すずめ通信

すずめの街の舌切雀。Tokyo,Nagano,Mie, Chiba & Niigata Sparrows

第1739号 日の出とともに土浦を歩く

2021-10-10 08:03:51 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】土浦の今朝の日の出は5時35分とある。それに間に合うようホテルを出る。霞ヶ浦から昇る朝日を眺めたいのだ。白み始めた街は「港町」という。内陸部なのに「港」とは、さすが琵琶湖に次ぐ広大な湖水だ。ジョギングをしている人がいる。釣り糸を垂れる人影が点在している。漁の準備を急ぐ人がいる。そして何の用もない私がいる。運動公園だという湖畔はよく整備され、無風無音の夜明けを迎えている。湖面は広々と空を支え、まことに清々しい。



土浦が城下町だったとは知らなかった。中世以来、一帯に割拠する中小の勢力の拠点の一つで、江戸時代を通じ常陸土浦藩の城下となった。だが水戸街道が霞ヶ浦の水運と結ばれる、物流の要地として発展した商都と言った方が実際をより物語っているかもしれない。戦中は海軍の街として航空隊が置かれ、ドイツの飛行船ツェッペリン号が世界1周の途上、アジアで唯一着船した街といった歴史もある、人口137000人の茨城県南部の中核だ。



驚いたのは市役所が駅前の商業ビルに入居していることだ。市庁舎の老朽化で建て替えを計画していた市が、駅前の大型商業テナントが撤退した空きビルに移転してきたのだ。2015年のことで、当時はだいぶ話題になったようだが、私は知らなかった。建て替えで試算した80億円は、ビルの改修費用や移転費用を合わせて74億円で済んだというから、なかなかの英断である。市民の意見も聞き、地階に食品スーパーを導入するなど便利な役所だ。



土浦市はコンパクトシティー先進地なのだろう、駅前には市立図書館やギャラリーが入る新しいビルも建設され、それらがペデストリアン・デッキで結ばれている。地上部はバスやタクシーのターミナルで、市民の「足」がここに集約される。市役所の移転に伴って新設された大屋根広場は、様々なイベントに活用されているようだし、図書館ビルには銀行や予備校・学習塾も入居しているから、民間活力の導入もうまくいっているのかもしれない。



市役所入口には、市役所と食品スーパーや百円ショップの看板が並んでいる。考えてみればそれで何の不都合があるわけでなく、実に便利で新鮮な光景である。地方ではデパートの閉鎖や大型スーパーの撤退などが相次ぎ、中心商店街に空洞ビルが出現している例は珍しくない。次の商業テナントはなかなか見つからないから、役所の一部や外局で穴埋めしているケースが多い。土浦のように、交通の便がいい駅周辺に街を集約するのも一案だ。



そのとばっちりというわけではないだろうが、銀行が並び、「中央」という町名からしてかつての中心街だと思われる界隈は、いささか寂れが感じられる。中城通りは蔵造りの商家が保全され、かつての「商都」の活気を偲ばせるし、すぐ先の亀城公園では、パターゴルフを競うお年寄りの歓声が響いて来るから、暮らし良い街だと思われるけれど、賑わいは遠のいているようだ。城跡公園の小さな檻で、所在なさそうに座るニホンザルと目が合った。



路地に入り込んで気がついたことがある。玄関に「町内会」の表札が掲げられ、「会長」や「会計」など役職まで書いてある。近年、無関心層が増えて維持が難しくなったと言われる町内会だが、この街では活発な組織が多いのかもしれない。町内会は街の清掃など、暮らしの保全に役立っているのだろうが、どこか同調意識を求められるような「隣組」感がある。これが保守王国と言われる茨城の根源かと考えたが、根拠ある話ではない。(2021.10.4-5)










































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