■ 夏のガリガリ君!君がスターだ!
夏といえばチューブ、稲川淳二?
夏。
いろいろな夏の人が登場する。
例えばチューブ、典型的な夏のバンド。
例えば怪談師・稲川淳二、夏の怖い話の定番タレント。
そして、ガリガリ君?
もともとアイスは夏に似合うものだが、
特に氷菓・カキ氷の雰囲気をぷんぷん漂わすガリガリ君は、
よく似合う
ガリガリ君。
何が奇跡か?単体で年間5億本近くの売れ行き、
赤木乳業・400億円弱の4割を占める。
30年以上ものロングセラー
子供に大人気だが、おとなもよく食べる。
なぜ、こんなに売れるのだろうか?
セブンアイの店頭のカテゴリー横断的な売上ランキングをみると、
そのベスト10にアイスが2つ入っている。
しかも、ハーゲンダッツを抑えてガリハリ君が上位に来ている。
セブンの中でトップである。
アイスは冷たくておいしい独自のカテゴリーである。
レストランで食事をすると定番デザートとしてふるまわれる。
安くて、甘くて、まろやかで、いろいろな味があり、
お菓子的なエンタメ感があり、こんな表情豊かなスイーツはない。
それでは、
ここから、ガリガリ君の秘密を紹介していく。
まず、アイスカテゴリーのマーケティングモデルは
どのような特性をもつのか?
次いで、ガリガリ君のようなユニークなアイスは、
アイスカテゴリーの中でどのような存在感を放ち、
30年もの間、なぜ小さな子供たちに愛されてきたのか?
を考察する。
はじめに:
アイスカテゴリーのビジネス特性とは?
アイス売場をみると、ヒット商品、ロングセラーブランドが10ヶぐらいある。
ピノ、ジャンボモナカ、ジャイアントコーン、ハーゲンダッツ、雪見だいふく、
スーパーカップエッセル、クーリッシュ、パーム、ガリガリ君、爽、
ドールフルーツマルチパック、バニラバーマルチパック・・・・・
これ以外にも準ロングセラー商品が続く。
これらで売場の半分を占める。
後の半分は新しい商品、リバイバル商品・・・・が占める。
新商品が雨後のたけのこのようにうまれては消えてゆく。
激戦区の食品カテゴリーである。
アイスの事業は、もともと、
ブレークイーブンポイントが高い商品で、
あまり利益がとれないカテゴリーといわれている。
しかしこの数年は普通のお菓子類と異なり、
猛暑の追い風を受けて、売り上げが上がり
損益分岐点が下がり、気をはいている分野といわれているが、
それでも苦しい分野である。
(因みに今夏は異常気象もあり対昨年同月で激減という)
アイスカテゴリーは、生産性が悪い?
その中で、各社はどのように収益を確保しているのか?
大手のビジネスモデルは、
・まず基本ロングセラー主力アイテムを抱え安定的な収益を確保し、
・ついで、毎年のラインエクステンションでそのロングセラーを守り、拡大し、
・それ以外に毎年のアドホック的な単発商品を出し売り場を確保し、
という組み合わせで出来ている。
つまり運動神経の良い、もぐらたたき的なビジネス感覚が求められる。
ある年にヒットしても、それが次の年にヒットするとは限られない。
単年ごとの一回毎感覚のマーケティングになる、
しんどい、つらいカテゴリーともいえる。
なぜか?
次の年には各社がこれぞという新商品を出し勝負にでてくるので、
その勢いに飲まれてしまうことがよくある。
競合からの攻勢で前年のヒット商品といえども油断は出来ないのである。
単年毎のアドホック商品が売れなければ、
アイス事業の収益はますます苦しくなり赤字になり、
ロングセラーの収益をくってしまうので、
各社は必死なのである。
また、最大の原因は、冬休みにはいって、
カテゴリーが冬眠状態になり、
その夏にたまたまヒットしたといっても、
強制的にサステナブルなマーケティングができない状態となり、
次年度は仕切り直しになってしまうからである。
但し、夏冬間の落差についていえば、
今は暖房の聞いた快適な住宅が多いので、
以前ほどはないといわれている。
またアイスが冷菓ではなく、スイール的な色彩を強めているので、
冬でも食べたいスイーツというニーズが生じてきていることも落差を少なくしているようだ。
前述したように、
アイスのロングセラーは以前とほとんど変らない。
逆に言えば、
新しいロングセラーがなかなか育たない特殊なカテゴリーということも出来る。
そんな中でガリガリ君は異常に?頑張っている!
ロングセラーなのにヒット商品である。
半端無く伸びているのである。
その秘密は???
