********寅で始まるシリアナ評********
麻薬関係のこれによく似た作りの映画を前に観た事があります。監督はイニシャルがSSで名前はスティーブンでした(少なくともスピルバーグじゃありません)。タイトルは「寅さん」みたいな感じでした。マイケル・ダグラスが団子屋やってて、時折ベニシオ・デル・寅がふらりと帰ってきて、キャさくら・ゼタ・ジョーンズを困らせる話でなかったことは確かです。
本作でスティーブンで始まるSSさんはプロデュースに回って、監督はやっぱりスティーブンのスティーブン・ゲイガンが脚本兼で務めました。ゲイガンは「寅ふぃっく」の脚本でアカデミー賞とってます。日本アカデミーではありませんよ。念のため。
清兵衛に味をしめ、隠し剣や武士の一分を撮る、本物の寅さんで有名な監督を思い出させる企画です。
あるいはHEROで味をしめ、LOVERS撮っちゃうチャン・イーモウとか
けど、隠し剣やLOVERSが二番煎じと責められ貶されようとも、よくよく吟味すれば前作以上の冒険でさらなる進化を目指していることが判るように(LOVERSは進化失敗した感じだが)、「シリアナ」も「寅フィック」より(脚本に関しては)野心的な作品と言えます。
********まず不満なとこから********
最初に不満なとこから言いますが、脚本家あがりの監督デビュー作っぽく、物語つなぎに精一杯でカメラや俳優と遊んでる余裕のないいっぱいっぱいさか伝わってきます。まるでオスカーかすめ取っていったあの映画みたいです。なんてタイトルでしたっけ?「寅ッシュ」? 文頭に「パ」をつけたくなりますね。
ただそれでもベタながらもスローモー使いまくって迫真の救助シーンを描いたり、「シリアナ」よりずっと多いメインキャラを難なくさばいたりとやはり光るものを感じたパ「寅ッシュ」に比ッシュべると、映像ののっぺり感と、ここぞというシーンでのアイデア&気合い不足と、俳優持て余し&振り回され感、2時間程度にまとめるため端折りまくった気がする中盤以降。もろもろ遅れを取っている感じはイナバウアーいなめません。「トラフィック」は後継者の座を嫡子の「シリアナ」でなく名前のイメージ的に自分に似ている養子「クラッシュ」に譲ったのでした
********俳優に振り回され・・・【オスカー受賞のあの人】********
奇しくも両作とも人気脚本家の監督デビュー作で、地味だが渋くて映画年間100本近く観るオタクたちから愛されまくるスター(年間5~6本の一般人からは誰それ?と言われる俳優)を勢揃いさせた群像劇です。「シリアナ」
寅ッシュとシリアナが同じ年に作られたのは単なる偶然でしょうか? 寅ッシュが華々しく逆転サヨナラ決めた一方で、シリアナはほぼオスカーレース圏外。寅ッシュと同じオリジナル脚本の候補になったものの負けてしまいましたが、ところがところが助演男優賞はマット・ディロンを吹っ飛ばして「シリアナ」ジョージ・クルーニーがとっちゃいました。
俳優の使い方では俺が上さ・・・と少しだけおいしい酒が飲めたかもしれません。・・が、演出力の差というよりクルーニーの業界人気の差ではないかと感じます。素人意見ですがマット・ディロンの内面変化の方が、クルーニーの外見デブ化より見応えありました。
********ここぞというシーンでのアイデア&気合い不足【拷問シーン】********
中盤に私の大好きな「拷問シーン」が用意されていて、始まる前に期待で胸が高鳴りました。最近この種の発言増えてる気がしますが、開き直って進めましょう。
捕われのクルーニーさんが狂う兄さんに変わる様が観たくて大興奮の僕をじらす様に、拷問担当係の方は「中国人はどうやって法輪功を拷問するかを知っているか?」などと思わせぶりな事を言います。
え~~何々?知らない、知らない~~ん
わくわく爆発、先に僕が狂う兄さんになりそうです。
ところがその中国人の拷問ってのは
(1)水牢
(2)糞に顔おしつけ
(3)生爪はがし
・・・以上。
え?
ちょっと待て、めちゃめちゃオーソドックス。わわ、やめろ、なんかそういう他の映画でいっぱい何度も観てきたようなことして、上映時間無駄遣いするのはさ・・・ああ、そのペンチ置いて、もっと凄い事考えて~~!!
