すずめ通信

すずめの街の舌切雀。Tokyo,Nagano,Mie, Chiba & Niigata Sparrows

第1592号 ロンドンからリスボンに飛ぶ

2018-08-12 14:55:44 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】ロンドン・ヒースロー空港からリスボン・リスボア空港に向かうBA502便は、夫婦連れでも並び席は取れないという。こうしたことを告げる英国女性の冷ややかさは格別だから、交渉は諦める。英国とポルトガルは歴史的因縁が深いうえに、英国人にとってポルトガルは人気のバカンス先らしい。だから夏休みが始まったこの時期のリスボン便は混み合うのだろう、確かに中距離機のエアバス320は満席であった。



東京とリスボンはユーラシア大陸の端と端に当たるから、11149.28kmもの距離がある。しかしロンドンからやって来たせいか、それほど遠いという感覚が湧かない。ロンドンーリスボンは札幌—鹿児島とほぼ同じ1560km程度で、3時間弱の飛行なのだ。ヨーロッパは狭い。だからEEC→EC→EUと、「一つのヨーロッパ」という人類的大実験が手探りされ続けている。ポルトガルはEC時代からの古い加盟国だ。



イベリア半島西端で大西洋に洗われるポルトガルは、日本の4分の1程度の国土に1000万人超が暮らす小さな国だ。経済の規模は先進国と中進国の間のような位置付けだろうか。人口の4分の1が集中するリスボン都市圏は、近代的な地下鉄と、時代物のトラムが同居する味わいのある街だ。私たちは中心市街地であるバイシャ地区のアパートメントを拠点にしたものだから、通りの人の混み具合は半端ではない。



リスボンは坂の街である。イベリア半島の分厚い大地がテージョ川へ崩れ落ち、急な傾斜地と僅かな平坦部を造成した。河口が大西洋の荒波を防いでくれる港は、紀元前からフェニキア人が交易地として利用していたらしく、街はローマより古く、西ヨーロッパ最古の歴史があるという。いささか狭く、急坂の上り下りは不便この上ないけれど、人々は軒すれすれにトラムを走らせ、何事もないかのように暮らしている。



起伏が激しいと、眺望は魅力的になる。市街には何カ所も展望台があり、それぞれが素晴らしい眺めだ。観光客に人気のサンタ・ジェスタのエレベーターは、低地のバイシャ繁華街と西側高台のバイロ・アルト地区を繋ぐ高さ45メートルのリフトで、屋上が展望台になっている。100年前に建てられた鉄骨組のリフトを登ると、街のシンボル、サン・ジョルジェ城を正面に望み、海のようなテージョ川の河口が一望される。



街並みも、建物の彩色も、おそらく規制されているのだろう、壁は全て白く、瓦はオレンジ色に統一されている。澄んだ陽光が街並みと、サン・ジョルジェ城の丘陵の緑を照らす。10年ほど前、マカオに行った際に「ポルトガル領マカオの印象は、白と青と闇だ」と書いた。ようやくその本国に来て、街にはオレンジと緑が際立っていることを知る。そして気がついた。それはポルトガル国旗の色そのものであることを。



ワールドカップでポルトガルとブラジルが敗退した直後だったから、街には虚脱感が漂っているのかもしれないけれど、世界中からやって来る観光客はそんなことは御構いなしに、夜遅くまで楽しんでいる。あちこちのレストランではファド・ショーが始まる時刻だろうか。昼の暑さは収まって、心地よい風が吹いている。しかし私たちは年齢相応に、明日からのリスボン散歩を楽しみにして、休むことにする。(2018.7.2-8)
















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