A.ガリガリ君の、3つのマーケティング特性
1.環境特性:
・このところの毎年の猛暑でガリガリ君には
大フォローの風が吹いている。
気温が高いと、
同じアイスクリームでもいわゆるアイスクリーム的なべたべたしたものより、
氷菓的なさっぱりしたものはよく売れる。
・このところのデフレ的な経済下で安いものは良く売れた。
ガリガリ君のお得感はおおいに受けた。
2.商品特性:
ガリガリ君には、極めてユニークな商品特性がある。
アイスカテゴリーの中で異彩を放ち、食品全体の中でも際立った存在感を示している。
ランダムにあげると以下のようになる。
■氷菓(カキ氷)商品:
ガリガリ君の原点は氷菓である。
もともとは片手で食べられるカキ氷というコンセプトで出発している。
バー型以外にカップ型の氷菓、氷菓ブロックもあるが、ガリガリ君の独壇場である。
■市場内商品ポジション:
ニッチボリュームという稀な商品ポジションである。
アイスというカテゴリーでは、
ガリガリ君の遊び感覚は発売当初から明らかにニッチであった。
今や、何百億円という凄みのあるボリュームになってしまった。
いわばニッチボリュームというポジションをつくってしまったのである。
もはや、日影のニッチとはいえない状況である。
今後は、ニッチという匂いをいかに巧みに残し、大ボリュームブランドという大手感覚を隠してゆくか?が問われる。
単純なマス大型商品にしてしまうと、
そのブランドテーストの存在感を急速に失うことになる。
そのために商品開発、販促・広告開発においては、
ニッチの匂いを常に漂わせておかないといけない。
大手と同じことをやっていたのでは勝てない、
という社長談話の感覚は的を得ている。
■NO1商品:
氷菓サブカテゴリー、B級カテゴリーでは常にNO1の地位を維持している。
このポジションは死守しなければならない。
NO1は何よりの凄みのあるブランド価値である。
具体的な価値をすべて内包する形而上的な価値といってよい。
NO1はすべての生活者のニーズを保証するBIGWORDということである。
■安心、ノスタルジー商品:
昔懐かしいバータイプの氷菓アイス
バータイプといえば、昔その棒から当りが出るような思い出が蘇る。
何かほっとする、子供時代を思い出すような安心感がる。
■子供・童心商品:
ガリガリ君は、
きもかわいいキャラクターで子供の人気をわしずかみにした。
発売後30年たった今、
昔5歳の子供が、既に30歳を超え子供をもうけている。
2世代商品の誕生である。
2世代で消費が発生するという強いニ重構造になっている。
ガリガリ君は、
実年齢の子供商品という側面ばかりではなく、
童心にかえって子供感覚で食べられる商品
という現役のおとな商品の側面ももっている。
「童心商品」の誕生をも意味する。
ガリガリ君は複数世代に消費される商品である。
■キャラクター商品:
ガリガリ君は、キャラクター商品である。
今や国民的な「きもかわキャラクター」である。
きもかわは、今はやりのテーストである。
お菓子の世界でここまでキャラが立った商品はない。
ガリガリ君ブランドの連想アンカーポイントは、
間違いなくガリガリ君キャラであり、
ガリガリから連想する淡いブルーの氷菓
の2つである。
ブランドの連想アンカーポイントは、
ブランドの個性の強さを示すものであるが、
ガリガリ君ブランドのそれは強烈である。
■国民的商品:
ガリガリ君は皆に親しまれている。
日本サッカー協会ともコラボして、TBCMもうつなど超NBとなっている。
今や、ガリガリ君は企業の商品の域を超えて、
文化財となっている。
ガリガリ君が、
今後も健康的でヤンチャな子として
すくすくと育つことを願うばかりである。
このような思いを抱かせることが
そもそも普通の商品ではない域に到達している証ともいえる。
3.マーケティングマネジメント特性
ガリガリ君は、
以下のような大きな視点、細かい視点のマネジメントを巧みに行っている。
■コネタプロモーション戦略:
・二毛作でプロモーションを展開する。
夏を6-7月、8-9月の二回にわけプロモーションする。
他社は、夏の後半は、秋以降のアイスのプロモーション準備、
次年度の商品・販売開発の準備に入るところだが、
ガリガリ君は違う。
貪欲である。
・継続的な、地道なゲリラSP
バータイプなのに、
スプーンを置くなど面白いプロモーションを行う。
(詳細は最後の追記で)
■ブルーオーシャン戦略:
・発売当初、強い商品は皆スーパーで売場を確保することに重点を置いていた。
ガリガリ君は、激戦のスーパーを避けて、コンビニでの売場確保で存在感をつくった。
・アイスなのにスープ味をだしてしまった!
等々
大手とは違うことをやる!
がガリガリ君のマーケティングミッションである。
ガリガリ君には、自分の中身とおなじ色をしている戦略オプションの
『ブルーオーシャン色』が良く似合う。
ガリガリ君は、
親のいうことをきかないわんぱくぼうずだ。
勝手にブルーオーシャンに出てしまうそんな感じのキャラクターである。
■PLCマネジメント戦略&プロジェクション戦略:
具体的に言えば、ロングセラーマネジメントの展開である。
ガリガリ君は、
長期に戦略的に需要を喚起してブランド価値を高めていく、
ことを運命づけられている。
ロングセラーは結果としてなるものという側面があるが、
自ら仕掛けてそのようにもっていくという側面もある。
ガリガリ君は両者の側面をもった優れものである。
(次章参照)
B.ガリガリ君・超ロングセラーマーケティングのセオリー:
ロングセラーになるには、以下の3つの鉄則が必要とされる。
鉄則1:定期的なマーケティングスティミュラント(マーケ刺激策の展開)
鉄則2:市場背景の変化にともなうブランドコンセプトのシフト
鉄則3:社会・時代に応じたラインエクステンション、商品開発と投入
鉄則1:
前述のような二毛作、
ゲリラSPなどがある。
冬のイベント展開、全国サンプリングなど
ガリガリ君のすごいのは、それを社員一丸となり継続することである。
鉄則2:
キャラクターは一度中学生から、小学生へと大きくイメチェンさせている。
また、成熟化に応じ、マンネリを防ぐために、
大きく飛躍するマーケスティミュラントを実現すべくスープ味をつくりあげた。
これはマスコミと口コミの取り上げ方が半端ではなく、
変な広告を打つよりはるかに大きなコミュニケーション効果をもたらした。
このラインエクステンション展開で、
ガリガリ君はここに有りという存在感を社会へ大きく示せた。
鉄則3:
今年は20種類以上の商品を投入している。
昨年はリッチコーンポタージュで話題をさらった。
普通では考えられないフレーバーである。
実際においしく出来、よく売れた。
鉄則3はメーカー(製造業)のDNAであり究極のミッションでもある。
つくってなんぼというメーカーの世界観を、
ガリガリ君は忠実に体現している。
ガリガリ君は30年以上の超ロングセラーを続けている。
テクニカルなマーケティングノウハウをしっかり実践してきた結果であるが、
ファンにささえられて、一緒に遊びながら育ってきたという感じがする。
キャラの人格が、そこには宿っているのではないかと思わせる。
赤城乳業社長のつよ強い意志もロングセラーマネジメントの裏側で働いている。
一種の執念で育て上げたキャラ&商品である。
インナーの人々のWILLは、ロングセラー育成で必須のものである。
C.ガリガリ君の原点価値、そのインサイト?!
