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移転しました(2014/1/1)

『坂の上の雲』の世界に関して思うこと 3

2006-02-02 | ヒストリ:連載
戦史。

その存在意義は戦争の様相、個々の戦闘の詳報や教訓を広く伝え、後の研究に資する点にあるといってもいいでしょう。
秘密戦史にも戦史編纂の一義にこれが挙げられています。
それが何故こんな形になったのか。
昭和の敗戦を迎え、海軍が解体するまで部内の人間にさえ容易に洩らせない機密中の機密があったのか。
それとも他に意図があったのか。
理由は良く分かりません。
しかしながら…戦史自体を、機密という形ではなく少なくとも部内の人間には閲覧を許可する必要があったのではないかと思います。

先日、話の引きで日露戦争の海戦史を編纂したのは小笠原長生だと紹介しました。
戦史編纂の為に、開戦直前に最前線にいた千代田から軍令部へと呼び戻され、それからずっと編纂の中心にいた人物です。
個々の部隊から送られてくる戦闘詳報を読み、また軍令部独自で収集している情報を纏める作業の核になっていたのが小笠原。
日露の海戦を全体から眺めた時、採られた戦略・戦術、個別の戦闘史に関して、彼ほど統合して情報を把握できた人間はいなかったか、いても僅かだったはずです。
そうした人物が、日露戦争ブームのさなかに雄弁に東郷平八郎を語り、日本海海戦を語る。旅順口閉塞隊を語る。
熱狂するなという方が無理な話です。

以前広瀬武夫関連の記事でも触れましたが、小笠原は東郷平八郎を神格化した人物なのですが、彼は時を同じくしてとある事に大きな評価を与えるようになりました。
それが、東郷ターンといわれる「敵前大回頭」です。
明治大正までは「急に方向を変えました」程度の扱いだったようですが、小笠原が光を当てることから大きく評価されるようになり、ここでの東郷平八郎が正に皇国の興廃を担う提督という姿となった様です。



***

……と、ここまで長々と戦史と小笠原の話を書いてきましたが、実は本題はここからです(笑)

『坂の上の雲』至上主義。
この作品に対する批判は寸毫も許せない、という方はバックオーライでお願いします。
読んでから不愉快になったと言われても困りますので、ここらで五寸釘打っときます。

***


続きまーす。

『坂の上の雲』の世界に関して思うこと 1
『坂の上の雲』の世界に関して思うこと 2
東郷平八郎の神格化

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