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■ 阪急メンズ、ルミネ誕生、魅惑の銀座、その進化・深化・新化!

2011年11月05日 | Weblog
■ 阪急メンズ、ルミネ誕生、魅惑の銀座、その進化・深化・新化!



はじめに:銀座は変わる

有楽町であいましょう・・・・・♪
が流行ったのが昭和30年代、
故フランク永井が歌って大流行した。
フランク永井は当時2年連続レコード大賞をとった大人気歌手であった。

有楽町は銀座の玄関口。

そこから数寄屋橋交差点、4丁目交差点へと人が流れる。
今は、有楽町を抜けて、
松屋通りを歩き銀座松屋デパートへ向かうルートがメインだという。

銀座が変貌している。
成熟した大人の女性の街、
そんな単純な街ではなくなった。
若い女性がくる、男性が来る、家族連れが来る、ビジネスパースンが来る、ファミリーがくる、ヤンギャルがくる・・・・、
多様な街へと変わった。
古い言葉だが、
有閑マダムといわれる時間・金銭にゆとりのある富裕層が
ショッピング、食事を楽しむ街ではなくなった。

今は、そのような「銀ブラ」(銀座をブラブラする、という昔の「はやり言葉」)的な
風情はない。
時代が銀座を変えた。。

銀座はすたれていく古い街ではなく、
日本のあらゆる生活価値観を吸収し、
進化し続ける現代的な街である。

A.銀座の違い、その格とは:

銀座の街は、
あまたある繁華街、
例えば新宿、渋谷、池袋、上野、最近の秋葉原
とは明らかに違う。

「気品」がある。
大人、成熟、綺麗、上質、洗練という感覚がよぎる。
目抜き通りの建物が綺麗。
裏通りに入っても場末的な感じはなく情緒がある。
有名なランドマークとなる建物、店も多い。
例えば、
和光の時計台、数寄屋橋交番、資生堂パーラー等々、
日産ギャラリー、ソニービル・・・・・・。

ここで、クイズをひとつ!
銀座は他の街と比べて何が違う?
他の街にあって、銀座にはないものとは?

答えは、
高層ビル、産業的な大きな道路、陸橋(空中歩道橋)、
汚い裏路地、風俗・呼び込み、学校、家電量販店である。
要は、
ハード的な建造物、綺麗でないもの、風俗っぽいもの、
学生(ある意味未成熟な若者)、身近すぎる小売業態
が銀座にはほとんどない。

銀座には、
街の雰囲気としてそのようなものを寄せ付けないオーラがある。
また様々な規制があるとも聞く。
都市的な無味乾燥さ、
人間の本性・退廃感、
未成熟さ
身近さ
が似合わない街である。

歴史の「t(時間軸)」がインテグレートした、懐の深い、
また、連綿とつづく商人・市井文化がある。
そのような雰囲気が銀座の魅力である。

歴史的に見て、
銀座は、江戸時代から商業の中心地として発達してきた。
そこには、商人の旦那衆の、いまでいうロータリー・ライオンズクラブ的な文化がある。
その文化が、時間を掛けて発酵し定着し、
今のような雰囲気をもたらした。

商業集積、文化集積、エンタメ集積、飲食集積が、
整合性を保ちつつ、
雑多な感じではなく大きな包容力を醸し出し、
人を迎え、包み込む街である。

渋谷の若者・インディズ的な文化発進感、
新宿の歓楽街的な猥雑なイメージ、
池袋の雑多なエネルギー感。
秋葉原の萌え感
上野の裏日本玄関的な雑踏感

このような人間くさい、人間の営みを感じさせる街
も魅力的だが、
銀座にはそれらとは異なる匂いがある。
人生の上澄みを取ってきたような、
古い言葉だが「ハイカラ」な街、
それが銀座である。

B.戸惑う街・銀座:

今銀座のビルの賃貸料に変化が起きている。

有楽町駅から銀座松屋デパートへの通称松屋通りが、
銀座中央への
賑わい感のあるアクセスルートになっている。

人の流れが代わってきた。

有楽町界隈、晴海通りと松屋通りの間の賃料が上昇している。

銀座3,4丁目から有楽町界隈に銀座の賑わいがシフトしている。
昔、ダイエーが銀座プランタンを出店した。
最近では、
有楽町の駅前に、有楽町イトシアがマルイをキーテナントとして開店した。
またマロニエゲートがプランタンの北側にできた。
有楽町界隈は、
本当に賑わい感があり、うきうきするような街並みになってきた。

銀座に昔から慣れ親しんだ人をも戸惑わせる街である。

当然、賃料相場も上がってくる。
逆に、中央通りから東側の昭和通り方面、南側の新橋方面の賃料は
やや低迷しているという。

とあるTV番組の実験。

渋谷のギャル系の若い女性が、銀座4丁目交差点あたりに降り立った。
彼女らは銀座をどう見るのか。

歩いている人を見ると、皆お金持ちそうに見えるという。
彼女らが初めて銀座にきた、ということも驚きだが、
どのように歩いていいか戸惑うというのも驚きで
銀座の雰囲気のもたらす気品のなせる技かもしれない。

銀座は何か違う雰囲気を持った街である。
違和感があって居心地が悪いということではなく、
何かいい感じだが、戸惑ってしまう街である。

渋谷のギャル系女性も戸窓ながらも、悪い印象はもってない。
しばらく歩いて、
4丁目交差点から新橋方面へむかったあたりのファストファッション店、
ユニコロ、アバクロ、H&M,GAPをみると、
自分の街のような気分になるという。

銀座はいろいろな価値観を取り込み人を惑わせる。
しかし、それが心地よい進化となって新しい人を呼びこむ。

銀座は、そのような好循環を生み出す、生きた
街である。

C.銀座の奥深さ、その余韻など:

銀座。
筆者には格別の思いがある。
その昔、
日比谷に本社があるペトロケミカルの会社に勤めていたことがある。
銀座へは通勤で通っていた。
丸の内線・銀座駅でおり、日比谷の本社まで毎日歩いていた。

銀座は、昔からの繁華街で、歴史の長さを反映して、
伸びのある街である。
包容力のある街である。
西へ行けば日比谷公園、皇居のお堀がすぐそばにある。
大きな鯉や雷魚らしきものが悠々とおよいでいる。

日比谷公園の中には松本楼があり、おいしいオムレツを食べさせてくれる。
日比谷公会堂、野外音楽堂もある。
メーデーの集会がおこなわれてニュースにも流される。

少し南へ下れば帝国ホテルがあり、観光客、ビジネスマンが行きかう。

日比谷のど真ん中には宝塚があり、日生劇場もあり、東宝エンタメの中心地でもある。

一方、東へ歩めば昭和通りを越えて、
東銀座には、いま改築中の歌舞伎座がある。

北へ向かうと、
ホテル西洋銀座がある。
旧西武流通グループの元総帥・堤清二氏が、
文化発進の一環として建てた、
ハスピタリティに徹した、ユニークな外観のホテルである。
バブル期には、もてなしのホテルとして人気を博した。
このホテルの前には、新装の銀座コージーコーナーの本店がある。

銀座の中心を見る。

数寄屋橋交差点の交番の裏は宝くじで有名なチャンスセンターがあり、
一等が頻繁に出るということで売り出し日には大行列が出来る。
その数寄屋橋交差点にはソニービルがある。
ソニーのシンボリックなショ-ルームとして世界から人が集まってくる。

銀座のもうひとつの中心は4丁目交差点。

服部グループ(セイコー)の和光があり上年代の女性のメッカとなっている。
戦前に出来た名店で、
銀座といえばこの時計台つきのビルである。
銀座を象徴する背景として有名だ。