最後にガリガリ君の本質を示すマーケティングインサイトとは何か?
について触れる。
インサイト1:B級商品というDNA
ガリガリ君の最初のインサイト、それは、
『B級食品』
ということである。
B級という、
ガリガリ君最大の特性はアイスカテゴリーの中で存在感を大いに放っている。
B級とはなにか?
身近で、値段が安く、気軽に構えず食べられる・・・
どこにでもあるような雰囲気を感じさせる、
だれもが自分向きと感覚を持ち、好きになれる食品のことである。
最近では、B級グルメで各地の食品が紹介され、イベントで競われ人気を博している。ものによっては地域活性化のツールにもなっている。
宇都宮の餃子、山梨の持つ煮込み・・・・・・等など
ださくて、品がなく、毒々しい味・・・・・的なはずれの食品の手前で踏みとどまり、
大衆的なファンの信頼と親しみを得る食品である。
それは家庭的な、プロとは趣を異にする雰囲気を醸し出す食品である。
ガリガリ君は、
B級アイスであるが故に、
マーケティング活動の自由度が高く、制約がなく、
いろいろなトライが出来て活性化してきたといえる。
今までのアイスはどちらかというとかっこよく出来ていて、
お高くとまっているものが多かった。
プレミアムアイスであるハーゲンダッツはその代表である。
インサイト2:ガリガリ君は食品である。
食品の原点は何か?
最後にものを言うのは味である。
・食品としての原点価値とは:
おいしい、その味、食感が脳裏にのこる。
ガリガリ君の味はグルメ的、リッチ的、クオリティ的ではない。
さりげないソーダ味である。
なんでもないどこにでもある、癖のない味である。
しかし妙に記憶にのこる味である。
アイス売場の前にゆくと、ほのかに思い出す味、
時間がたつとまた食べたくなる味である。
これだけ長く食べ続けているとその味に慣れてくる。
他ブランドへいっても、また同じガリガリ君の中の他の味へいっても、
また、あのソーダ味と食感を思い出して戻ってくる、
そのような味覚の仕立てになっているのである。
ガリガリ君はロングセラーとなることで、
益々上記のような好循環の恩恵を受けている。
・商品としての原点価値とは:
商品としては価格がなにより大切である。
価格の価値判断は3つある。
価格と性能の見合いでコストパフォーマンス(ユニットプライス)が高いか、
絶対価格(ポケットプライス)が低いか?
その価格が人に誇らしく見えるか(スノッブプライス)?自分がそのような気分に浸れるか?
の3つである。
では、ガリガリ君はどのように評価されているのだろうか?
ガリガリ君は量も多く独特のガリガリ味で、価格もその割には安い。
またB級商品なので、
これを買って食べるとなにか話題になり話の中心にいられる?!
自分が一緒に遊べた気分になれる!?
という精神的な効用も大きい。
つまり、
ガリガリ君は多様な観点で何かお得感のある仕立てになっている。
ガリガリ君は極めて優れもののアイスである。
インサイト3:キャラクター価値へのインサイト
ガリガリ君はキャラクター商品である。
キャラクターとして育てられなければならない。
赤城乳業ではガリガリ君プロダクションをつくり、
キャラクター展開の道筋をつける、その権利関係を調整する等
の動きも見せている。
ガリガリ君アイスは、
「ガリガリ君」というキャラクターを前面にだした
キャラクターグッズでもある。
キャラクターグッズの持つもともとの個性は、
守らなければならない。
ガリガリ君コンセプトを逸脱しないような
デザイン、コピー、メディア対応が不可欠である。
同時に進化もさせなければならない。
進化がなければあきられてしまう。
また、イメージ量をコントロールして、
広がり過ぎてマンネリになったり、飽きられたりということも避けねばならない。
実際のグッズとしては、
トイレタリー、玩具ジャンルでの商品・イベント展開が進んでいる。
D.ガリガリ君マーケティングのBIGWORDとは?
ガリガリ君が、
B級食品であることを、最後に再度確認をする。
ガリガリ君が凄いことはよくわかる?!
では、ガリガリ君マーケティングを一言で言うとすると何か?、
ズバリ、
『B級食品』
ということに尽きる。
B級であるが故に、
他の完成度の高いイメージで勝負しているA級的なアイスとは異なる。
ガリガリ君は、
B級ならではのマーケティングマネジメントの『8P』が
実践できたものと思われる。
キャラ的に言えば、
わんぱくぼうずのように暴れまわることができたともいえる。
8Pとは、
プロダクト、
プライス、
プレイス、
プロモーション、
ペルソナ(ターゲット、商品に隠されたキャラ性)、
ポジショニング(対競合への差別性)、
PLC(プロダクトライフサイクル、ロングセラーマネジメント)、
プロジェクション(需要予測)
である。
結果論ではあるが、
ガリガリ君は、
見事にマーケティングの8Pに対応して、
すべきことはキチントしたということが分かる。
いまやアイスカテゴリーは、
特Aのハーゲン、特Bのガリガリ君で維持できているといっても過言ではない。
この稿おわり
追記1:
改めてガリガリ君の凄さ
2013年度は4億8千万本(約5億本)
まず、年間一億本達成には約20年近くかかっている。
その後2億本(07年に達成)までには7年、
3億本までに3年4億本は2年でクリアした。
加速度的に伸びてきた。
赤城乳業は3年から13年には380億円と倍増になる。
指数関数的とまではいわないまでも加速度的なものは、
必ずどこかで急停車的な波乱要因をはらんでいると考えるのが
数学的なチャート分析の基本である。
どこかでそろそろ鈍化するのでは?