ああーあ。始めちゃったよ爪はがし。痛そうだねクルーニーさん。もういいから次の拷問に・・・と思ったら邪魔が入って拷問終了。がっかし。
「マラソンマン」とか「パッション」とか「マイ・ボディガード」とか観て出直してこい!! 中国なら「西太后」なんかも良かったぞ
あ、ちなみに観てる時は知らんかったのですが、法輪功ってのは宗教団体で中国政府は「危険なカルト集団だ」と言っています。
********さて、褒めるか。何つっても個から国家への移行メカニズムを解体したシナリオ********
と、いろいろ悪口並べましたけど、デキのいい悪いはさておいて、「シリアナ」は好きです。
国家テロ発生のメカニズムを脚本家なりに追求しているのが感じ取られ、単に寅フィックの二番煎じではなく、描きたいテーマに即した構成だったということでしょう。
よく「だからアメリカはさ・・・」とか「これだからアラブは・・・」とか言います。
これはもちろん差別的な発言です。でもついついそうやって、国家とか民族とか宗教とか概念としての集団が一つの生物であるかのように考えてしまいます。もちろんそう考える方が楽だからです。特に映画は楽です。ナチとかソ連とか出せば特にキャラクター描写などしなくたってぶち殺されて当然の悪党なのだと暗黙の了解が発生します。
ですが言うまでもないことですが、大抵の場合、国家とか大きな集団は一つの考えで動くものではありません。大統領はやろうと思えば核をぼんばか発射することもできるでしょうが、軍や閣僚を説得し、議会を乗り切って、国民に説明し、マスコミに叩かれ、外国から責められ・・・と考えたら恐ろしくてとても実行する気にはなれないものです。
イラク戦争も含めてここ最近アメリカがやった全ての行動はブッシュ一人で立案し計画し実行したわけではありません。下手したら立案も計画も実行も他人まかせです。じゃあ、”アメリカ”って集合意志が立案し計画し実行したのか? その集合意志ってなんじゃ? となります。
大抵の人間は人殺しは行けない事だ、嘘つきはダメです、と思う。アメリカではどうか知らんが日本では少なくとも半数以上が戦争には原則反対だ(そう信じたい)。
一人一人にアンケートをとって得られた結果を観れば、世界の大半の国の大半の人間が、平和で差別のない武器もいらず戦争の必要もない国になってほしいと希望している・・・という結果が出る・・・かなあ・・・ま、出るとしよう。
そうした一個一個はテロも戦争も好きじゃないし、できればしたくないと思っているのに、集団となった時全く別の結果が現実社会に吐き出される。結果、アメリカは石油利権のため他国の要人をミサイルで暗殺するテロ国家に姿をかえ、アラブは手当たり次第に自爆テロを敢行する半狂乱の民族の如く映る。
だから社会派と言われる映画は(右寄り左寄り問わず)、国家の集合意志を平均化した人物を添える事で物語を判りやすくし、国を讃えたり国を裁いたりしてきた。社会の性質をミニマム(個)の視点か、マキシマム(国家)の視点のどっちかで描いてきた。
本作が素晴らしいのはミニマムからマキシマムへの変貌過程を追求している点である。
国を良くしたい、国家元首になりたい、大企業同士の合併を成功させたい、石油でもうけたい、弁護士としてキャリアアップしたい、国家防衛の義務を遂行しているだけ、国のために働くそれだけ、邪魔臭い奴を切り捨てたい、ビジネスチャンスだ、仕事欲しい・・・・
・・・様々な人間が様々な野心を持ち寄って、行動し・・・悲劇を生む。それぞれお互いに定期ミーティング開いたり、全登場人物宛のメールを送ったりした訳でもないのに、アメリカの外国要人攻撃とイスラム教徒の自爆テロというニュースやテレビや映画やなんかで良く見る結果に行き着いていく。まるで社会は始めからそのように出来ていて、各人物は何が作動するかも知らないまま、マニュアル通りにボタンを押しレバーを引いているかのようだ。ただボタンを押す時は国への愛を込めなくてはならないとか、金持ちへの恨みを込めなくてはならないとか、あってもなくてもいいルールを勝手に一人一人が設定している。
どんなに強い意志を持っていたって、政治や社会や時勢やあれやこれやの中で、社会は知らぬうちに望まぬ方向に進み自分もその片棒を担いでいる。(「主義主張を貫いて生きるのは難しい・・・」ということを描いていたオスカー受賞の群像劇と似てますな)
でも、とにかく一つ一つ原因を説きほどいていかなきゃ、負の連鎖は決して終わらない。だから、この物語を創作したのだ。個から国家への意志の変貌を描く上で、寅フィックで成功した複数エピソード同時並行型群像劇が最適だったのだろう。あるいは寅フィックですらこの映画のための実験だったのかもしれない。ゲイガンの十八番、群像劇は本作でまた一つ進化したと思う。
残念なのは上映時間である。2時間は短い。この映画には4時間くらいの長さが必要だ(売れるわけないけど)。中盤くらいからテンポ重視で話(の細部)がよく判りづらい。づらいってより唐突すぎるところも多々ある。きっと上映時間の都合上捨てられたシーンが幾つもあるのだろう。DVDで完全版とか出たら見てみたい。
