高知の自然 Nature Column In Kochi

南四国で見かけた蛾をおもに紹介していましたが、現在更新を中止しています。

クロジャノメアツバ(沖縄島編28)

2009年12月31日 09時24分11秒 | Weblog
沖縄本島で灯火に黒いアツバがやってきた。
以前石垣島や西表島でも出会ったことのあるクロジャノメアツバだ。
多くはないが林間部では割合普通に見られる。

前翅の環状紋と腎状紋は黒色の個体と白色の固体、その中間的なものなど個体変異がある。
♂の触角は両櫛歯状で♀は糸状。

日本では奄美大島以南、徳之島、沖縄本島、石垣島、西表島、与那国島にかけて分布していて、
国外では台湾、インド、東南アジアからオーストラリア、ポリネシア、ハワイなどに広く分布している。

幼虫や食草は不明だが、ハワイでは灌木や草本、枯葉も食べるそうである。

(撮影:国頭村 2009.4.22)
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ついに2009年も大晦日を迎えた。
朝起きてみると窓の外では雪がチラホラ・・・・・・・・
自宅に降る雪を見るのはこの冬初めてになる。
積もらないかと期待したが日が昇るとすぐに止んでしまって残念
北に住んでいる人たちはこの反対の思いなんでしょうね。
今日は大掃除と買い出しで忙しくなりそう。
この1年つたないブログ見てくださりありがとうございました。

キマエコノハ(沖縄島編27)

2009年12月30日 09時06分53秒 | Weblog
コンビニの明かりに飛来した蛾を探しているとキマエコノハを発見した。
前回も同場所でキマエコノハを発見し、2008年12月1日のこのブログの(沖縄編2)でも紹介している。

今回出会ったのこの個体は脚も触角も隠していて、知らない人が見たらこれが蛾とはまず思わないだろう。
天敵から身を守る見事な擬態でこのすばらしい模様には何度見ても驚嘆する。
6~11月に発生するというので4月はいないだろうと思っていただけに見つけたときは驚いた。

幼虫はコバノハスノハカズラ(ツヅラフジ科)を食べることが知られている。
この植物は沖縄本島以南の南西諸島、台湾、南中国からインドの亜熱帯、熱帯に分布するツル性の常緑樹で、南西諸島では海岸から山裾の林縁に多く見られる。
鹿児島県が北限らしく、食樹が他にないとすればキマエコノハはこの分布と重なるものと考えられ、これより北で見つかる個体はすべて偶産蛾になる。

南方系の蛾だが移動性がきわめて強く日本各地で見つかっていて北海道でも発見されている。
興味が沸いたので調べてみると九州と四国は全県、本州は北から青森、宮城、福島、群馬、滋賀、愛知、三重、京都、兵庫、島根、広島、山口、和歌山と驚くほど広範囲にわたり発見されているが、冬の低温と食樹がないので繁殖はできないだろう。

高知県では古く1964年10月21日に足摺岬で四国初記録されている。

(撮影:国頭村 2009.4.22)

キトビカギバエダシャク(沖縄島編26)

2009年12月29日 09時31分55秒 | Weblog
キトビカギバエダシャクは橙黄色をしていて前翅先端がとがる。
外観はトビカギバエダシャクやミナミトビカギバエダシャクに似るが、前翅先端近くにはっきりした黒紋が1つあることで区別できる。

四国ではトビカギバエダシャクは日常見慣れているが、灯火に飛来したこの個体はそれよりひとまわり小さくて前翅の黒紋を確認したときには初めての出会いに嬉しさがこみ上げてきた。

屋久島、奄美大島、沖縄本島、西表島、台湾に分布している。
幼虫はアデク(フトモモ科)を食べる。

(撮影:国頭村 2009.4.22)

カバシタリンガ(沖縄島編25)

2009年12月28日 09時03分55秒 | Weblog
かって石垣島や西表島で見覚えのある赤みを帯びたリンガが灯火に飛来してきた。
それはカバシタリンガである。

