川本三郎さんのエッセイをつらつら読んでいたら
気になる漫画家の名前が出て来た。
その名は「つげ忠男」という。
え、ひょっとしたらと思ったらやはりそうだった。
つげ忠男さんはつげ義春さんの弟さんだと言う。
うーん、知らなかった・・・
つげ義春だってよくは知らないのだが
彼に弟がいて同じ漫画家だとは全くの初耳だった。
仕事帰りに池袋のジュンク堂でさっそく購入して読んでみると
これがなかなかよくてクセになりそうである。
決して絵が上手いという訳ではない。
でも、兄の幻想的な画風と違ってしっかりとしたリアリズムで
登場人物に不思議な存在感が漂っている。
描く漫画の世界観もお兄さんととはかなり違っているが
どこかシュールなストーリーはよく似ている。
少年のころから兄とともに極貧生活の中で育ったと聞くだけに
おそらく共通の人間観があるのかも知れない。
先に売り出した兄の作画作業を手伝ったこともあるそうで
黒い線描を重ねる「ベタ塗り」の工程は
忠男さんの担当だったと言うから少なからず影響は受けたのだろう。
私生活では釣りが趣味だそうで
作品には利根川べりの川の風景がよく登場する。
川本三郎さんも言っているように
この雄大な川の風景に独特の抒情と哀感があって素晴らしい。
幼い頃から慣れ親しんだ風景だと言う。
夢の世界に遊ぶ兄とは違ってしっかりと現実に足を下ろしながら
人生の「原風景」を追い求めているのがいい。
さらに言えば登場人物たちが等しく「暗い」のがまたいい。(笑)
伝説の漫画雑誌「ガロ」で活躍した忠男さん。
知る人は知っている。
知らない人は全く知らない存在だろうが
各界にコアなファンは多く
新作を待ちわびているというが寡作の人だけにどうだろうか。
もっともっと作品を読んでみたい。
そう思わせる漫画家である。
ここ数日、興味ある話題が続いています。
「パターソン」、気になっていましたが、記事を拝読してよさそうなので見に行こうと思いました。
つげ忠男さん、知ってはいますが、あまり読んだことはなかったかも。1作か2作は読んだかもしれませんが
記憶になくて・・・(^^;)
お兄さんの方は割と読んでいます。
「ねじ式」などは幻想的というか空想的な作品ですが、昔の町工場などが出てくる現実味のある作品も多く、そちらは弟さんと共通しているかもしれません。
「無能の人」の中に、俳人・井上井月(せいげつ)を扱った作品があり、おすすめです。
落ち栗の 座を定めるや 窪溜り
無類の酒好きで伊那谷で飄々と生きた人らしいです。
山頭火も影響されたとか。
確か「無能の人」は読みましたし、竹中直人の映画も観たのですが
井上井月なる人はまったく存じ上げませんでした。
無類の酒好きで伊那谷在住と聞けば、それだけでもう憧れてしまいそうです。(笑)
いまの世の中、とても「飄々」と生きられるような時代ではありませんが
気持ちだけでも飄々と行きたいですねえ。
つげ義春、忠男の兄弟も
波乱万丈と極貧に喘いだ人生でしたが
どこかに「飄々」というイメージがありますね。