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69 「経埋ムベキ山」と星座(畑山氏の説)

 前回述べたように、畑山氏は『美しき死の日のために』(畑山博著、学習研究社)において、
・三十二の山々の頂を線で結ぶと、それは、はくちょう座、わし座、たて座、いて座という四つの星座の形になる。
・それはまさしく銀河鉄道の走る場所そのものである。

と云う仮説を立てている。
 つまり、畑山氏は「北上川」を銀河に模し、「経埋ムベキ山」32座を下図のように線で結んで四つの星座とし、
【Fig.3『美しき死の日のために』(畑山博著、学習研究社)314p図①】

 北上川は”天の川”で、「経埋ムベキ山」32座の頂はその天の川にかかる、上から順に
  はくちょう座
  わし座
  たて座
  いて座
を形作るのだと云う。

 そこで、このことを検証してみよう。前回使用した【Fig.2】を用い、同様に線で結び山名を付してみたものが下図である。
【Fig.4 【Fig.3】の検証】


 私の場合は黒森山の同定が大きく異なるが、それ以外は同じ山をそれぞれ同定しているようだ。
 したがって、いくつかの山の位置がやや違うことや、山頂を結んだ形については『たて座』の形もやや違うところはいいとしても、一番の違い『わし座』が気になる。 

 では、実際のこの付近の星座はどのような配置になっているのだろうか。畑山 博氏は
【Fig.5 『美しき死の日のために』(畑山博著、学習研究社)314p図②】

のような図を用いている。
 一方、『宙の名前』(林 完次著、光琳社出版)によれば夏の星座は
【Fig.6 夏ノ星ノ章 夏の星空】

にようになっている。
 よって、気になることは、【Fig.5】の星座の形は【Fig.6】に較べて「たて座」と「いて座」の形状が異なることである。
 念のため、『星空ガイド』(沼澤、脇屋共著、ナツメ社)も参考にさせてもらうと
【Fig.7 たて座と琴座】

である。やはり、、【Fig.5】の「たて座」と「いて座」はあまりオーソドックスな形ではないと思う。
 したがって、オーソドックスな星座と比較して、【Fig.3】の「たて座」と「いて座」にはやや無理があるのではないのかと感ずる。

 さらに、畑山氏は『銀河鉄道 魂の旅』(畑山 博著、PHP研究所)において、
 おまけに、賢治がピックアップした三十二の山々を全部使い切って、あまった星も足りない星も一つもないのです。
と述べている。

 こうまで言われてしまうと、畑山氏には申し訳ないがちょっと牽強付会過ぎるのではなかろうかとつい思ってしまうのだが・・・。

 具体的には、次のようなことが気になる。
(1) なぜこの4つの星座なのか、他の星座もあり得るのではなかろうか。
(2) たて座の形と位置がこれでいいのか。
(3) いて座の形が不自然ではないか。
(4) 「黒森山」の同定はこの黒森山でいいのか。
(5) 「松倉山」「旧天山」の説得力が弱いのではないか。
(6) 「八方山」の肩の◎印の説明がないこと。
(7) 「経埋ムベキ山」からなる星座は、空に見える星座の裏返しでなくてよいの    か。

など。

 もちろん、畑山氏の着想はとても魅力的でロマンティック、なおかつ壮大、如何にも賢治らしさを彷彿とさせるものなのですこぶる惹かれるところ大である。
 また、少なくとも「経埋ムベキ山」の選定の際に”夜空に散りばめたる星々”が関連していることは十分にあり得ることだとは思う。

 その辺りの私見を次回以降述べてゆきたい。

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