前翅はほぼ一様に橙褐色をしている。
同色のカバイロリンガという別種がいるので「カバシタ」という名前は「下が樺色」という意味でついたのだろうか。
新鮮な個体の前翅は光沢があり、カメラのストロボ光を反射して白くなり正確な色が出にくいのでいろいろ角度を変えて試して何とか撮影に成功した。
といっても不完全で、特に前翅先端が白く見えるのは光の反射によるものである。

屋久島から奄美大島や沖縄本島を経て石垣島、西表島にかけて全域で普通にみられる。
国外では台湾やインドにも分布している。

幼虫は第1~3胸節が著しく球状にふくらんだ異常な形をしていて一度見ただけで覚えやすい。
食樹のアデク(フトモモ科)は九州南部以南の林内に自生していて外観がツゲやギーマに似ている。

(撮影:国頭村 2009.4.22)

カクモンヒトリ奄美以南亜種(沖縄島編24)

2009年12月27日 09時23分56秒 | Weblog
「何だ、ありふれたカクモンヒトリじゃないか。」と思ってしまった。

しかし実はカクモンヒトリは屋久島以北亜種と奄美以南亜種に分かれているのだ。
そういう意味ではこれは四国では手に入れることができない貴重なものになる。

屋久島以北亜種が屋久島から北の九州、対馬、本州、シベリアに分布していて、奄美以南亜種が奄美大島、沖縄本島、沖縄諸島という狭い範囲に分布し、八重山諸島にはいない。

この奄美以南亜種は個体変異が少なく前翅の黒褐色斑がほとんど退化し前縁近くの1横脈紋だけのことが多い。後翅は前縁付近に1黒褐色紋と側縁付近に2~4個の黒褐色紋がある。
この模様は屋久島以北亜種にも似た個体があり、それ以外については外観による違いは知らない。

カクモンヒトリ奄美以南亜種の幼虫はシマグワやヒマを食べることがわかっている。
今回沖縄本島中北部で5夜ライトトラップしたがこの1頭しか発見できなかった。
個体数は屋久島以北亜種ほど多くないのかもしれない。

(撮影:国頭村 2009.4.25)

オキナワルリチラシ沖縄本島亜種(沖縄島編23)

2009年12月26日 09時07分59秒 | Weblog
オキナワルリチラシは本州(伊豆半島以西)、四国、九州、対馬、沖縄に分布していて、飛翔力が弱く移動性がないため地域変異があり多くの亜種に分かれている。

高知県には本土亜種がいて個体数も多いが沖縄ではどうなんだろう。
高知県西部では6月から10月にかけて発生し、1夜に二桁飛来するのはごく普通である。
沖縄は4~5月と11月に行っただけなので個体数はよくわからないが少ないように感じた。

以前西表島で見つけた個体があるが、これは前翅が緑色がかっていて八重山亜種になる。
今回この画像の個体は沖縄本島亜種で前翅が黒っぽい。
後翅の美しい青色金属光沢は個体変異があるようだ。
高知県の本土亜種はたくさんいるが、後翅の青色光沢がほとんどないのであまり魅力を感じない。

オキナワルリチラシは昼間訪花するらしいが私はまだそういう場面に出くわしたことがない。
夜間はライトトラップにかなり遅い時間帯まで飛来するので、昼間よりは夜間多く活動しているのではないだろうか。

幼虫はヒサカキ、ツバキを食べる。

(撮影:国頭村 2009.4.22)

オキナワモンシロモドキ(沖縄島編22)

2009年12月25日 09時02分59秒 | Weblog
オキナワモンシロモドキは内陸では見かけないが、海岸付近で割合よく出会う。

なぜだろうと思っていたが、食草がモンパノキであることで納得した。
モンパノキは海岸に生え葉が銀白色で白い花をつけるので見つけやすい。
見栄えがよいので庭園樹としても利用されている。

