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四月披講


            兼題  菜の花  緑  

  天   新緑やキャンバス一気に萌え上がり 粒石
野外で風景画を描いている情景か、木々も一斉に芽吹いて若葉となり、どこを見ても緑一色となる。キャンバスにも太いタッチで緑色が萌える如く塗られていく。新緑の勢いをキャンバスに取り込んだところが良いと思われます(模楽宙)

  天   新緑や竪穴住居発掘中        雅田如
縄文遺跡を発掘中の風景だ。しかも周囲はむせかえるほどの新緑。先史時代と現代の遙かな時間の対比、あるいは縄文の生活と現代の生活との対比、一方で変わらない青葉若葉の匂い。「新緑や」の季語とキレがよく利き、竪穴住居との取り合わせが絶妙(ありま茜)

  天   菜の花の色に染まりし夕日かな    塩
菜の花に目を向けていると何時とはなしに心が和んでくる。夕日に映える菜の花に戦時中の日々が想い出され、平和の有難さを感じる(粒石)

  天   菜の花の乳房まさぐる虫の貌    ありま茜
どんな表情の貌なのか、想像すると面白い。意外と真面目くさった表情かもしれない。やっぱり蜜の味は麻薬だ。中七で言いきっているのがこの句の命だ。菜の花が妙齢な聖女に見えてくるのは当方のストレスのせいなのだろうか(雅田如)

  天   航跡のみどりひとすぢ春の海    模楽宙
青海原を一艘の船がゆく。外国航路の旅客船か、その航跡が緑の一筋を引いているという。緑色というからには港を離れて間もない光景かも知れない。春の海にふさわしい長閑な景観を詠った好句(ありま茜)

  天   小綬鶏の暁気を破り挑発す    模楽宙       
「ちょっとこい」と かん高く鳴く 野生の鶏? とか 名は聞くが 姿を見た
ことも 鳴き声を聞いたこともない なのに「暁に挑戦する」に 妙に納得(変竹)

  地   小綬鶏の暁気を破り挑発す    模楽宙
コジュケイは大正8年に狩猟鳥として中国から輸入された。全長27センチほどの鶏形の鳥で雑木林や竹藪を好む。チョットコイ、ワンツースリーなどと鳴く雄の声が暁を破ってハンターを挑発していると聞いたところが面白い(ありま茜)

  地   悲しきはいにしへの世も春の海    模楽宙
人として生を受ける此の世は苦の娑婆と言われる如く、古今東西を問わず苦しみ悲しみが後を絶たない。苦難と闘ふのが人生だ。強くありたい(粒石)

  地   菜の花や分け隔てなきくにざかひ    模楽宙
地球上に争いのない日はない、人間のなせる品性はアダムとイヴに始まる罪だ。自然界の生業に畏敬の念を新たにする今日この頃である(雅田如)

  地   菜の花や分け隔てなきくにざかひ    模楽宙
国境(県境)をまたいで咲き誇る菜の花の光景。なるほど花には国境など関係ないし、どっちが貧でどっちが富裕も関係ない。ただ咲きたい処に咲く植物の性質だが、つまらぬ争いはやめよと国境にかすがいを打ち込んでいるように見えて面白い(ありま茜)

  地   髪束ね女演じる桜餅         雅田如
小股切れ上がった女性像が浮かぶ。それに隅田川畔の長命寺を嚆矢とする桜餅とくれば間違いなく「お蔦ー力」の世界だ(粒石)

  地   菜の花の乳房まさぐる虫の貌    ありま茜     
あまく やわらかく やさしい にっぽんの母 そんな気配が 菜の花には…
それでも なお 蟲が 弄る 乳房 となると なんともエロティック(変竹)

  地   大難のこのときなれどサクラ咲く    変竹
国難の時に日本の国花でもある桜が時を同じくして咲くとは何とも切ない。日本は一つの国としては、緑の多い国として世界でもトップクラス、四季の変化にも富んでいる。その分自然の中で暮らしていくには厳しくも有り、反面恵みも受けてきた。これからの日本人の生き方が今問われている(模楽宙)

