常識について思うこと

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社会ルールの欠陥

2006年10月09日 | 社会

社会にはルールが存在します。学校であれば校則があるし、会社であれば各種の規程類が存在します。国家には国家独自の法律があるし、国家間には条約が結ばれています。これらはすべて、社会において人々が生活していくために、必要とされる明文化されたルールです。現代社会は、とにかくルールに基づいて動いているのです。

ところで、今の社会において、最も影響力のあるルールとは何でしょう。言うまでもなくお金に関するルールではないでしょうか。「世の中、金だ」と言って憚らない人たちすらいます。まったくそのとおりだとは思いませんが、正しい側面があるのではないかと思います。それくらい、お金というのは人を動かし、国を動かし、世界を動かす力をもっています。もはや国家は単独では成立しえず、他の国家、世界との関係なしには成り立ち得ない状況にあるなかで、その関係に多大な影響力を及ぼすお金のルールは、国家のルールよりも大きな影響力があると言えるでしょう。そして、そのお金に関するルールをコントロールできるとするならば、それは世界を動かす力を手にすることと、同義であると言えるのではないかと思います。

そして、そのお金のルールとは何について考えてみると、それは資本主義であると言えるのではないかと考えます。共産主義もあるという人もいるかもしれませんが、共産主義で世界は回っていません。欧米を中心とした資本主義が世界を動かしています。その資本主義の根底をなす「市場」の考え方について、アダム・スミスが「国富論」のなかで、「神の見えざる手」という言葉を使い、市場において自由競争を行えば、需要と供給は自ずと均衡し、社会が安定していくことを述べているのは、有名な話です。

ところで「神の見えざる手」などと言われると、いかにも神聖で、厳かな感じがしますが、実際にはそれほど大したものではないとも言うことができるように思えてなりません。むしろ大きな欠陥があるとさえ言えるのではないかと思います。

例えば、インサイダー取引です。一般的には知りえない重要な情報を事前に入手し、これをもとに株価の上下をかなり正確に予測することができるため、それらを知り得ない人々よりも、格段に利益を得ることができる可能性があります。インサイダー取引を認めてしまうと、そうした一部の特定の人々だけが恩恵を受けることになり、株式市場の公正で健全な取引を阻害するため、法律では禁止されているわけです。しかし、インサイダー取引は繰り返されます。株式市場の株価は、日々の企業活動の結果を受けて、上下するわけですが、そのような企業活動に関わり、株価に影響を及ぼすような情報に触れる人々は、世の中に非常にたくさんいるのです。一般的には知られないかもしれませんが、少なくとも企業の数だけ関係者がおり、その人々はそうした情報を作り出しているわけですから、単に情報に触れるという立場の人々は、非常にたくさんいると言えるでしょう。そうしたたくさんの人々が、インサイダー取引をしうる立場にいながら、それをしないと言い切ることができるはずがないのではないでしょうか。少なくとも、今の制度に欠陥があることは認めるべきです。

2006年7月、日経新聞の社員がインサイダー取引の容疑で逮捕されました。逮捕された容疑者は、職務上の立場を利用して、株価の値上がりが確実な株式分割の情報を取得し、公告掲載前の株式を購入、公告掲載後に株価が高騰した後に株を売り抜けることで、不正な利益を得ていたといいます。この事件について、あるテレビ番組のコメンテーターは、「そういう立場にある人は、きちんとわきまえないといけない。自分の立場をちゃんと自覚できない人は、そういう業務をしてはならない」などと発言されていました。

なるほど、今の経済システムは欠陥があることをきちんと認めてしまっていると思いました。「神の見えざる手」は、特別な地位のある利己的な人間の存在によって、あっさりと「人間の汚い手」になってしまうのです。

世界を大きく動かす力のあるお金を、「人間の汚い手」によって動かすことができます。今の社会で、お金がそんな不公正なルールで成り立っているというのは、にわかには信じられないかもしれません。しかし、もしそうだとしたら、世界を牛耳る超ウルトラお金持ちは、究極のインサイダー取引をすることができる超ウルトラ「汚い手」の持ち主であるとも考えられなくもないわけです。

「一人を殺せば殺人者で、百万人を殺せば英雄」と言いますが、まさに小ぢんまりとしたインサイダー取引をしてしまっては犯罪者ですが、経済学者に市場原理を「神の見えざる手」と言わしめるほどの力をもち、その実、ルールを十分に悪用できる立場にいて、超大規模なインサイダー取引をする人々は、誰もが羨む超ウルトラお金持ちだと言えるかもしれません。

現存するヨーロッパのある国際金融財閥は、19世紀イギリス軍がナポレオン軍を破ったワーテルローの会戦で暴利を貪りました。その財閥ファミリーの家訓は「語るなかれ」。情報は命であり、金であるということで、彼らは血族による独自の情報ネットワークを張り巡らしていたといいます。ワーテルローの会戦では、イギリス軍がナポレオン軍を破ったという情報をいち早く入手しました。そして彼らはこの情報を逆手に取り、ロンドンの金融の中心地であるシティ街で、イギリス軍が負けたように演出し、株価が暴落したところで、株を買い漁り巨万の富を得たというのです。もはや、国家規模のインサイダー取引です。こうしたインサイダー取引をできる人々が、超ウルトラ金持ちとなり、世界を動かす力を手に入れることができるとしたら、どうでしょう。

さて、このようなルールで動いている世界。人々には正しいと信じ込ませておきながら、その実、その制度がもつ欠陥を大いに利用して、自己の富と権力を極大化させる人々の存在を許してしまう現代社会において、社会ルールやシステムすら作り出す超巨大権力が存在することを、誰が否定できるでしょうか。そして、そんな超巨大勢力がいる可能性がある以上、今の社会ルールや制度に特殊な意図が働いていないか、そこから生まれる情報や常識に歪みはないか、常に疑うべきではないかと思うのです。そして、あなたがもし、それらの仕組みが間違っていると気付いたならば、それをどのように変えていくべきか、この世界の構成員として、きちんと真面目に考え、行動に移すべきではないかと思います。

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