オキナワモンシロモドキは昼行性で西表島の大原港では昼間飛んでいるところを見ることができた。
石垣島や沖縄本島では灯火に飛来したのを見ているので夜間も飛び回っているかもしれない。
夜は海岸に近いコンビニの照明で見つかることが多い。

鹿児島県徳之島以南、沖縄本島、石垣島、西表島、与那国島、南大東島に分布している。
喜界島でも見つかっているが、すぐ近くにある奄美大島では発見例がないようだ。
これは、奄美大島にもいるが数少なく発見報告する者が単純にいなかっただけなのかもしれない。
食草のモンパノキはトカラ列島宝島以南に自生しているので奄美大島にいても不思議はない。
また、九州や四国にはモンパノキがないので台風に乗って偶然飛来したとしても生存し続けることはできないだろう。

(撮影:国頭村 2009.4.22)

オキナワミズメイガ(沖縄島編21)

2009年12月24日 09時41分12秒 | Weblog
見たことのないミズメイガが灯火に飛来した。
採集したのは黒地に白い丸紋のあるこの画像の個体と、24日に国頭村で見つけた白紋がほとんど黒く消失してしまった計2個体だった。

後日調べてみたが講談社の蛾類大図鑑には出ていない。
そこでインターネット「みんなで作る日本産蛾類図鑑」の掲示板で問い合わせると現地で同行していただいたGA-SHOWさんがオキナワミズメイガであることを教えてくださった。

手元の資料では2000年に学名が Parthenodes okinawanus Yoshiyasu & Arita から Paracymoriza okinawanus (Yoshiyasu & Arita) に変更となり、新称オキナワミズメイガの和名がついている。

沖縄本島で発見されているが、採集報告例が少なく生態はわかっていないようだ。

(撮影:本部町 2009.4.26)

オキナワマエモンヒメクチバ(沖縄島編20)

2009年12月23日 08時51分41秒 | Weblog
オキナワマエモンヒメクチバは沖縄島に分布している。
これまで偶産蛾として熊本県、鹿児島県、広島で見つかっているので、今後高知県でも発見される可能性がある。

沖縄島には同じMecodina属の似たイナズマヒメクチバがいるが、前翅に青い稲妻模様があるので判別できる。
八重山諸島には別種のフトオビシャクドウクチバも分布している。

オキナワマエモンヒメクチバは沖縄島では普通種で5~10月に見られるという。
今回の4月の遠征ではかなり擦れた個体を多く見かけ、この画像の1個体だけが新鮮だった。
ということは、成虫で越冬しているのだろうか。

幼虫はリュウキュウテイカカズラを食べる。

(撮影:国頭村 2009.4.23)

オキナワナシイラガ(沖縄島編19)

2009年12月22日 09時00分03秒 | Weblog
ナシイラガで奄美大島、徳之島、沖永良部島、沖縄本島に分布するものは講談社の蛾類大図鑑ではナシイラガの別亜種としていた。
それが2001年に独立して別種のオキナワナシイラガとなったのだ。

蛾類通信No.214によると幼虫の色彩・斑紋、♀交尾器に大きな違いが認められるとのことである。

① オキナワナシイラガはナシイラガと比べて前翅が赤みを帯び、翅底の斑紋がより弱く赤みを帯びることが多い。
② 前翅外横線の曲がりは少なく、より直線に近い。
③ ナシイラガに見られる横脈外方のビロード様の黒褐色斑は欠くか痕跡を残す程度になる。
④ 後翅の地色はナシイラガよりも濃色で赤銅色を帯びる。
などの外観上の違いがみられる。

そういえば、高知県の新鮮なナシイラガは黒っぽいが、沖縄島の個体はかなり赤っぽいなという第一印象があった。
両種は分布が重なっていないので同定に迷うことはないだろう。

沖縄では4~5月と夏に成虫が見られるので年2回の発生が考えられる。
幼虫はイタジイ(スダジイ)、イスノキを食べることがわかっている。
多食性でおそらくナシイラガと同様の樹木を食べるのではないだろうか。

(撮影:国頭村 2009.4.23)