手前には模型で有名な天賞堂があり、
いい年の男性が童心に戻って模型を喰い入るように見ている。

4丁目交差点には、
三越が建ち、日産ギャラリーが車好きの人を集め、
そこから中央通りを北に歩くと、ITOYAがあり文具、雑貨の一品が並ぶ。

4丁目交差点近くには京都の老舗、和文具の店・鳩居堂がある。
銀座で一番高い土地として有名だ。
1平米2000万円超という値段である。

4丁目交差点から南に歩けば、
ヤマハの楽器、音楽が楽しめるエンタメスポットがあり、おもちゃの博品館もある。

一度、新橋界隈へ突入すれば 
そこはサラリーマンの聖地、いっぱい飲み屋の集合で、
たちまちおじさんの町になる。

少し足を伸ばせば、汐留界隈。
電通、日本テレビ、パナソニック、劇団四季・海がある。
更に、東へ足を伸ばせば、移転でもめている築地の魚市場に至る。

銀座の裏通りに足を伸ばすと・・・・。
そこには雑多な飲食、雑貨、ファッションの店が並ぶ。
また、画廊も多く美術品、絵画をみてあるくのも楽しい。

飲食といえば高級クラブも多く、リーマショック以降不景気といわれてはいるが、
座るだけで何万円という価格がゆるされる街である。

こんなに多様で個性的な集積はない。

一種のテーマパークのような感じである。
歴史の重み、長さの中で蓄積された、
ふところの深い銀座が、そこにはある。

ところが・・・・?
最近、銀座がどんどん変わってきている!

銀座に世界の人気ブランドが出店し始めてから久しい。
プラダ、ルイビトン、ダンヒル、コーチ、チャネル、ブルガリ・・・・・。
独自出店、百貨店内出店といろいろあるが、
銀座は有名ブランド店のメッカになっている。
ブランド店が多く集まるのは並木通りである。
西の表参道と並んでブランドの集積地となっている。

やや異質?の変化もある。

まず、
ドラッグストアのマツキヨの出店である。
あの気高い?銀座に何でドラッグが!
という違和感を皆が抱いた。
最近では、
ファストファッションの出店が半端ではない。
ユニクロ、GAP,H&M、アバクロ。
また低価格紳士服の店もふえた。
もうすぐ、ユニクロの低価格帯ブランド「ジーユー」も開店するという。
あの「しまむら」も開業予定だという。

銀座の「格」が落ちたということではなく、
高級でなくとも、
いいものならコストパフォーマンスを重視して買いたい、
という時代の価値観を具現化する業態が、
しっかりと市民権を得てきたという証と思われる。

さて、何だかんだいっても、
銀座の要所々々には、
マツヤ、松坂屋、三越、プランタン、旧阪急と老舗・新興デパート群が軒を連ね、
威厳を醸し出している。

D.銀座デパート戦争の始まり?:

数あるデパートに不足している点を付加価値化して、
満を持して、
阪急MEN‘STOKYOが誕生した。
有楽町の駅前だ。

市川海老蔵のポスター・パンフレットが目を引く。
キャッチは、
「世界が舞台の男たちへ。」

30代、40代の男性専門のファッション館である。
銀座の中で唯一ワンストップショッピングが可能な、
超高級でもない、セレブでもない、
世界で活躍している男性、一流の男性へ、
やや高めの微妙な価格帯で品揃えした男性中心の舘である。

お昼に開店して、午後9:00まで開いている。
仕事帰りの男性の選択の機会を潤沢につくった業態である。
阪急は、梅田での実績がある。
男性専門の大型店といえば、
新宿の伊勢丹メンズ館、マルイのメンズ館がその走りである。

鼻息は荒い。
初年度は、120億円の売り上げ目標という。
上記の老舗デパート、三越、松屋、松坂屋の3店の
男性ファッションの売り上げ合計と同じ売り上げである。

そして、同じツインビルの中に時間差でルミネが誕生した。

ルミネは、
JR東日本が経営する駅中ファッションビルである。
14店舗で2000億円を売り上げ、
店員のハスピタリティ、CSの技を磨くルミネスト教育でも有名である。
高収益力の駅中ビルである。