  人   菜の花やゴスペルの顔皆似たり       雅田如
菜の花は いつだって群生 ひと花ひと花は さほどではないにしても… 
集い神への賛歌をささげる 神のみ前で 花たちは没個性の美しさ(変竹)

  人   菜の花やゴスペルの顔皆似たり        雅田如
教会でゴスペルソングを歌っている人達の事か。神の教えを信じている者の顔は一点の曇りも無くすがすがしい。その表情は皆同じで上五に表現されている(模楽宙)

  人   神いずこ仏おはすか春の月    変竹
この世におられる神仏よ!お力を!と叫び祈り、念じたき昨今である。下五の季語がきいている。不透明なはっきりしない明日を思いあぐねる(雅田如)

  人   古稀むかへ気おいもあらず新樹かな    変竹
古稀70歳を迎えたが、とりたてて気負いもない淡々とした心境だと詠ったものだが、そうはいっても清々しく輝く新樹を目にすると、どことなくやる気が湧くなあ、と本音を詠ったものと解したい。本句は文語と口語がごっちゃになっているので注意。「古稀むかへ気ほひ(気負ひ=競ひ)もあらず新樹かな」(ありま茜)

  佳作  菜の花や秘めたる思い捨てがたく      粒石
人それぞれ秘め事はあるが、人生最終章にさしかかり、なおその思いは強くなる。断ち切る勇気を持ち合わせない当方など、だらだらと老いらくの秘め事に身を焦がしている(雅田如)

  佳作  菜の花や秘めたる思い捨て難く        粒石
菜の花は どこかなつかしく哀しい 少年時代の ほのかな想いが
その想い 消しても消しても 消しきれない 少年時代への追憶…(変竹) 

  佳作  菜の花や秘めたる思い捨て難く        粒石
男ほど思い出を引きずるらしい。しかも秘めた思いなら尚更で、菜の花の淡い光景を見ると心がヨレヨレになる(ありま茜)

  佳作  菜の花や湯掻けばあはき野をひろぐ    ありま茜
満ちたりた人生をおくられた人の句だ。ゆったりと時の流れに身を任せ湯につかる心境は下五の表現だ(雅田如)

  佳作  菜の花や湯掻けばあはき野をひろぐ    ありま茜  
菜の花はやさしい やわらかく あわあわと 春の香り
湯がいて 皿に盛り 口に含めば 春の野を行くが如し(変竹)

  佳作  新緑や竪穴住居発掘中       雅田如
縄文人が集落を作り 小さな村を営んだ地は いまや木々に埋もれている
新緑が芽吹いた森の中で 発掘作業が営々と進む 縄文の祭儀を偲びつつ(変竹)

  佳作  新緑や竪穴住居発掘中       雅田如
竪穴住居の発掘となると時代は縄文か弥生時代の跡か、その当時の生活を忍ばせる如く、周囲は新緑の木々で覆われている。作業する人の気持ちを和ませてくれるかの様です(模楽宙)

  佳作  髪束ね演じる女桜餅        雅田如
女はいつだって 演じているんです いい女をいつだって…  さくら餅 
色っぽいね 内に秘めた妖しさ それにしても 少なくなったね いい女(変竹)

  佳作  落人の寄りそふ里や桃の花    模楽宙      
他郷との交流を孤絶 ひっそりと 支えあってたつきを守る 平家の末裔
かっての公達は 華やかな歌舞音曲を偲ぶ 里の桃の花は どこか哀しい(変竹) 
  
  佳作  余生とて命いとしく青き踏    塩      
老後に残された人生 とはいうものの やはり生はいとおしい いやいや
残りの生なればこそ なおのこと されば野にいで 新緑踏み 歩むなり(変竹)

  佳作  いずくより吟詠流る春月夜    塩
どこからか詩吟が流れてくる。折しもまんまるの春月夜。春の夜のみずみずしさが身上(ありま茜)

