常識について思うこと

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「ウェブで管理する」ということ

2008年06月04日 | 産業

よくインターネットのことを、ウェブと言ったりします。本来、ウェブとは「くもの巣」という意味であり、インターネットのことをウェブというのは、インターネットが「くもの巣」のように縦横無尽に張り巡らされたネットワークだからです。

近年、動画像や音楽などのコンテンツが、ウェブ上で流通してしまっていることに関連して、著作権の管理が問題となっています。ひとつの著作物が、無数の経路を通じて、無数の人々・端末に波及してしまい、著作権管理が追いつかないことが問題の本質だろうと思います。これに対して、著作権を管理するために「コピー・ワンス」や「ダビング10」といった著作権管理が実施されたり、議論されたりしていますが、問題の本質が「ウェブ」にあるというポイントを外しては、真の問題解決には至らないだろうと考えます。

つまり、これからのネットワーク社会において、コンテンツ自体が「ウェブで流通する」以上、コンテンツの著作権も「ウェブで管理する」発想でなければならないと思うのです。ただし、ここで言うところのウェブとは、「流通ネットワーク」としてのウェブということのみならず、「管理システムの概念」としてのウェブという意味を含むということが非常に大切なポイントです。

少々、分かりにくいかと思いますので、もう少し説明を加えます。

これからの時代において、コンテンツが「ウェブで流通する」ということは、至極当たり前のことになるだろうと思います。つまり、ひとつのコンテンツが生まれると、それがウェブを通じて、無数のルートに乗って、無数の人々のところに展開されていくわけです。「コピー・ワンス」や「ダビング10」といった手法は、コンテンツがそのようにウェブで流通されること自体は仕方ないとして、流通してしまった後にどうするかという解決策として有効ではあります。ただし「ウェブで流通する」という問題の本質部分を解決できていないため、どうしても制限をかけるという「ウェブで流通」した結果によって生じる悪影響を押さえ込むスタイルにならざるを得ないのです。

問題を本質的な意味で解決するためには、コンテンツが「ウェブで流通する」以上、著作権管理も同じように「ウェブで管理する」必要があるということです。そして私は、上記のとおり、このウェブには①流通ネットワーク、②管理システムの概念というふたつの意味があるだろうと考えます。

まず、これからのコンテンツがウェブで流通するのであれば、その仕組みを大いに利用して、著作権もそのウェブに乗せて管理していく発想が必要です。ウェブは、無数のルートで無数の人々・端末に展開されていきますが、その限りない広がりのなかに「著作権」を紐付けていけばよいのです。一般的に、これは非常に難しいと思われていますが、少なくとも私が把握している理論やシステムを利用すれば、十分に可能であると考えます(それらは、まだ社会的にきちんと認知されていない、あるいは正しく評価されていないということに大きな問題があります。または、そういう理論やシステムを目にしても、ほとんどの人々がそれを正しく理解できないというところに大きな問題があるのかもしれません)。何にせよ、まずこれが著作権を「流通ネットワーク」としてのウェブで管理するということの意味です。

そして、続いて考えるべきポイントは、著作権管理システムそのものにウェブの概念を取り入れるということであり、これが二つ目のウェブを「管理システムの概念」として捉えるという考え方です。

著作権については、まず基本的にひとつの著作物に対して、一人の著作者が存在します。そのなかで、いろいろな才能や仕組みを持っている人々が集まり、お互いの著作物や仕組みを提供しあい、共同著作物ができあがるようになります。こうした共同著作物については、彼らの間で著作権やそれに関係する収益配分などを決めて、社会に出していくわけですが、通常、このとき決めたルールは、なかなか崩しにくいというのがポイントです。これでは、ウェブで展開したコンテンツの著作権をきちんと管理することができなくなってしまうのです。

コンテンツがウェブで展開される場合、無数のルートで無数の人々や端末に展開される著作物を利用して、新たな共同著作が無数に生まれてくるのは当然のことです。そのときの著作権管理のルールは、従来のそれに比べて、もっと柔軟に規定できなければなりません。それは、無数のルートを経由して、無数の人々や端末に到達した様々な著作物が、さらに織り合わせあいながら、無数の新しい著作物ができるであろうということであり、それらのコンテンツのなかを紐解くと、その著作権自体が「くもの巣(ウェブ)」のように極めて複雑で、多くの関係者によって、成り立っていると考えなければならないということでもあります。ウェブで流通するコンテンツの著作権を「ウェブで管理する」といった場合のウェブを「管理システムの概念」として、考える必要であるというのは、まさにこのことを指しているのです。つまり「ウェブで管理する」ということの意味を、単にツールとしてのインターネット、あるいは「ウェブ」を使って管理ということだけではなく、管理対象である著作権そのものが「ウェブ化」しており、それをいかに管理していくかという発想が必要なのです。

現在稼動しているシステムだけでは、大変難しいことではありますが、既にこれらを実現するための基礎的なシステムは存在していますし、事業として立ち上げるための各種要素も整ってきています。またその実現には、上記のような著作権管理システムだけではなく、課金・認証システムや端末の仕様、新しいネットワークの整備など、実にさまざまな要件を揃えていかなければなりません。

しかし、何よりもこうした動きが時代の流れであり、それに応じた社会的ニーズが高まっていく限り、近い将来、現実に稼動するシステムが立ち上がり、動き出すのではないかと思うのです。

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