今回の有楽町出店に当たっては、
もともとのルミネの固定ファンがついており、
顧客インフラがしっかりしている。

しかし、それに頼ることなく、
銀座では25-35歳の女性を狙い、
通常の駅中ルミネとは異なった品揃えで勝負する。
初年度の売り上げ目標は何と200億円という。
旧西武百貨店の4割増の売り上げという。

両店は、同じツインビルの中で、
メンズとレディズを隣あわせとなって、
カップル、夫婦の買物の相乗効果を狙うという。

もともと、この有楽町のこの場所には、
松竹があり、朝日新聞の本社があった。
このツインビルの大家さんは松竹、朝日新聞である。

今や、有楽町界隈は、
若い人中心の大ファッションスポットに変貌した。
立派な銀座の玄関口となった。
時代の流れを感じさせる。

銀座の背景地を見ると、
北には丸の内のオフィス街がある。
最近は丸の内、東京駅の八重洲エリアからも人が銀座へ流れてくる。
八重洲ブックセンターは銀座から目と鼻の先にある。

銀座は人の集積地である。
銀座には人を楽しませるエンタメ(感)の集積がある。

時間の経過とともに出来上がってきた街の魅力が、
人だけでなく、物を、情報を、お
金を引き寄せる。

銀座は、生きている。
若旦那衆、マダムの成熟した街という雰囲気を残しつつ、
若い人でも、男の人でもOKの、
新しいたたずまいの集客マシンに変貌した。

誰もがチョット「新・銀ブラ」出来るいい街になった。

E.ブランドダイナミズムから見た銀座とは:

ブランドには、以下の法則がある。
ブランドの間の関係性についての法則(考え方)である。
もっと簡単に言えば、
ブランドの競合の中には、
3つのダイナミズム・メカニズムがビルトインされているという考え方である。

・クラスター(頻度)効果、
・正則効果
・順位効果

クラスター効果:
たくさん集まるとそれがパワーとなって、
マーケットへのアピール力が増し、
お互いに相乗効果が生じ、両者とも売り上げがUPする。
(「協争」と呼ばれる原理が働く/よきライバルとして、競争しながら互いに伸びていく感覚と思えばよい)

正則効果:
競合が増えると限られたマーケットを喰いあい、両社とも売り上げが減少する。
また、価格競争がおき収益を大きく圧迫する。

順位効果:
あるカテゴリーの中で、
・競合数が何個あり、
・そのなかでシェア等の順位が何番か
でそのブランドの強さがきまる。
競合数が適度にある中で、順位を上げることがブランド戦略の大切な目標になる。
逆に言えば競合の少ないジャンル、エリア、価格帯へ、
オンリーワン・ファーストムーバで進出することが望ましい。

今回の銀座の阪急メンズ館、ルミネはお互いの棲み分けもよく、
かつ夫婦、恋人、家族をうまく同じビルの中でとりこむことができ、
クラスター効果を得ることができそうだ。
また銀座全体で見ても、この魅力的な店舗が銀座全体の魅力を高め、
銀座の回遊性を心地よくし、回遊の人数も増え、
銀座全体にクラスター効果という恩恵をもたらすことになる。

この稿おわり

追記:

ひとつトピックスを!
「有楽町」は、「銀座である」?
という市民権は得たのだろうか。
以前西武百貨店がこの地に店舗を構えた時は、
地元の人は、この店舗を西武百貨店の銀座店と呼ばせることを拒んだという。

今回でも、両社は「有楽町店」となっている。
有楽町と銀座は明らかにひとつの超・大商業集積であり、
実質的に有楽町は銀座の玄関口である。
お互いに首都圏、海外、地方の生活者を呼んで、楽しんでもらう、
という利害では一致している。

それでも有楽町店とは呼べない?!
銀座という由緒ある街の繁栄を守る最後の砦としての有楽町ではあるが、
やはり銀座とは呼ばせてもらえない。

100年後の銀座はどのような変貌を遂げた街になっているのだろうか?
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