ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
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個人的評価: ■■■■□□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]
【映評概要】
「おとうと」の名を借りて、山田洋次が描く「男はつらいよパラレルワールド」
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【映評詳細・・・ネタバレ】
蓼科高原映画祭で鑑賞。
ラストで市川崑「おとうと」への献辞があり、有名な姉と弟がリボンで腕を結ぶシーンももちろんあるのだが単なるリメイクなどではない。
むしろ「おとうと」の名を借りた新生「寅さん」であり、渥美清の死でついに描けなかった「寅さん」最終回(テレビ版はおいといて)にチャレンジした作品のように自分には思えた。
定職につかずフラフラと各地を歩き、たまにふらっと帰っては家族と喧嘩をするおとうと。それはもう一人の寅さんのようだ。
「男はつらいよ」の第一作でふらりと帰ってきた寅さんは妹さくらのお見合い(いいとこの家との)を酔っぱらって台無しにしてしまう。破談となったさくらはその後とらやの裏の工場で働く貧しいが優しいひろしと結婚する。
対して「おとうと」の鉄郎は姪の小春の結婚式(大病院の医者との)を酔っぱらって台無しにしてしまう。その後離婚した小春は町内の優しい大工の亨と再婚する。
とっても似ている。
しかし寅さんは幸運にも結婚前の見合いをぶちこわしたのに対し鉄郎は結婚式の時になって突如現れるという不幸を背負ってしまう。
寅さんが見合いをぶちこわしてくれたおかげでさくらは幸せな結婚ができ、結果的に彼女を幸せに導いた。さくらもひろしも寅さんには恩を感じている。
対して小春にとっての鉄郎は離婚の原因の一部でしかなく、恨みこそすれ恩を感じる筈はない。
同じようなエピソードでスタートする物語でありながら寅さんは結局皆に愛され、鉄郎は姉を除いて心から嫌われ憎まれる。
堕落した寅さんのような鉄郎。女性といい仲になりそうになってもうまくいかないところも同じだが寅さんが決して女性に迷惑をかけなかったのに比べ、鉄郎は100万以上の借金を踏み倒して女性をひどい目にあわせてしまう。
そんな鉄郎を作ったのは劇中でも小林稔侍が言っていたが優しすぎる姉の吟子であろう。甘やかしすぎているように見えるその行動だが、しかし考えてみればどれもこれも「男はつらいよ」でさくらが寅さんにしたことや話すことによく似ている。
やっぱり吟子はさくらなのだ。
寅さんの行く末が鉄郎と同じ形になるとも限らないが、とらやの畳の上で往生するとはやはり思えない。寅さんも結局リリーとはくっつかず、行き倒れになるような気がする。しかし鉄郎でさえ引き受けてくれるホスピスがあるのだ。寅さんもそこに入り同じ施設のおばあちゃんやおじいちゃんを笑わせて、そして最後はやっぱりリリーとか歴代マドンナではなくさくらに看取られて死ぬのだろうかと思ってしまった。
佐藤蛾次郎をのぞいて寅さんレギュラー俳優は一人も出てこなかったが、寅さんのパラレルワールドのような「おとうと」の世界をたっぷり堪能したのだった。
最初と最後で反復されるご近所さんからの結婚祝いに町内という組織の暖かさを感じさせるところ。
残酷なほど邪魔者扱いされ続けた祖母がラストシーンで見せ場をさらうところ、などなどに山田洋次の暖かさを観る。
「でも俺、春ちゃんが離婚したって聞いた時、やったー!って思ったんだ」
どストレートだがいい台詞だと思う。
[追記]
上映後、蒼井優ちゃんのトークセッション。
けっこう近い距離で蒼井優ちゃんを観れて満足。
「リリィシュシュ」でデビューする時は映画なんてほとんど観たことなかったという彼女だが、一番好きな小津映画はとの問いに「お早う」ですとさらっと答えられるくらいになっていたのだった。
初の本読みで感情込めなくていいからと言った直後にもっと感情込めてと山田監督に言われたことなどを楽しく語ってくださいました。