********寅で終わるシリアナ評********
さんざん寅、寅、言ってきたのでそれっぽくまとめてみましょう。
家族を故郷に残し、ふらふらと世界を旅するマッ寅・デイモン。人がいいから行く先々で友達ができちゃって偉ーい王子様ともマブダチ状態。おだてられてオブザーバー気取ってみたものの世間は甘くなく特に中東の世間は甘いの苦いの言ってられないよ、よ、よってらっしゃいみてらっしゃい、などと砂漠の真ん中でやっても誰もいない。けっきょく実家にもどってきたら、家族はやっぱ暖かく出迎えて、ああ家族っていいなあ、でもまたフラリと旅に出ちゃうんだろうなあ。
帰宅したマッ寅が、いちおう荷解きを手伝ってますよ、って取り繕ってるとこも、なんとなく類人猿っぽい顔してるとこも、なんか「男はつらいよ 特に中東で働く男は」って感じでした。
*******
↓面白かったらクリックしてね
人気blogランキング
自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
麻薬関係のこれによく似た作りの映画を前に観た事があります。監督はイニシャルがSSで名前はスティーブンでした(少なくともスピルバーグじゃありません)。タイトルは「寅さん」みたいな感じでした。マイケル・ダグラスが団子屋やってて、時折ベニシオ・デル・寅がふらりと帰ってきて、キャさくら・ゼタ・ジョーンズを困らせる話でなかったことは確かです。
本作でスティーブンで始まるSSさんはプロデュースに回って、監督はやっぱりスティーブンのスティーブン・ゲイガンが脚本兼で務めました。ゲイガンは「寅ふぃっく」の脚本でアカデミー賞とってます。日本アカデミーではありませんよ。念のため。
清兵衛に味をしめ、隠し剣や武士の一分を撮る、本物の寅さんで有名な監督を思い出させる企画です。
あるいはHEROで味をしめ、LOVERS撮っちゃうチャン・イーモウとか
けど、隠し剣やLOVERSが二番煎じと責められ貶されようとも、よくよく吟味すれば前作以上の冒険でさらなる進化を目指していることが判るように(LOVERSは進化失敗した感じだが)、「シリアナ」も「寅フィック」より(脚本に関しては)野心的な作品と言えます。
********まず不満なとこから********
最初に不満なとこから言いますが、脚本家あがりの監督デビュー作っぽく、物語つなぎに精一杯でカメラや俳優と遊んでる余裕のないいっぱいっぱいさか伝わってきます。まるでオスカーかすめ取っていったあの映画みたいです。なんてタイトルでしたっけ?「寅ッシュ」? 文頭に「パ」をつけたくなりますね。
ただそれでもベタながらもスローモー使いまくって迫真の救助シーンを描いたり、「シリアナ」よりずっと多いメインキャラを難なくさばいたりとやはり光るものを感じたパ「寅ッシュ」に比ッシュべると、映像ののっぺり感と、ここぞというシーンでのアイデア&気合い不足と、俳優持て余し&振り回され感、2時間程度にまとめるため端折りまくった気がする中盤以降。もろもろ遅れを取っている感じはイナバウアーいなめません。「トラフィック」は後継者の座を嫡子の「シリアナ」でなく名前のイメージ的に自分に似ている養子「クラッシュ」に譲ったのでした
********俳優に振り回され・・・【オスカー受賞のあの人】********
奇しくも両作とも人気脚本家の監督デビュー作で、地味だが渋くて映画年間100本近く観るオタクたちから愛されまくるスター(年間5~6本の一般人からは誰それ?と言われる俳優)を勢揃いさせた群像劇です。「シリアナ」
寅ッシュとシリアナが同じ年に作られたのは単なる偶然でしょうか? 寅ッシュが華々しく逆転サヨナラ決めた一方で、シリアナはほぼオスカーレース圏外。寅ッシュと同じオリジナル脚本の候補になったものの負けてしまいましたが、ところがところが助演男優賞はマット・ディロンを吹っ飛ばして「シリアナ」ジョージ・クルーニーがとっちゃいました。
俳優の使い方では俺が上さ・・・と少しだけおいしい酒が飲めたかもしれません。・・が、演出力の差というよりクルーニーの業界人気の差ではないかと感じます。素人意見ですがマット・ディロンの内面変化の方が、クルーニーの外見デブ化より見応えありました。
********ここぞというシーンでのアイデア&気合い不足【拷問シーン】********
中盤に私の大好きな「拷問シーン」が用意されていて、始まる前に期待で胸が高鳴りました。最近この種の発言増えてる気がしますが、開き直って進めましょう。
捕われのクルーニーさんが狂う兄さんに変わる様が観たくて大興奮の僕をじらす様に、拷問担当係の方は「中国人はどうやって法輪功を拷問するかを知っているか?」などと思わせぶりな事を言います。
え~~何々?知らない、知らない~~ん
わくわく爆発、先に僕が狂う兄さんになりそうです。
ところがその中国人の拷問ってのは
(1)水牢
(2)糞に顔おしつけ
(3)生爪はがし
・・・以上。
え?