不連続なクライシスが起こるのでは?
とそのリスク要因を注視して、それをどう回避するかを考えておくのが、
最大のマーケティング戦略といっても過言ではない。
追記2:
氷菓といえば、赤城しぐれが有名である。
あのなんでもない味、硬くて食べずらい食感、
どこがいいのだろうと思わせる商品だったが、
振り返って見れば、
何となく定期的に食べていた商品であった。
今はめったに見ない商品であるが、
ノスタルジーを感じさせる商品であり、
リバイバル作戦がうまく機能すれば、
面白いブランドとして、復活するのではないだろうか?
とにかく懐かしいブランドである。
この懐かしさだけでも十分にブランドの連想点にふさわしい。
追記3:
意外とガリガリ君はアイデア勝負の話題性商品とのイメージが強いが、
実際はセブンアイとのミルクたっぷりとろりんシュー味や
ファミリーマートとのカフェフラッペなど
かなりの技術力で受注している側面もある。
提携先への厳しさで有名な両CVSが、
太鼓判を押した技術力でPB化を成功させている。
追記4:
ガリガリ君のコネタ。
この地道なSPがガリガリ君を支えている。
縁の下の力もちである。
生活導線上の細かい、ユニークな、
面白い(話題を取りそうな)プロモーションを、
リアルな街、売場、SNS上でどんどん仕掛けて、話題をつくり、
口コミを誘発した。
一年間で見ると、100件をこえるコネタが展開されるという。
冬の札幌のサンプリング、バータイプアイスなのにスプーンを売場に置く?
子供たちへガリガリ君の品揃えの多さ、面白さをつたえるレインボー売り場つくり、
着ぐるみ、ゲーム、
ガリガリ部という会員づくり、
秩父鉄道のSL切符・・・・・・・
等実に多彩である。
これらのコネタの効果をどう考えるか。
一年間をそのコネタをサステナブルに続けることで、
いつも何かしている、動いている会社、ガリガリ君!
というイメージインフラができるように見える。
そのコネタに触れた人の心には、
ガリガリ君のイメージがすこしずつ堆積し、売場でガリガリ君を見れば、
つい買いたい、買ってしまうという行動連鎖をつくった。
また、買わなくとも、売り場でガリガリ君を見れば、
必ずガリガリ君が再認され、次の購入機会への布石をうつことに繋がる、
という価値連鎖も確保できたということになる。
これは対外的な効果だけではなく、
社員のガリガリ君へのこだわり感を醸成し、
やる気のエネルギーを益々高めているともといえる。
社員のやる気が高まれば、流通もその意気を感じ、
取り扱いの意欲を高めてくれるという価値連鎖をもたらすことになる。
社員のやる気をあらゆるステークホルダーが敏感に感じ取るという
精神的効果がもたらされることも間違いない。
スイーツではないスープ味を出す
などは商品開発に名を借りたプロモーションであり、
冬にアイスを食べてもらうという伏線でもある。
とにかく何かをやらかすガリガリ君というイメージをつくる。
ガリガリ君のキャラクターはわんぱくぼうずである。
何か、いたずらチックなことをしょっちゅうしでかしている方が
「ガリガ君らしい」のである。
ガリガリ君は、
様々な次元のコネタ、中ネタでマーケットを刺激していった。
このコネタは、
ガリガリ君という強烈なキャラ発で行うので、
そのイメージ資産は全部ガリガリ君と言う商品に蓄積され、
奇跡的な効果を生み出してくる。
普通の商品だと、
一般的に売場以外のプロモーションをおこなった時に、
どの商品のプロモーションだったのか記憶の中でまぎれてしまい、
トップ商品だけを利するという現象がおこる。
ガリガリ君の場合はそのようなことは無かったと推察される。
追記5:
次にコネタのヒンジ効果について触れておく
ニューヨーク。
以前は汚い、犯罪の街という評価が一般的だった。
ジュリアーノ市長時代に、
ニューヨークは安全で魅力的な都市に生まれ変わったといわれた。
まず、地下鉄の窓に落書きがあればそれを消す、また落書きされる、
また消すというようないたちごっこをつづけた。
ビルの窓ガラスがわられた、また入れ替える、また割られる、またいれかえるという作業もおこなった。
ヒンジとは蝶つがいのことである。
開いてもまたすぐ綴じる。また開く、また綴じる・・・・
それを繰り返すうちに、
ヒンジは綴じることなくあいたままになる。
ニューヨークの地下鉄の窓から、
時間の経過とともに、窓を綺麗にするという市民のエネルギーが増えてゆく、
いつしかまどの落書きは無くなっていったというお話である。
最後はニューヨークの町がきれいになり、犯罪の件数も減ったといわれる。
教訓として、小さな積み重ねがある臨界点をこえると、
半端ではない効果をもたらすという話である。
ガリガリ君もお金をかけた派手なSP,キャンペーンは張らないが、
地道なコネタの連続で、ガリガリ君のエネルギー・マグマを蓄積し、
ついには、マスと同じような、効果をもたらす結果となった。
ガリガリ君のコネタSPは、
地道な活動成果が閾値を越えた瞬間に
売り上げに大きく影響した。
前述の指数関数的な成長という効果である。
夏といえばチューブ、稲川淳二?