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個人的評価: ■■■■□□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]
【映評概要】
「おとうと」の名を借りて、山田洋次が描く「男はつらいよパラレルワールド」
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【映評詳細・・・ネタバレ】
蓼科高原映画祭で鑑賞。
ラストで市川崑「おとうと」への献辞があり、有名な姉と弟がリボンで腕を結ぶシーンももちろんあるのだが単なるリメイクなどではない。
むしろ「おとうと」の名を借りた新生「寅さん」であり、渥美清の死でついに描けなかった「寅さん」最終回(テレビ版はおいといて)にチャレンジした作品のように自分には思えた。
定職につかずフラフラと各地を歩き、たまにふらっと帰っては家族と喧嘩をするおとうと。それはもう一人の寅さんのようだ。
「男はつらいよ」の第一作でふらりと帰ってきた寅さんは妹さくらのお見合い(いいとこの家との)を酔っぱらって台無しにしてしまう。破談となったさくらはその後とらやの裏の工場で働く貧しいが優しいひろしと結婚する。
対して「おとうと」の鉄郎は姪の小春の結婚式(大病院の医者との)を酔っぱらって台無しにしてしまう。その後離婚した小春は町内の優しい大工の亨と再婚する。
とっても似ている。
しかし寅さんは幸運にも結婚前の見合いをぶちこわしたのに対し鉄郎は結婚式の時になって突如現れるという不幸を背負ってしまう。
寅さんが見合いをぶちこわしてくれたおかげでさくらは幸せな結婚ができ、結果的に彼女を幸せに導いた。さくらもひろしも寅さんには恩を感じている。
対して小春にとっての鉄郎は離婚の原因の一部でしかなく、恨みこそすれ恩を感じる筈はない。
同じようなエピソードでスタートする物語でありながら寅さんは結局皆に愛され、鉄郎は姉を除いて心から嫌われ憎まれる。
堕落した寅さんのような鉄郎。女性といい仲になりそうになってもうまくいかないところも同じだが寅さんが決して女性に迷惑をかけなかったのに比べ、鉄郎は100万以上の借金を踏み倒して女性をひどい目にあわせてしまう。
そんな鉄郎を作ったのは劇中でも小林稔侍が言っていたが優しすぎる姉の吟子であろう。甘やかしすぎているように見えるその行動だが、しかし考えてみればどれもこれも「男はつらいよ」でさくらが寅さんにしたことや話すことによく似ている。
やっぱり吟子はさくらなのだ。
寅さんの行く末が鉄郎と同じ形になるとも限らないが、とらやの畳の上で往生するとはやはり思えない。寅さんも結局リリーとはくっつかず、行き倒れになるような気がする。しかし鉄郎でさえ引き受けてくれるホスピスがあるのだ。寅さんもそこに入り同じ施設のおばあちゃんやおじいちゃんを笑わせて、そして最後はやっぱりリリーとか歴代マドンナではなくさくらに看取られて死ぬのだろうかと思ってしまった。
佐藤蛾次郎をのぞいて寅さんレギュラー俳優は一人も出てこなかったが、寅さんのパラレルワールドのような「おとうと」の世界をたっぷり堪能したのだった。
最初と最後で反復されるご近所さんからの結婚祝いに町内という組織の暖かさを感じさせるところ。
残酷なほど邪魔者扱いされ続けた祖母がラストシーンで見せ場をさらうところ、などなどに山田洋次の暖かさを観る。
「でも俺、春ちゃんが離婚したって聞いた時、やったー!って思ったんだ」
どストレートだがいい台詞だと思う。
[追記]
上映後、蒼井優ちゃんのトークセッション。
けっこう近い距離で蒼井優ちゃんを観れて満足。
「リリィシュシュ」でデビューする時は映画なんてほとんど観たことなかったという彼女だが、一番好きな小津映画はとの問いに「お早う」ですとさらっと答えられるくらいになっていたのだった。
初の本読みで感情込めなくていいからと言った直後にもっと感情込めてと山田監督に言われたことなどを楽しく語ってくださいました。
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