常識について思うこと

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3次元DBと著作権

2008年07月09日 | 産業

インターネットのよさは、誰もがプレイヤーとして参加できるという点にあります。メディアとしてのインターネットを考えるとき、従来のメディアであるテレビやラジオなどでは、特定の人々が制作した番組だけが、放送局を通じて流されるのに対して、インターネットでは誰もが番組を制作して発信することができるようになっています。そのインパクトの大小はさておき、メディアの仕組みとして、誰もが制作者・情報発信者になれるという意味で、私はインターネットに対して、開かれたメディア、あるいはオープンシステムといった表現を使っていいのではないかと考えます。

また、近年の情報処理技術の高度な発達と普及により、多くの人々にとって、デジタルコンテンツの制作(編集や加工を含む)や複製が身近なものになり、インターネットが一大メディアとして立ち上がる素地は、ますます整ってきたように感じます。

こうした状況を背景に、いわゆるコンテンツの流通は、大きく様変わりをしてきました。そしてまた、インターネットが今後もさらなる進化を重ねるであろうことが予見されるなかで、コンテンツの著作権問題が根深く残っているという点については、このブログでも繰り返し述べている通りです(「コンテンツ制作体制の未来」など参照)。さらに、こうした状況を打破すべく、新しい試みもなされていますが、今のままでは、打破できない壁があることも、既に指摘させていただいています(「同時に見える限界と始まり」参照)。

この問題に関して、最も重要なポイントは、インターネットがウェブであるということです。ウェブとは、元来「くもの巣」という意味ですが、インターネットでコンテンツが流通するということは、コンテンツが「くもの巣」のように無数に張り巡らされた無限のルートを流れていくということを意味しています。新しいインターネット時代において、コンテンツの著作権を考える場合、このことをきちんと理解しない限り、まともな著作権管理ができないであろうことは言うまでもありません。この点、既に他の記事でも述べている通り(「「ウェブで管理する」ということ」参照)ですが、もう少し直感的な理解を促すために、若干の補足をしておきたいと思います。

無数のコンテンツが飛び交い、コピーも編集も簡単で、制作したコンテンツは瞬時に全世界に発信されるというインターネットの世界のなかで、ひとつの完成されたコンテンツは、それ単体として完結し得ず、また新たなコンテンツのための素材となって、再利用されるという循環を繰り返していきます。「著作物の二次利用」という言葉がありますが、インターネット時代においては、これが到底「二次利用」では済まされません。既に、一部のインターネット上のコンテンツでは当たり前になっている現象ですが、二次利用以降の「複次利用」によって制作されたコンテンツが溢れるように出てくるのです。

もう少し平たく言えば、たったひとつのコンテンツが、無数のコンテンツの百次利用によって、成り立つというようなことも当たり前になるということです。

イメージは、湧きますでしょうか。

ひとつのコンテンツは、ちょうど著作権の糸で紡いだような「くもの巣」の中心にあって、そのコンテンツを成立させるためのコンテンツ群が、その周りで「くもの巣」状に、無数に広がっているイメージです。コンテンツ課金をした場合、その収益は、この著作権の考え方に沿って、分配されていきます。例えば、ひとつのコンテンツに対して100円の収益が入った場合、その「くもの巣」の真ん中に100円を落とします。すると、その「くもの巣」に沿って、100円が薄く広がっていき、無数のコンテンツの原作者に著作権料として、分配されていくようなイメージです。

ところで、これだけのことであれば、今のDBシステムでも、十分に管理が可能かもしれません。上記のイメージでも明らかな通り、「くもの巣」は二元ですから、現存の二次元的な管理を行うDBシステムを用いて、そうした著作権関係を整理、追跡していくこと自体、おそらく不可能なことではないでしょう。

問題は、インターネット上に流通する無数のコンテンツ、ひとつひとつが、こうした「くもの巣」のように複雑な著作権関係の上に成り立ち、管理者はそれぞれのコンテンツについての著作権関係を整理、追跡していく必要があるということです。さらに、ひとつの「くもの巣」の上に成り立っているコンテンツは、単にそれだけでは完結し得ず、また別の「くもの巣」と複雑に絡み合いながら結びついているのです。こうした結びつきが無数に展開されることで、もはや二次元的なDBシステムにいかなる工夫を加えたところで、それらを整理、追跡することは不可能にならざるを得ないというわけです。

これもイメージが、湧きますでしょうか。

複雑なかたちをした「くもの巣」が、球状に絡み合いながら、インターネット上に展開されている無数のコンテンツの著作権関係を表しているようなイメージです。

著作権をウェブの概念で管理するということ(「「ウェブで管理する」ということ」参照)は、まさにこのことを指しています。そしてまた、この問題にきちんと向き合わない限り、インターネット上のコンテンツ産業は、あくまでも三流メディアに乗ったマイナービジネスというステータスから脱し得ないであろうという点もポイントです(「MMDに垣間見る可能性」中、「④「振り込めない詐欺」の撲滅」参照)。

新しい時代における組織作りついても言えること(「「スライム組織」の強み」参照)ですが、これからの産業にとって、3次元的な概念を処理できるDBシステムを開発していくことは大変重要で、それは間違いなく社会的ニーズに即しているものであり、また必然であると思うのです。

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