ちょっと待て、めちゃめちゃオーソドックス。わわ、やめろ、なんかそういう他の映画でいっぱい何度も観てきたようなことして、上映時間無駄遣いするのはさ・・・ああ、そのペンチ置いて、もっと凄い事考えて~~!!
ああーあ。始めちゃったよ爪はがし。痛そうだねクルーニーさん。もういいから次の拷問に・・・と思ったら邪魔が入って拷問終了。がっかし。
「マラソンマン」とか「パッション」とか「マイ・ボディガード」とか観て出直してこい!! 中国なら「西太后」なんかも良かったぞ
あ、ちなみに観てる時は知らんかったのですが、法輪功ってのは宗教団体で中国政府は「危険なカルト集団だ」と言っています。
********さて、褒めるか。何つっても個から国家への移行メカニズムを解体したシナリオ********
と、いろいろ悪口並べましたけど、デキのいい悪いはさておいて、「シリアナ」は好きです。
国家テロ発生のメカニズムを脚本家なりに追求しているのが感じ取られ、単に寅フィックの二番煎じではなく、描きたいテーマに即した構成だったということでしょう。
よく「だからアメリカはさ・・・」とか「これだからアラブは・・・」とか言います。
これはもちろん差別的な発言です。でもついついそうやって、国家とか民族とか宗教とか概念としての集団が一つの生物であるかのように考えてしまいます。もちろんそう考える方が楽だからです。特に映画は楽です。ナチとかソ連とか出せば特にキャラクター描写などしなくたってぶち殺されて当然の悪党なのだと暗黙の了解が発生します。
ですが言うまでもないことですが、大抵の場合、国家とか大きな集団は一つの考えで動くものではありません。大統領はやろうと思えば核をぼんばか発射することもできるでしょうが、軍や閣僚を説得し、議会を乗り切って、国民に説明し、マスコミに叩かれ、外国から責められ・・・と考えたら恐ろしくてとても実行する気にはなれないものです。
イラク戦争も含めてここ最近アメリカがやった全ての行動はブッシュ一人で立案し計画し実行したわけではありません。下手したら立案も計画も実行も他人まかせです。じゃあ、”アメリカ”って集合意志が立案し計画し実行したのか? その集合意志ってなんじゃ? となります。
大抵の人間は人殺しは行けない事だ、嘘つきはダメです、と思う。アメリカではどうか知らんが日本では少なくとも半数以上が戦争には原則反対だ(そう信じたい)。
一人一人にアンケートをとって得られた結果を観れば、世界の大半の国の大半の人間が、平和で差別のない武器もいらず戦争の必要もない国になってほしいと希望している・・・という結果が出る・・・かなあ・・・ま、出るとしよう。
そうした一個一個はテロも戦争も好きじゃないし、できればしたくないと思っているのに、集団となった時全く別の結果が現実社会に吐き出される。結果、アメリカは石油利権のため他国の要人をミサイルで暗殺するテロ国家に姿をかえ、アラブは手当たり次第に自爆テロを敢行する半狂乱の民族の如く映る。
だから社会派と言われる映画は(右寄り左寄り問わず)、国家の集合意志を平均化した人物を添える事で物語を判りやすくし、国を讃えたり国を裁いたりしてきた。社会の性質をミニマム(個)の視点か、マキシマム(国家)の視点のどっちかで描いてきた。
本作が素晴らしいのはミニマムからマキシマムへの変貌過程を追求している点である。
国を良くしたい、国家元首になりたい、大企業同士の合併を成功させたい、石油でもうけたい、弁護士としてキャリアアップしたい、国家防衛の義務を遂行しているだけ、国のために働くそれだけ、邪魔臭い奴を切り捨てたい、ビジネスチャンスだ、仕事欲しい・・・・
