博多住吉通信(旧六本松通信)

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サラミ戦術の恐怖

2015年07月02日 | 時事

 時事通信の報道によれば、自民党の大西英男衆院議員(東京16区、当選2回)は30日午後、安全保障関連法案に批判的な報道について「懲らしめなければいけないんじゃないか」と述べた。また、「誤った報道をするようなマスコミに対して広告は自粛すべきじゃないか」とも語った。国会内で記者団の質問に答えた。同党執行部は、同じ趣旨の発言が繰り返されたとして、27日に続いて大西氏を厳重注意としたとのことです。

 ソースです ⇒ http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150630-00000103-jij-pol

 作家の百田尚樹氏の暴言問題も大概でしたが、この発言も目に余るものがあります。マスコミ報道の批判的報道に対して、反批判をするのではなく、広告主を使って圧力をかけるというその発想は、大西氏自身が政権与党の国会議員である以上、看過できるものではありません。大西氏自身の反批判でなく裏から手をまわして相手を潰そうと発想するのは、結局ご自身の発言に説得力も正当性もないということを、大西氏自身がよく分かっているからなのでしょう。問題は大西氏が上記のとおり、政権与党の国会議員であることです。自民党は大西氏を注意するようですが、安保法制の国会審議に手詰まり感が出てきたという背景の発言である以上、いずれ自民党全体がこの発想に走る危険性は十分にあります。 

 政敵を裏から手をまわして少しづつ潰すという政治戦略に「サラミ戦術」があります。サラミ戦術という言葉を初めて使ったのは、第二次大戦後のソ連占領下のハンガリーで権力を握ったラーコシ・マーチャーシ・ハンガリー共産党書記長であると言われています。大戦後のハンガリーにおいて、共産党は選挙で政権を握ることを目指していました。しかし自作農民の多いハンガリーでは、共産党はなかなか選挙で多数を取ることができませんでした。そこでソ連占領軍の圧力の下で内務省と警察を掌握したラーコシは、反対派を少しづつ、でっち上げやデマを基に潰していきます。最初は保守派と自作農民の支持の多い小地主党を潰します。それから社会民主党内の反対派を始末し社民党を共産党に吸収します。最後に共産党内の自分の言うことを聞かなそうな同志を冤罪で逮捕して死刑(ライス・ラースロー外相の処刑)にします。こうして独裁体制を完成したラコシは「小スターリン」としてハンガリーに君臨しますが、ソ連におけるスターリン批判後失脚し祖国を追われ最後は失意のうちにソ連で死亡します。

 サラミ戦術そのものは、1930年代にドイツでヒトラーが権力を獲得する際に用いた手法(先ず共産党を弾圧し、次第に非ナチスの保守までを粛清した)からラコシが学んだもののようですが、「自分の主張に自信の持てない権力者の発想」として左右の独裁者が採用する戦術のようです。安保法制の審議で行き詰まった現在の自公政権に、そのような方向へ走らせないよう十分な警戒が必要であると思います。


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