夏。
いろいろな夏の人が登場する。
例えばチューブ、典型的な夏のバンド。
例えば怪談師・稲川淳二、夏の怖い話の定番タレント。
そして、ガリガリ君?
もともとアイスは夏に似合うものだが、
特に氷菓・カキ氷の雰囲気をぷんぷん漂わすガリガリ君は、
よく似合う
ガリガリ君。
何が奇跡か?単体で年間5億本近くの売れ行き、
赤木乳業・400億円弱の4割を占める。
30年以上ものロングセラー
子供に大人気だが、おとなもよく食べる。
なぜ、こんなに売れるのだろうか?
セブンアイの店頭のカテゴリー横断的な売上ランキングをみると、
そのベスト10にアイスが2つ入っている。
しかも、ハーゲンダッツを抑えてガリハリ君が上位に来ている。
セブンの中でトップである。
アイスは冷たくておいしい独自のカテゴリーである。
レストランで食事をすると定番デザートとしてふるまわれる。
安くて、甘くて、まろやかで、いろいろな味があり、
お菓子的なエンタメ感があり、こんな表情豊かなスイーツはない。
それでは、
ここから、ガリガリ君の秘密を紹介していく。
まず、アイスカテゴリーのマーケティングモデルは
どのような特性をもつのか?
次いで、ガリガリ君のようなユニークなアイスは、
アイスカテゴリーの中でどのような存在感を放ち、
30年もの間、なぜ小さな子供たちに愛されてきたのか?
を考察する。
はじめに:
アイスカテゴリーのビジネス特性とは?
アイス売場をみると、ヒット商品、ロングセラーブランドが10ヶぐらいある。
ピノ、ジャンボモナカ、ジャイアントコーン、ハーゲンダッツ、雪見だいふく、
スーパーカップエッセル、クーリッシュ、パーム、ガリガリ君、爽、
ドールフルーツマルチパック、バニラバーマルチパック・・・・・
これ以外にも準ロングセラー商品が続く。
これらで売場の半分を占める。
後の半分は新しい商品、リバイバル商品・・・・が占める。
新商品が雨後のたけのこのようにうまれては消えてゆく。
激戦区の食品カテゴリーである。
アイスの事業は、もともと、
ブレークイーブンポイントが高い商品で、
あまり利益がとれないカテゴリーといわれている。
しかしこの数年は普通のお菓子類と異なり、
猛暑の追い風を受けて、売り上げが上がり
損益分岐点が下がり、気をはいている分野といわれているが、
それでも苦しい分野である。
(因みに今夏は異常気象もあり対昨年同月で激減という)
アイスカテゴリーは、生産性が悪い?
その中で、各社はどのように収益を確保しているのか?
大手のビジネスモデルは、
・まず基本ロングセラー主力アイテムを抱え安定的な収益を確保し、
・ついで、毎年のラインエクステンションでそのロングセラーを守り、拡大し、
・それ以外に毎年のアドホック的な単発商品を出し売り場を確保し、
という組み合わせで出来ている。
つまり運動神経の良い、もぐらたたき的なビジネス感覚が求められる。
ある年にヒットしても、それが次の年にヒットするとは限られない。
単年ごとの一回毎感覚のマーケティングになる、
しんどい、つらいカテゴリーともいえる。
なぜか?
次の年には各社がこれぞという新商品を出し勝負にでてくるので、
その勢いに飲まれてしまうことがよくある。
競合からの攻勢で前年のヒット商品といえども油断は出来ないのである。
単年毎のアドホック商品が売れなければ、
アイス事業の収益はますます苦しくなり赤字になり、
ロングセラーの収益をくってしまうので、
各社は必死なのである。
また、最大の原因は、冬休みにはいって、
カテゴリーが冬眠状態になり、
その夏にたまたまヒットしたといっても、
強制的にサステナブルなマーケティングができない状態となり、
次年度は仕切り直しになってしまうからである。
但し、夏冬間の落差についていえば、
今は暖房の聞いた快適な住宅が多いので、
以前ほどはないといわれている。
またアイスが冷菓ではなく、スイール的な色彩を強めているので、
冬でも食べたいスイーツというニーズが生じてきていることも落差を少なくしているようだ。
前述したように、
アイスのロングセラーは以前とほとんど変らない。
逆に言えば、
新しいロングセラーがなかなか育たない特殊なカテゴリーということも出来る。
そんな中でガリガリ君は異常に?頑張っている!
ロングセラーなのにヒット商品である。
半端無く伸びているのである。
その秘密は???