・・・様々な人間が様々な野心を持ち寄って、行動し・・・悲劇を生む。それぞれお互いに定期ミーティング開いたり、全登場人物宛のメールを送ったりした訳でもないのに、アメリカの外国要人攻撃とイスラム教徒の自爆テロというニュースやテレビや映画やなんかで良く見る結果に行き着いていく。まるで社会は始めからそのように出来ていて、各人物は何が作動するかも知らないまま、マニュアル通りにボタンを押しレバーを引いているかのようだ。ただボタンを押す時は国への愛を込めなくてはならないとか、金持ちへの恨みを込めなくてはならないとか、あってもなくてもいいルールを勝手に一人一人が設定している。
どんなに強い意志を持っていたって、政治や社会や時勢やあれやこれやの中で、社会は知らぬうちに望まぬ方向に進み自分もその片棒を担いでいる。(「主義主張を貫いて生きるのは難しい・・・」ということを描いていたオスカー受賞の群像劇と似てますな)
でも、とにかく一つ一つ原因を説きほどいていかなきゃ、負の連鎖は決して終わらない。だから、この物語を創作したのだ。個から国家への意志の変貌を描く上で、寅フィックで成功した複数エピソード同時並行型群像劇が最適だったのだろう。あるいは寅フィックですらこの映画のための実験だったのかもしれない。ゲイガンの十八番、群像劇は本作でまた一つ進化したと思う。
残念なのは上映時間である。2時間は短い。この映画には4時間くらいの長さが必要だ(売れるわけないけど)。中盤くらいからテンポ重視で話(の細部)がよく判りづらい。づらいってより唐突すぎるところも多々ある。きっと上映時間の都合上捨てられたシーンが幾つもあるのだろう。DVDで完全版とか出たら見てみたい。
********寅で終わるシリアナ評********
さんざん寅、寅、言ってきたのでそれっぽくまとめてみましょう。
家族を故郷に残し、ふらふらと世界を旅するマッ寅・デイモン。人がいいから行く先々で友達ができちゃって偉ーい王子様ともマブダチ状態。おだてられてオブザーバー気取ってみたものの世間は甘くなく特に中東の世間は甘いの苦いの言ってられないよ、よ、よってらっしゃいみてらっしゃい、などと砂漠の真ん中でやっても誰もいない。けっきょく実家にもどってきたら、家族はやっぱ暖かく出迎えて、ああ家族っていいなあ、でもまたフラリと旅に出ちゃうんだろうなあ。
帰宅したマッ寅が、いちおう荷解きを手伝ってますよ、って取り繕ってるとこも、なんとなく類人猿っぽい顔してるとこも、なんか「男はつらいよ 特に中東で働く男は」って感じでした。
*******
↓面白かったらクリックしてね
人気blogランキング
自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
最近、手ぶれカメラって何を意味しているのかわからなくなってきています。この前『世界』という映画も観たのですけど、群像劇であるはずなのにほとんどハンディカメラを使ってなかった。切り返しやモンタージュなんかを無視しているところはドキュメンタリータッチだったのに・・・
まぁ、撮影に関しては素人である俺が言うのもなんなんですが、目が疲れる映画だけは視力が落ちてしまいそうなので何度も観たくありません。といっても『ダンサー・イン・ザ・ダーク』は好きなんですけど・・・・
支離滅裂なコメントにて失礼しました!
つまり「男もつらいけど、女もつらいのよ」なんですけど、それすら言葉足らずになってて、メジャーに抵抗しているかに見えて結局メジャーに迎合してる感のある今作でした(笑)。
てなわけで、TBありがとうございました。
この映画のキーワードは「寅」にありましたか?
完全に見誤りました
みんなツライのね。。。
トラバ&コメントありがとうございました♪
作った!見ろ!感がいいです。
観客にこびてないみたいなところが好き。唯一、観客のためにおいておいたキャラが寅ちゃんだったような。
あれもあれで必要だったと。