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yokohama doll museum 2

2016-10-15 | art
うなじ
平田郷陽『粧ひ(よそおい)』

 横浜人形の家の3階には、artとしての人形が数多く展示してありました。その中でも貴重なものが、人間国宝・平田郷陽のコーナーです。
 以前、テレビ番組で紹介された『粧ひ』という夏用の薄手の着物を着た女性が化粧をする姿の人形を、一度間近で見てみたいと思っていました。ですから、今回のクエイ兄弟展に行くと決めた時、すぐこの人形が何処に展示されているかチェックしました(横浜市内ということは憶えていたので)。
  
 ガラスケースの中の彼女は、生きているようでした。高さは43.8cmだということですが、不思議なことに小さいと感じませんでした。
 ガラス張りなので写真を撮ると会場の照明やモニターの画像が写り込んでしまったり…と、苦労しましたが、違った角度から見てみると、顔の表情が違って見えます。
  
 鏡は、鏡面が濁っていて姿が映っていないのですが、本当に鏡を覗いているように見えます。これが木で出来ているとは、信じられません。それに、昭和6年に作られたとは思えないほど、劣化が見られない肌(胡粉)。その妖艶さに惹かれて、顔や着物から透けて見える身体ばかりに目を奪われていましたが、落ち着いて後で写真を見て、手や指の表現にも驚嘆しました。安本喜八の活人形(いきにんぎょう:生人形)も超絶写実技巧ですが、この作品は、精緻さとか技術以上のもの、人形の吐息が感じられるような気がしました。
 このような「活人形」は、江戸時代の終り頃から見世物興行の見世物として作られていました。幕末の浮世絵師・歌川国芳が描いた絵馬『一ツ家』(浅草寺の伝法院収蔵)は、見世物小屋の一ツ家の活人形を見た国芳が、インスパイアされて描いたものだそうですが、こんなクオリティの高い活人形だったら納得します。昔の日本では、これが単なる「人形」(職人が作ったものだから)扱いだったとは…平田郷陽は工芸品扱いだった人形を、芸術品にまで高めるために尽力しました。
  
 彼の作品は、他にも展示してありました。「小児シリーズ」で、遊んでる子供や眠ってる赤ちゃんなど、こちらは置物サイズでしたが、やはり精巧に作られていました。
 
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