  佳作  悲しさはいにしへの世も春の海    模楽宙    
ひねもす のたりのたりかな のどかで ひたすら平穏… ではありながら
どこか もの哀しい いにしえからの 小さき悲しみが降り積もる故なのか(変竹)
             
  佳作  神いづこ仏おはすか春の月    変竹
苦難の日々に身を置けば、時には世を謗り、神仏に背を向けたき心境にかられる時もあるやも。而し「朝の来ない夜はない」を今一度噛みしめて一歩前に進めば道は拓けるのだ(粒石)

  佳作  神いずこ仏おはすか春の月    変竹
悲惨な大震災に神も仏もあらばこそ。春月が美しければ美しいほど憎らしく見える。本句は今だから東日本大震災と想像つくが、十年後ならどうだろう。時事俳句の難しさである(ありま茜)

  佳作  ジーパンの穴に恋して復活祭     雅田如 
平和の豊かさの中で育った現代の若者の屈託のない一面が見事に詠まれ、昭和一ケタには頗ぶる新鮮だ(粒石)

  佳作  新緑やキャンバス一気に萌え上がり     粒石
新緑を描いていたら、キャンバスが緑にもえあがったという。画家の心の中まで緑一色という気分の句。このケースでキャンバスはよく使われる題材(ありま茜)

  佳作  大難のこのときなれどサクラ咲く   変竹
大震災などお構いなしに咲く花が人間にとってどれほど有難いことか。筆者は「大地震(おおなゐ)も桜も神の息吹にて」と詠んだ。本句「サクラ」とカタカナで書く意味ありや?「さくら」又は「桜」でいい(ありま茜)

  佳作  道草や渦はのの字に花筏    ありま茜
花筏が岸辺の近くを渦が巻く様に滞留している。渓谷の川を舟が行き、花吹雪が舞う。川合玉堂の屏風絵を思い出しました(模楽宙)

     五月兼題  「幟」一切
              東日本の災害地に応援のエールを送るのはいかがでしょうか

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四月投句

      兼題   菜の花  緑 

いきほひといふ言の葉や若葉より      ありま茜   
菜の花や分け隔てなきくにざかひ      模楽宙   
菜の花の色に染まりし夕日かな       塩
渓音の耀かがよふあした花辛夷          ありま茜    
この色よこの枝ぶりよと初桜            粒石
大難のこのときなれどサクラ咲く      変竹
新緑やキャンバス一気に萌え上がり     粒石
新緑や竪穴住居発掘中           雅田如
悲しさはいにしへの世も春の海       模楽宙
大地震も桜も神の息吹かな         ありま茜          
神いずこ仏おはすか春の月         変竹
石投げて俳句は絵画目借時         雅田如
余生とて命いとしく青き踏           塩
菜の花や富士をあおぎて上九村       変竹       
散策の径沿い凡て初桜           粒石
菜の花やゴスペルの顔皆似たり       雅田如
つちの香のつらなる袴つくづくし        模楽宙 
ジーパンの穴に恋して復活祭        雅田如
古稀むかへ気おいもあらず新樹かな     変竹 
新緑の燃え立つ筑波迫りくる        塩
菜の花や湯掻けばあはき野をひろぐ     ありま茜              
菜の花や秘めたる思い捨て難く       粒石
落人の寄りそふ里や桃の花         模楽宙
緑満ついまこの国を神統べる        変竹     
髪束ね演じる女桜餅            雅田如
菜の花の乳房まさぐる虫の貌        ありま茜          
航跡のみどりひとすぢ春の海        模楽宙
無表情の顔に春風紙芝居          雅田如
菜の花の沖に描きし少年志         変竹             
新緑は待つまでもなく迫り来て       粒石
いずくより吟詠流る春月夜          塩
道草や渦はのの字に花筏          ありま茜        
小綬鶏の暁気を破り挑発す         模楽宙

                     
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