まろの陽だまりブログ

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幻の画家

2017年07月29日 | 日記

東京ステーションギャラリーです。
名前も聞いたことのない画家の展覧会にやって来ました。
その名も「不染鉄」と言います。
皆さんはそんな変な名前の画家知っていますか?

没後40年、東京で初めての展覧会。
不染鉄は「幻の画家」と呼ばれているそうです。
専門家や美術愛好家の間では実力を高く評価されながらも
画壇にはずっと背を向けたままで
奈良の田舎でコツコツと独自の画風を切り拓いて来ました。
展覧会のタイトルにもなっているこの富士山。
多くの画家が競って描いたありふれたモチーフですが
他とは全く違った常識外れの富士山です。
巨大な俯瞰図のようであり、また接近画のようでもあり
雲の彼方に日本海が見えるかと思えば
手前の駿河湾の海中には泳ぐ魚まで描きこまれてあって
一言で言えば「あり得ない」絵なんです。



会場でもこの絵の前に人だかりが出来ていました。
山海図絵〈伊豆の追憶〉は
国立近代美術館に所蔵されている代表作です。
絵のジャンルで言えば「細密画」に入るのでしょうが
そういう枠にはおさまりきらない絵です。
常識ではあり得ない構図で描きながら決して破綻することなく
バランスが取れている不思議な絵です。



いい顔をされていますねえ。
見るからに柔和なお爺ちゃんといった印象です。
もともとは東京・小石川の生まれですが
若い頃に写生履行に出かけた伊豆大島や式根島の暮しが気に入り
突然、漁師になって三年間を島で暮らしました。
かと思えば京都市立絵画専門学校〈現:京都市立芸術大学〉に入学し
その才能を認められて首席で卒業。
その後は帝展にもたびたび入選するなど注目を浴びましたが
戦後なぜか画壇を離れ
奈良の山里にこもって晩年まで飄々と作画を続けて来ました。
展覧会も没後20年の奈良県立美術館だけで
長い間、忘れられた画家でした。


不染の画風は大和絵の影響を強く受けた
南画風の作品が多く「この世のものとは思えない美しい絵を描きたい」が
口癖だったようですが、これなんかまさにそうですねえ。
生まれ故郷・小石川の円光寺にある樹齢1000年の大イチョウ。
根元に描きこまれた地蔵菩薩は子供たちの守り神とか。
地面が見えなくなるほどたくさんの落葉で覆い尽くされた光景は
まるで極楽浄土を思わせます。
一枚一枚の絵が本当に私好みの抒情にあふれていて
食い入るように見てしまいました。



で、思わず2800円の図録まで購入。
正直、手元不如意でまことに痛かったのですが
感動にはかえられません。(涙)
もとを取るためにせいぜい老後の楽しみにしたいと思います。
数多い作品の中で最も強烈な衝撃を受けたのは
京都国立近代美術館所蔵の「廃船」という一枚でしたが
それはぜひ会場でご覧ください!



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
関西でもやってくれないかな (雫石鉄也)
2017-07-31 08:48:36
いいですねえ。
この画家さん。
関西で展覧会があるなら、ぜひ見に行きたいです。
返信する
いいでしょう! (まろ)
2017-07-31 18:14:45
雫石鉄也様
独創的な絵というのはコレだと思いますねえ。
見ているだけで泣きたくなるような絵が何枚もあります。
9月からは奈良県立美術館へ巡回だそうですからぜひ!
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