消費に占める再エネの割合がほぼ6割になりました。

今年もソーラーブームも継続してゆく見込みです。


写真:現在、私達のアトリエがリニューアルを手掛けている工場の屋上庭園でも、屋上緑化と太陽光発電を組み合わせたシステムを施工中。工場での自家消費用の東西向きです。


※参考文献:
- « Ende der 2020er Jahre liefert die Sonne bereits ein Viertel des Schweizer Jahresverbrauchs», Energaia, 21.2.2024
«Ende der 2020er Jahre liefert die Sonne bereits ein Viertel des Schweizer Jahresverbrauchs» | BFE-Magazin energeiaplus | Energiemagazin des Bundesamtes für Energie
- Newsletter 01-2024, Solarcomplex AG, www.solarcomplex.de



【お知らせ】
第10回SJSウェビナー 「オーガニックワイナリー・レンツに見る持続可能なワイン造り」

3月26日(火)17時~、スイスの著名なオーガニック(ビオディナミ)ワイナリー経営者であるローランド・レンツさんのウェビナーを開催します!生物多様性促進型、エネルギー自立型のワイン造りのお話をお聞きします。
お申込みはこちらから:http://ptix.at/8x19V8


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3月26日(火)SJS第10回ウェビナー「オーガニックワイナリー・レンツの持続可能なワイン造り」

2024-01-28 03:47:42 | お知らせ







今日は、3月26日(火)に開催予定のSJS第10回ウェビナーについてご案内します。
第10回目はエコ・ビオ企業をテーマとし、スイスのオーガニックワイナリー・レンツのオーナーで、トップレベルの醸造家として著名なローランド・レンツさんにお話し頂きます。

東スイスのトゥールガウ州にあるワイナリー・レンツでは、30年前よりオーガニック・ワイン造りに取り組み、ビオディナミ認証(Demeter認証、有機認証の中でも最も厳しい基準)を受けたワインを製造しています。

 



同ワイナリーでは、地力を豊かにする農法×生物多様性×耐菌性のある強健な品種×品種の多様性×混合栽培により、生命力の強いブドウ園を実現。それにより温暖化時代においても、経済的にも安定した運営と、高品質で個性的なワイン造りを達成しています。

そのワインは国内外で多くの賞を受賞し、2023年には欧州で最も厳しい環境基準を持つオーガニックワイン販売会社デリナートにより、ヨーロッパで最も優れた「生物多様性ワイナリー」に選出されました。エネルギー自立型ワイナリーとしても知られています。



本ウェビナーのポイント
・ビオディナミ認証のワイン造りからの経験
・耐菌性品種PIWI:ブドウの95%を強健な耐菌性品種に転換、育種活動
・動植物の生物多様性の促進:ブドウ畑の15%を生物多様性面積、そのネットワーク化
・エネルギー自立:省エネ、太陽光発電、排熱利用、地熱、蓄電池でエネルギー自立
・混合栽培、パーマカルチャー





日時:2024年3月26日(火)、17時~18時30分
ZOOMを使用し、逐次通訳の生中継にてお届けします

参加費:一般1000円、学割 500円

お申込みはこちらから:http://ptix.at/8x19V8

【講師プロフィール】ローランド・レンツ
ワイナリー・レンツの経営者。国家資格ワイン醸造マイスター。持続可能なワイン造り・農業のビジョンを掲げ、実践。スイスのオーガニックワイン業界を牽引する。その生物多様性とエネルギー自立に関する取り組みは、スイスでも非常にユニーク。



主催:SJSスイス-日本サステナビリティ交流会   
後援:JIA環境会議、JIA関東甲信越支部/杉並地域会

 



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木造ハイブリッド24階建てビルの現場を訪問

2024-01-09 01:13:56 | 建築


あけましておめでとうございます。
能登地震の被災地の皆様にお見舞い申し上げます。

昨年は、温暖化の進行や終わりの見えない戦争が続く中、スイス社会では未来への悲観的な雰囲気が漂っているように感じましたが、太陽光発電ブームを始めとしたポジティブな発展もありました。

個人的には、昨年は日本のコロナ規制が緩和された事により、秋口から続々と常連の視察セミナーのお客様たちが戻ってきて下さり、身動きが取れないほどでした。ご参加下さった方々にも、ホスト側の方々共にも、多くの出会いと学びの機会を頂き、心より感謝しております。緑化設計の仕事についても、いくつかの公共空間や複合施設の緑化プロジェクトが竣工し、大型屋上庭園の設計に携わる機会も頂き、充実した一年となりました。

高さ75mの木造ハイブリッドビル
視察がひと段落した昨年の11月中旬に、チューリッヒ近郊の木造ハイブリッド高層建築の現場見学会に参加しました。レーゲンスドルフ駅裏で開発中の新街区Zwattの一部を成す建物で、設計は建築設計事務所ボルツハウザー・アルキテクテン社、木造エンジニアはB2Kolb社、施工は大型ハイブリッドを得意とする大手の木造会社エルネ社が手掛けています。


写真:Boltshauser Architekten展示パネルより

総高75m、24階建てのうち、下3階はコンクリート造で770㎡のオフィスや商業施設が入ります。その上に21階分の木造ハイブリッドの賃貸住宅156世帯が乗っかる形となっています。建物の背骨を成す階段室はコンクリート造。柱と梁は国産のブナ集成材。そして木の梁の上に薄いコンクリートのスラブが敷かれています。外壁パネルも木造です。木とコンクリートを組み合わせたスラブパネルも、木造の外壁パネルも、事前で工場で製造するプレファブパネル構法となっています。