A.ガリガリ君の、3つのマーケティング特性
1.環境特性:
・このところの毎年の猛暑でガリガリ君には
大フォローの風が吹いている。
気温が高いと、
同じアイスクリームでもいわゆるアイスクリーム的なべたべたしたものより、
氷菓的なさっぱりしたものはよく売れる。
・このところのデフレ的な経済下で安いものは良く売れた。
ガリガリ君のお得感はおおいに受けた。
2.商品特性:
ガリガリ君には、極めてユニークな商品特性がある。
アイスカテゴリーの中で異彩を放ち、食品全体の中でも際立った存在感を示している。
ランダムにあげると以下のようになる。
■氷菓(カキ氷)商品:
ガリガリ君の原点は氷菓である。
もともとは片手で食べられるカキ氷というコンセプトで出発している。
バー型以外にカップ型の氷菓、氷菓ブロックもあるが、ガリガリ君の独壇場である。
■市場内商品ポジション:
ニッチボリュームという稀な商品ポジションである。
アイスというカテゴリーでは、
ガリガリ君の遊び感覚は発売当初から明らかにニッチであった。
今や、何百億円という凄みのあるボリュームになってしまった。
いわばニッチボリュームというポジションをつくってしまったのである。
もはや、日影のニッチとはいえない状況である。
今後は、ニッチという匂いをいかに巧みに残し、大ボリュームブランドという大手感覚を隠してゆくか?が問われる。
単純なマス大型商品にしてしまうと、
そのブランドテーストの存在感を急速に失うことになる。
そのために商品開発、販促・広告開発においては、
ニッチの匂いを常に漂わせておかないといけない。
大手と同じことをやっていたのでは勝てない、
という社長談話の感覚は的を得ている。
■NO1商品:
氷菓サブカテゴリー、B級カテゴリーでは常にNO1の地位を維持している。
このポジションは死守しなければならない。
NO1は何よりの凄みのあるブランド価値である。
具体的な価値をすべて内包する形而上的な価値といってよい。
NO1はすべての生活者のニーズを保証するBIGWORDということである。
■安心、ノスタルジー商品:
昔懐かしいバータイプの氷菓アイス
バータイプといえば、昔その棒から当りが出るような思い出が蘇る。
何かほっとする、子供時代を思い出すような安心感がる。
■子供・童心商品:
ガリガリ君は、
きもかわいいキャラクターで子供の人気をわしずかみにした。
発売後30年たった今、
昔5歳の子供が、既に30歳を超え子供をもうけている。
2世代商品の誕生である。
2世代で消費が発生するという強いニ重構造になっている。
ガリガリ君は、
実年齢の子供商品という側面ばかりではなく、
童心にかえって子供感覚で食べられる商品
という現役のおとな商品の側面ももっている。
「童心商品」の誕生をも意味する。
ガリガリ君は複数世代に消費される商品である。
■キャラクター商品:
ガリガリ君は、キャラクター商品である。
今や国民的な「きもかわキャラクター」である。
きもかわは、今はやりのテーストである。
お菓子の世界でここまでキャラが立った商品はない。
ガリガリ君ブランドの連想アンカーポイントは、
間違いなくガリガリ君キャラであり、
ガリガリから連想する淡いブルーの氷菓
の2つである。
ブランドの連想アンカーポイントは、
ブランドの個性の強さを示すものであるが、
ガリガリ君ブランドのそれは強烈である。
■国民的商品:
ガリガリ君は皆に親しまれている。
日本サッカー協会ともコラボして、TBCMもうつなど超NBとなっている。
今や、ガリガリ君は企業の商品の域を超えて、
文化財となっている。
ガリガリ君が、
今後も健康的でヤンチャな子として
すくすくと育つことを願うばかりである。
このような思いを抱かせることが
そもそも普通の商品ではない域に到達している証ともいえる。
3.マーケティングマネジメント特性
ガリガリ君は、
以下のような大きな視点、細かい視点のマネジメントを巧みに行っている。
■コネタプロモーション戦略:
・二毛作でプロモーションを展開する。
夏を6-7月、8-9月の二回にわけプロモーションする。
他社は、夏の後半は、秋以降のアイスのプロモーション準備、
次年度の商品・販売開発の準備に入るところだが、
ガリガリ君は違う。
貪欲である。
・継続的な、地道なゲリラSP
バータイプなのに、
スプーンを置くなど面白いプロモーションを行う。
(詳細は最後の追記で)
■ブルーオーシャン戦略:
・発売当初、強い商品は皆スーパーで売場を確保することに重点を置いていた。
ガリガリ君は、激戦のスーパーを避けて、コンビニでの売場確保で存在感をつくった。
・アイスなのにスープ味をだしてしまった!
等々
大手とは違うことをやる!
がガリガリ君のマーケティングミッションである。
ガリガリ君には、自分の中身とおなじ色をしている戦略オプションの
『ブルーオーシャン色』が良く似合う。
ガリガリ君は、
親のいうことをきかないわんぱくぼうずだ。
勝手にブルーオーシャンに出てしまうそんな感じのキャラクターである。
■PLCマネジメント戦略&プロジェクション戦略:
具体的に言えば、ロングセラーマネジメントの展開である。
ガリガリ君は、
長期に戦略的に需要を喚起してブランド価値を高めていく、
ことを運命づけられている。
ロングセラーは結果としてなるものという側面があるが、
自ら仕掛けてそのようにもっていくという側面もある。
ガリガリ君は両者の側面をもった優れものである。
(次章参照)
B.ガリガリ君・超ロングセラーマーケティングのセオリー:
ロングセラーになるには、以下の3つの鉄則が必要とされる。
鉄則1:定期的なマーケティングスティミュラント(マーケ刺激策の展開)
鉄則2:市場背景の変化にともなうブランドコンセプトのシフト
鉄則3:社会・時代に応じたラインエクステンション、商品開発と投入
鉄則1:
前述のような二毛作、
ゲリラSPなどがある。
冬のイベント展開、全国サンプリングなど
ガリガリ君のすごいのは、それを社員一丸となり継続することである。
鉄則2:
キャラクターは一度中学生から、小学生へと大きくイメチェンさせている。
また、成熟化に応じ、マンネリを防ぐために、
大きく飛躍するマーケスティミュラントを実現すべくスープ味をつくりあげた。
これはマスコミと口コミの取り上げ方が半端ではなく、
変な広告を打つよりはるかに大きなコミュニケーション効果をもたらした。
このラインエクステンション展開で、
ガリガリ君はここに有りという存在感を社会へ大きく示せた。
鉄則3:
今年は20種類以上の商品を投入している。
昨年はリッチコーンポタージュで話題をさらった。
普通では考えられないフレーバーである。
実際においしく出来、よく売れた。
鉄則3はメーカー(製造業)のDNAであり究極のミッションでもある。
つくってなんぼというメーカーの世界観を、
ガリガリ君は忠実に体現している。
ガリガリ君は30年以上の超ロングセラーを続けている。
テクニカルなマーケティングノウハウをしっかり実践してきた結果であるが、
ファンにささえられて、一緒に遊びながら育ってきたという感じがする。
キャラの人格が、そこには宿っているのではないかと思わせる。
赤城乳業社長のつよ強い意志もロングセラーマネジメントの裏側で働いている。
一種の執念で育て上げたキャラ&商品である。
インナーの人々のWILLは、ロングセラー育成で必須のものである。
C.ガリガリ君の原点価値、そのインサイト?!
