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【Tokyo-k】ニューヨークでしみじみ眺めたいものが二つあった。自由の女神像と国連ビルである。なかでも自由の女神にはこだわりがあった。マンハッタンのビル群を背景に、ハドソン川の水面の向こうに立つ姿を望みたかったのだ。それは、はるか大西洋を越えて、新たな人生を目指してやって来た、かつての移民たちの気持ちに近づくことができるかもしれないと考えたからだ。もちろんそう簡単に移民の気持ちが分かるはずはなかったけれど。
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マンハッタン島南端のフェリー乗り場に着くと、突然の驟雨に襲われた。これでは女神も霞んで見えないようだから引き返そうとした時、スタテン島行きのフェリーが出発するとアナウンスがあった。女神像が建つLiberty Islandは先日の嵐で桟橋が壊れ、観光フェリーは接岸できないのだそうで、やや沖合を通過するスタテン島行きが好都合なのだった。通勤者用の無料フェリーに乗ると、ニューヨーク市民の暮らしが急に身近かに感じられた。
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出航すると雨はピタリと止んで、暗い空をバックに、すっくと立つ女神が現れた。高く掲げるトーチの金色と、全身を覆う緑青色が実に美しい。これを贈ったフランス人のセンスの良さに敬服させられる。巨大な立像といえば、日本にも観音像などがあるけれど、仏像の持つ慈悲の微笑みと巨大像はそぐわないため、どの像もどこか周囲との関係にぎこちなさがある。それに比べ自由の女神像は、凛々しくも美しく景観に溶け込んでいる。
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女神の背後にEllis Islandの島影が見える。移民たちはここの管理局で、新天地に迎えられる日を待った。「移民」とは、国を移って生活を始める民衆のことである。およそ私のような、生まれた国で吞気に生きてきた人生には想像し難い響きがある。母国が豊かで安定していれば、移民など選ばずに済んだであろう人々は、どれほどの覚悟と忍耐をもってここへやって来たのだろう。新天地に寄せる希望は、並々ならぬものがあったに違いない。
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マンハッタンのダウンタウンにはChinatownがあって、その北はLittle Italy、Nolita(North Little Italyのこと)と続きSOHOの街区に至る。スーパーマーケットでは店員と客が当たり前のようにイタリア語でやり合っていて、五番街やタイムズスクエアなど、華やかなミッドタウンとはずいぶん雰囲気が異なる。そんな街をぐるぐる歩き回って、小さなイタリアンレストランで夕食を摂った。まるでローマの下街に居る気分だ。
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マンハッタン島は南北に細長い島なので、ミッドタウンの中心辺りに位置するホテルからイースト・リヴァー沿いの国連ビルまでは、歩いてもさほどの距離ではなかった。パークアベニューを渡り、3、2、1と通りを過ぎるごとに街は静かになって行って、建物から飛び出して来た女性が颯爽とジョギングを始めたから、川の近くのビルは居住用マンションが多いのかもしれない。そんな一角を曲がると、印象的な国連ビルが聳えていた。
私は子供のころから国連に憧れていた。それは国際連合という機構に対してか、箱形の事務棟と伸びやかな総会場を組み合わせた国連ビルのデザインに対してか、よく分からない。だが最近は、戦勝5カ国がいまだに拒否権を行使するその仕組みを見せつけられるたびに、第2次大戦をいつまで引きずっているのかと苛立ちを覚える。そろそろ連合国を瓦解させる知恵は出ないのかとビルを見上げると、総会場の老朽化が目立った。(2013.7.2)
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マンハッタン島南端のフェリー乗り場に着くと、突然の驟雨に襲われた。これでは女神も霞んで見えないようだから引き返そうとした時、スタテン島行きのフェリーが出発するとアナウンスがあった。女神像が建つLiberty Islandは先日の嵐で桟橋が壊れ、観光フェリーは接岸できないのだそうで、やや沖合を通過するスタテン島行きが好都合なのだった。通勤者用の無料フェリーに乗ると、ニューヨーク市民の暮らしが急に身近かに感じられた。
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出航すると雨はピタリと止んで、暗い空をバックに、すっくと立つ女神が現れた。高く掲げるトーチの金色と、全身を覆う緑青色が実に美しい。これを贈ったフランス人のセンスの良さに敬服させられる。巨大な立像といえば、日本にも観音像などがあるけれど、仏像の持つ慈悲の微笑みと巨大像はそぐわないため、どの像もどこか周囲との関係にぎこちなさがある。それに比べ自由の女神像は、凛々しくも美しく景観に溶け込んでいる。
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女神の背後にEllis Islandの島影が見える。移民たちはここの管理局で、新天地に迎えられる日を待った。「移民」とは、国を移って生活を始める民衆のことである。およそ私のような、生まれた国で吞気に生きてきた人生には想像し難い響きがある。母国が豊かで安定していれば、移民など選ばずに済んだであろう人々は、どれほどの覚悟と忍耐をもってここへやって来たのだろう。新天地に寄せる希望は、並々ならぬものがあったに違いない。
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マンハッタンのダウンタウンにはChinatownがあって、その北はLittle Italy、Nolita(North Little Italyのこと)と続きSOHOの街区に至る。スーパーマーケットでは店員と客が当たり前のようにイタリア語でやり合っていて、五番街やタイムズスクエアなど、華やかなミッドタウンとはずいぶん雰囲気が異なる。そんな街をぐるぐる歩き回って、小さなイタリアンレストランで夕食を摂った。まるでローマの下街に居る気分だ。
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マンハッタン島は南北に細長い島なので、ミッドタウンの中心辺りに位置するホテルからイースト・リヴァー沿いの国連ビルまでは、歩いてもさほどの距離ではなかった。パークアベニューを渡り、3、2、1と通りを過ぎるごとに街は静かになって行って、建物から飛び出して来た女性が颯爽とジョギングを始めたから、川の近くのビルは居住用マンションが多いのかもしれない。そんな一角を曲がると、印象的な国連ビルが聳えていた。
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私は子供のころから国連に憧れていた。それは国際連合という機構に対してか、箱形の事務棟と伸びやかな総会場を組み合わせた国連ビルのデザインに対してか、よく分からない。だが最近は、戦勝5カ国がいまだに拒否権を行使するその仕組みを見せつけられるたびに、第2次大戦をいつまで引きずっているのかと苛立ちを覚える。そろそろ連合国を瓦解させる知恵は出ないのかとビルを見上げると、総会場の老朽化が目立った。(2013.7.2)
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