写真:中央の建物が半分ほど建設が進んだ木造ハイブリッド高層ビル

広葉樹集成材のスケルトン構造
この建物で特徴的なのが、国産ブナの集成材を柱と梁に使っている点です。スイスの森林でトウヒに次いで二番目に多い樹種が広葉樹のブナ。伝統的には主に燃料材に使われる事が多かったのですが、8年前くらいから、その強度を活かして大型建築の構造材に利用する動きが広がってきました。



スイスでも森林所有者や木材産業のイニシアチブで国内にブナ集成材工場が作られた事により、国産のブナ材による高層建築が実現できるようになりました。針葉樹よりもずっと細い材で足り、空間を節約できるのが利点です。この建物ではスプリンクラーが設置されているため、美しいブナの柱と梁をあらわしにできています。

写真:フロアを仕切った後の空間。賃貸住宅となる。

1週間でワンフロアを組み立て
工事現場は、約5日でワンフロアが組み立てられており、スピーディーに進行していました。その際にコンクリ造の階段室と木造部分が同時進行で施工されている点が珍しかったです。フロアのパネル組み立てをしている間に、上階の階段室のコンクリを打っているという意味です。(普通は階段室が出来上がってから木造パネル組み立てます。)

写真:建設中の最上階、階段室の建設が同時進行

11月中旬の見学時には、10階くらいまでが組み立てられたところでした。残りもあと3か月程度で上棟する計算です。最終的にはワンフロアあたり8世帯の賃貸住宅が入りますが、見学時には間仕切りのない状態の、スパンの大きな、フレキシブルな空間を見る事ができました。出来る限り同じサイズのスラブパネルを利用できるように空間構成を工夫しているそうです。



構造体からの排出量を26%削減
H1プロジェクトでは、建築設計コンペでの条件が持続可能性・温暖化対策でした。木造ハイブリッド構法を採用する事により、コンクリート造で同じ建物を建設した時と比較すると、構造体の製造による温室効果ガス排出量を26%削減できたそうです。加えて木造の構造体に1500トンのCO2を固定したとの説明でした。



庇部分には日射遮蔽を兼ねた太陽光発電が設置される設計で、屋根と庇からの発電量で電力消費量の4割弱を生産します。地階部分のファサードは版築になるとか。竣工後の姿を見るのが楽しみです。


写真:Boltshauser Architekten展示パネルより

木造高層化を巡る競争は続く
スイスでは、もはや木造6~8階建てくらいまではあまり珍しくなくなった感があります。そもそも高層建築自体が少ないのですが、ディベロッパーや木造会社、建築家やエンジニアたちの木造高層建築への野心はまだまだ尽きず、複数のプロジェクトが国内でも進行中です。


写真: Arbo。大学やオフィスが入る賃借ビル。奥の高いビると手前の中層ビルが木造ハイブリッド。これらの建物もエルネ社が手掛けた。

ちなみに現在スイスで一番高い木造ハイブリッド建築は、ロートクロイツ村のArboです(15階建て、高さ60m、2019)。まだ開発中のものでは、ヴィンタトゥール市内の再開発地に建設予定のRoket(33階建て、100m)が最大規模となります。隣国のオーストリア・ウィーンには世界で二番目に高い木造ハイブリッドのHoho Wien(24階建て、高さ84m、2019)があります。その隣には高さ113mのDonaumarina Towerが計画されています。


写真:Hoho Wien。ホテルが入っている。世界で二番目に高い木造ハイブリッドのビル。


☆ウェビナーのお知らせ☆
2024年1月23日(火)ペーター・シュルヒ教授ウェビナー
「持続可能な建築の考え方と実践2~改修編」

第9回SJSウェビナーのテーマは、建築の脱炭素にとって最も重要なテーマのひとつである省エネ改修です。講師には第2回SJSウェビナーでもお馴染みの、スイスの建築家ペーター・シュルヒ教授(ベルン州立大学建築学部)をお迎えします。

日時       :2024年1月23日(火)、17:00-18:50頃、ZOOM生中継
講演       : ペーター・シュルヒ教授、「持続可能な建築の考え方と実践2~改修編」
参加費    :1000円(学生500円)
お申込み: http://ptix.at/FZ6Cup










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2024年1月23日(火)SJS第9回ウェビナー「持続可能な建築の考え方と実践2~改修編」のご案内

2023-12-16 04:33:48 | お知らせ


今日は2024年1月23日(火)に開催予定の第9回SJSウェビナーについてご案内します。

今回のテーマは、建築の脱炭素にとって最も重要なテーマのひとつである省エネ改修です。
講師には第2回SJSウェビナーでもお馴染みの、スイスの建築家ペーター・シュルヒ教授(ベルン州立大学建築学部)をお迎えします。

当日は省エネ改修に加えて、スイスのトップランナー建築(ミネルギー)には必須となっている建材のエンボディドカーボンの削減やトレンドテーマであるサーキュラー建築についても、事例を交えながらお話頂きます。

日時:2024年1月23日(火)、17:00-18:50頃、ZOOM生中継
講演: ペーター・シュルヒ教授、「持続可能な建築の考え方と実践2~改修編」
参加費:1000円(学生500円)
お申込み: http://ptix.at/FZ6Cup

皆様とZOOMでお会いできる事を楽しみにしておりますので、どうぞご参加のほどよろしくお願い致します。

 


チラシ・ヴィデオ製作:REPLYe 岡田真樹子

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