最後にガリガリ君の本質を示すマーケティングインサイトとは何か?
について触れる。
インサイト1:B級商品というDNA
ガリガリ君の最初のインサイト、それは、
『B級食品』
ということである。
B級という、
ガリガリ君最大の特性はアイスカテゴリーの中で存在感を大いに放っている。
B級とはなにか?
身近で、値段が安く、気軽に構えず食べられる・・・
どこにでもあるような雰囲気を感じさせる、
だれもが自分向きと感覚を持ち、好きになれる食品のことである。
最近では、B級グルメで各地の食品が紹介され、イベントで競われ人気を博している。ものによっては地域活性化のツールにもなっている。
宇都宮の餃子、山梨の持つ煮込み・・・・・・等など
ださくて、品がなく、毒々しい味・・・・・的なはずれの食品の手前で踏みとどまり、
大衆的なファンの信頼と親しみを得る食品である。
それは家庭的な、プロとは趣を異にする雰囲気を醸し出す食品である。
ガリガリ君は、
B級アイスであるが故に、
マーケティング活動の自由度が高く、制約がなく、
いろいろなトライが出来て活性化してきたといえる。
今までのアイスはどちらかというとかっこよく出来ていて、
お高くとまっているものが多かった。
プレミアムアイスであるハーゲンダッツはその代表である。
インサイト2:ガリガリ君は食品である。
食品の原点は何か?
最後にものを言うのは味である。
・食品としての原点価値とは:
おいしい、その味、食感が脳裏にのこる。
ガリガリ君の味はグルメ的、リッチ的、クオリティ的ではない。
さりげないソーダ味である。
なんでもないどこにでもある、癖のない味である。
しかし妙に記憶にのこる味である。
アイス売場の前にゆくと、ほのかに思い出す味、
時間がたつとまた食べたくなる味である。
これだけ長く食べ続けているとその味に慣れてくる。
他ブランドへいっても、また同じガリガリ君の中の他の味へいっても、
また、あのソーダ味と食感を思い出して戻ってくる、
そのような味覚の仕立てになっているのである。
ガリガリ君はロングセラーとなることで、
益々上記のような好循環の恩恵を受けている。
・商品としての原点価値とは:
商品としては価格がなにより大切である。
価格の価値判断は3つある。
価格と性能の見合いでコストパフォーマンス(ユニットプライス)が高いか、
絶対価格(ポケットプライス)が低いか?
その価格が人に誇らしく見えるか(スノッブプライス)?自分がそのような気分に浸れるか?
の3つである。
では、ガリガリ君はどのように評価されているのだろうか?
ガリガリ君は量も多く独特のガリガリ味で、価格もその割には安い。
またB級商品なので、
これを買って食べるとなにか話題になり話の中心にいられる?!
自分が一緒に遊べた気分になれる!?
という精神的な効用も大きい。
つまり、
ガリガリ君は多様な観点で何かお得感のある仕立てになっている。
ガリガリ君は極めて優れもののアイスである。
インサイト3:キャラクター価値へのインサイト
ガリガリ君はキャラクター商品である。
キャラクターとして育てられなければならない。
赤城乳業ではガリガリ君プロダクションをつくり、
キャラクター展開の道筋をつける、その権利関係を調整する等
の動きも見せている。
ガリガリ君アイスは、
「ガリガリ君」というキャラクターを前面にだした
キャラクターグッズでもある。
キャラクターグッズの持つもともとの個性は、
守らなければならない。
ガリガリ君コンセプトを逸脱しないような
デザイン、コピー、メディア対応が不可欠である。
同時に進化もさせなければならない。
進化がなければあきられてしまう。
また、イメージ量をコントロールして、
広がり過ぎてマンネリになったり、飽きられたりということも避けねばならない。
実際のグッズとしては、
トイレタリー、玩具ジャンルでの商品・イベント展開が進んでいる。
D.ガリガリ君マーケティングのBIGWORDとは?
ガリガリ君が、
B級食品であることを、最後に再度確認をする。
ガリガリ君が凄いことはよくわかる?!
では、ガリガリ君マーケティングを一言で言うとすると何か?、
ズバリ、
『B級食品』
ということに尽きる。
B級であるが故に、
他の完成度の高いイメージで勝負しているA級的なアイスとは異なる。
ガリガリ君は、
B級ならではのマーケティングマネジメントの『8P』が
実践できたものと思われる。
キャラ的に言えば、
わんぱくぼうずのように暴れまわることができたともいえる。
8Pとは、
プロダクト、
プライス、
プレイス、
プロモーション、
ペルソナ(ターゲット、商品に隠されたキャラ性)、
ポジショニング(対競合への差別性)、
PLC(プロダクトライフサイクル、ロングセラーマネジメント)、
プロジェクション(需要予測)
である。
結果論ではあるが、
ガリガリ君は、
見事にマーケティングの8Pに対応して、
すべきことはキチントしたということが分かる。
いまやアイスカテゴリーは、
特Aのハーゲン、特Bのガリガリ君で維持できているといっても過言ではない。
この稿おわり
追記1:
改めてガリガリ君の凄さ
2013年度は4億8千万本(約5億本)
まず、年間一億本達成には約20年近くかかっている。
その後2億本(07年に達成)までには7年、
3億本までに3年4億本は2年でクリアした。
加速度的に伸びてきた。
赤城乳業は3年から13年には380億円と倍増になる。
指数関数的とまではいわないまでも加速度的なものは、
必ずどこかで急停車的な波乱要因をはらんでいると考えるのが
数学的なチャート分析の基本である。
どこかでそろそろ鈍化するのでは?
