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【ありま茜の自句駄注・白銀6月句スガ目鑑賞】

今月は茜句もお歴々の句も低調でした。単に季節の変わり目、暑さのせいなら挽回のしようもあるが。6月5日の句会で茜句の得点はミジメでした。まずその報告から。
◇大藤に寄れば大藤風に倚る ◇メロディを成さぬ草笛諒とせり(★2) ◇若夏へ吐き出されたる珊瑚の子 ◇夏空へ哀しきまでの電波塔(1) ◇子を叱る声あり蟻の巣の中は(兼題:蟻)/結果は得点が全部で3点、指導者選1句と散々でした。
 ついでに所属する本部句誌6月号の報告。毎号恒例の主宰選では投句7句中3句前後は毎回掲載されるのですが、今号では次の3句でした。◇椿落ちておのが墓場を飾りけり ◇七十路を戻るもならじ亀鳴けり ◇いかるがの野や黄金の杉の花・・・そうです、最後の句は模楽宙さんの3月句「斑鳩や黄金に靄る杉の花」を拝借したものです。改作が原文とあまり違わなかったらご寛恕を願います。句の内容は主宰も認めたということで、原作者の自信につながると思います。
 さて【スガ目鑑賞】です。今回は情感の新鮮な句を<天地人>にしましたが、作りが全体に甘かったと思う。<天>句は「菖蒲の風」が新鮮でした。風が木橋を渡っているという見立てからもう一つ突っ込んで、菖蒲園に近づいた作者を菖蒲の風(薫風)が出迎えてくれたとすればもうひと味違ったと思います。個々の句では、◆白日夢あまき誘惑ありじごく/典型的な三段切れ。「白日夢」「あまき誘惑」「ありじごく」それぞれの語句が我関せずで一句のイメージが収斂しない◆頑張れと一言かけたき蟻の列/蟻の何に頑張れと?ただ一列の蟻に対する声援では声援が空を切るのみ◆この列に加わるべきと蟻の声/「加わるべきと」にカフカ的な味もあるが?「はいれと誘う」ぐらいでいかが?◆一条の光り天空ありじごく/披講でかなり深読みも見られたが本句は三段切れっぽいのが難。光は天からくるので「天空」は無駄語。例「一条の光に浮かぶ蟻地獄」では?◆武蔵野はつひのすみかか蟻の塔/例「武蔵野をつひのすみかに蟻の塔」◆あなかしこあなまっしぐら蟻の道/これは川柳っぽい滑稽句の一種か判断不能◆三畳間なすこともなし油照り/油照は屋外では?室内では熱中症が危ない◆見迷いしオオタカの巣や夏来る/「見迷ふ」という言葉はありますか?◆記憶の奥よみがえる日や油照り/「記憶の奥」が不明。例えば「よみがえる戦時の記憶油照り」◆赤信号の次ぎは何色油照り/赤の次は青でしょう普通◆カシコクモオソレオオキテ油照り/今月の最難解句。乞う作者解説◆ハンカチの折り目深きや紅の色/「ハンカチの折り目」の深さと「紅の色」の関係は?乞う作者解説。以上、一般に持って回った表現が多い傾向です。奇を衒ったと誤解されるし、作者の意図も不明瞭。俳句ははっきり云うのが基本です。じっくり観察してさらっと詠む。推敲して贅肉(無駄な余分な言葉)を削ぎ落す。言葉をひっくり返して見直すのが茜のやり方です。以上茜のスガ目。
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六月投句

       兼題    蟻一切  油照 

二の腕に蟻がもの言ふ仕草かな        ありま茜    
菜の花へいつのまにやら童歌 粒石
蟻の塚利根の氾濫なき如し          模楽宙    
日和見の動き哀しき青蜥蝪          雅田如
白日夢あまき誘惑ありじごく         変竹      
すまし顔鏡に映して衣更            粒石
を振りつしばし思案の蟻の父       ありま茜
蜜豆や窓際に居る束ね髪           雅田如
蟻地獄つい見てしまふ事故現場        模楽宙       
頑張れと一言かけたき蟻の列         粒石
この列に加わるべきと蟻の声         雅田如
一条の光り天空ありじごく          変竹          
武蔵野はつひのすみかか蟻の塔        模楽宙     
あなかしこあなまっしぐら蟻の道       変竹
現し世にメール充満す油照          模楽宙
三畳間なすこともなし油照り          変竹
無縁塚の石仏ほとけも古りぬ油照り         ありま茜
油照犬も躊躇ふアスファルト          模楽宙    
見迷いしオオタカの巣や夏来る         雅田如
記憶の奥よみがえる日や油照り          変竹  
カシコクモオソレオオキテ油照り         変竹  
新緑が一山を包んで笑いをり           粒石
幼子や機影やきつくあの夏日           模楽宙    
赤信号の次ぎは何色油照り            粒石           
木の橋に菖蒲の風の渡りをり          塩       
白といふも力さまざま夏の雲          ありま茜    
ふるさとの思い出たどる青葉路         塩    
ハンカチの折り目深きや紅の色         雅田如
雲重く山もや包む桐の花            塩        
草むしり昨日も今日もわら帽子        粒石
梅雨たのし秋田音頭の大き蕗         ありま茜    
ひそやかに神がまるめし手毬花        ありま茜   
しっとりと雨を含みし青葉かな         塩
                       
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