不連続なクライシスが起こるのでは?
とそのリスク要因を注視して、それをどう回避するかを考えておくのが、
最大のマーケティング戦略といっても過言ではない。
追記2:
氷菓といえば、赤城しぐれが有名である。
あのなんでもない味、硬くて食べずらい食感、
どこがいいのだろうと思わせる商品だったが、
振り返って見れば、
何となく定期的に食べていた商品であった。
今はめったに見ない商品であるが、
ノスタルジーを感じさせる商品であり、
リバイバル作戦がうまく機能すれば、
面白いブランドとして、復活するのではないだろうか?
とにかく懐かしいブランドである。
この懐かしさだけでも十分にブランドの連想点にふさわしい。
追記3:
意外とガリガリ君はアイデア勝負の話題性商品とのイメージが強いが、
実際はセブンアイとのミルクたっぷりとろりんシュー味や
ファミリーマートとのカフェフラッペなど
かなりの技術力で受注している側面もある。
提携先への厳しさで有名な両CVSが、
太鼓判を押した技術力でPB化を成功させている。
追記4:
ガリガリ君のコネタ。
この地道なSPがガリガリ君を支えている。
縁の下の力もちである。
生活導線上の細かい、ユニークな、
面白い(話題を取りそうな)プロモーションを、
リアルな街、売場、SNS上でどんどん仕掛けて、話題をつくり、
口コミを誘発した。
一年間で見ると、100件をこえるコネタが展開されるという。
冬の札幌のサンプリング、バータイプアイスなのにスプーンを売場に置く?
子供たちへガリガリ君の品揃えの多さ、面白さをつたえるレインボー売り場つくり、
着ぐるみ、ゲーム、
ガリガリ部という会員づくり、
秩父鉄道のSL切符・・・・・・・
等実に多彩である。
これらのコネタの効果をどう考えるか。
一年間をそのコネタをサステナブルに続けることで、
いつも何かしている、動いている会社、ガリガリ君!
というイメージインフラができるように見える。
そのコネタに触れた人の心には、
ガリガリ君のイメージがすこしずつ堆積し、売場でガリガリ君を見れば、
つい買いたい、買ってしまうという行動連鎖をつくった。
また、買わなくとも、売り場でガリガリ君を見れば、
必ずガリガリ君が再認され、次の購入機会への布石をうつことに繋がる、
という価値連鎖も確保できたということになる。
これは対外的な効果だけではなく、
社員のガリガリ君へのこだわり感を醸成し、
やる気のエネルギーを益々高めているともといえる。
社員のやる気が高まれば、流通もその意気を感じ、
取り扱いの意欲を高めてくれるという価値連鎖をもたらすことになる。
社員のやる気をあらゆるステークホルダーが敏感に感じ取るという
精神的効果がもたらされることも間違いない。
スイーツではないスープ味を出す
などは商品開発に名を借りたプロモーションであり、
冬にアイスを食べてもらうという伏線でもある。
とにかく何かをやらかすガリガリ君というイメージをつくる。
ガリガリ君のキャラクターはわんぱくぼうずである。
何か、いたずらチックなことをしょっちゅうしでかしている方が
「ガリガ君らしい」のである。
ガリガリ君は、
様々な次元のコネタ、中ネタでマーケットを刺激していった。
このコネタは、
ガリガリ君という強烈なキャラ発で行うので、
そのイメージ資産は全部ガリガリ君と言う商品に蓄積され、
奇跡的な効果を生み出してくる。
普通の商品だと、
一般的に売場以外のプロモーションをおこなった時に、
どの商品のプロモーションだったのか記憶の中でまぎれてしまい、
トップ商品だけを利するという現象がおこる。
ガリガリ君の場合はそのようなことは無かったと推察される。
追記5:
次にコネタのヒンジ効果について触れておく
ニューヨーク。
以前は汚い、犯罪の街という評価が一般的だった。
ジュリアーノ市長時代に、
ニューヨークは安全で魅力的な都市に生まれ変わったといわれた。
まず、地下鉄の窓に落書きがあればそれを消す、また落書きされる、
また消すというようないたちごっこをつづけた。
ビルの窓ガラスがわられた、また入れ替える、また割られる、またいれかえるという作業もおこなった。
ヒンジとは蝶つがいのことである。
開いてもまたすぐ綴じる。また開く、また綴じる・・・・
それを繰り返すうちに、
ヒンジは綴じることなくあいたままになる。
ニューヨークの地下鉄の窓から、
時間の経過とともに、窓を綺麗にするという市民のエネルギーが増えてゆく、
いつしかまどの落書きは無くなっていったというお話である。
最後はニューヨークの町がきれいになり、犯罪の件数も減ったといわれる。
教訓として、小さな積み重ねがある臨界点をこえると、
半端ではない効果をもたらすという話である。
ガリガリ君もお金をかけた派手なSP,キャンペーンは張らないが、
地道なコネタの連続で、ガリガリ君のエネルギー・マグマを蓄積し、
ついには、マスと同じような、効果をもたらす結果となった。
ガリガリ君のコネタSPは、
地道な活動成果が閾値を越えた瞬間に
売り上げに大きく影響した。
前述の指数関数的な成長という効果である。