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■新年の思い!パンダ、シャンシャンの差別性?それはマーケティング&ビジネスの原点、でも誤解だらけ!

2018年01月13日 | Weblog
■新年お思い!差別性?それはマーケティング&ビジネスの原点、でも誤解だらけ!

A.新年のテーマとして、差別性の本質とは:

新年あけましておめでとうございます。

新年!
自分はどうこの一年をやり抜こうか、他社に対してどう対抗しようか?
・・・・・・といろいろと考えることが多いかと思います。
・他社と比べての自社の価値とは?
・自社の商品・サービスの価値とは?
・自分はどんな個性のビジネスパースンか?
年頭ということもあり、新ためて差別性とは何か!?
を考えてみたいと思います。
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STPというマーケティングワードがある。

マーケティングを考える時の基本の基本である。
セグメンテーション、ターゲッティング、ポジショニングの3つを指す。

・セグメンテーション:マーケット全体を一律に攻略することはほとんど出来ないので
資源の集中投下のために、マーケットをいくつかに区分すること。
区分する視点はデモグラフィック(属性)、サイコスタイル(心理)、行動変数(具体的なマーケットにおける行動)の3つ
・ターゲッティング :区分された各セグメントの中から優先的なセグメントを決定し
そのセグメントに属する人・シーンをプロファイリングすること
・ポジショニング  :そのセグメントの中のコアターゲットの求める価値を見える化すること

では、この3つを有機的に組み合わせてどんな「解」を得ればよいのか?

それは『差別性』といわれるものである。

もう少しきっちりいうと『ヴァリュープロポジション』と呼ばれるものである。
ヴァリュープロポジションとは、「競合にない、自社だけの戦略的な差別性」のことをいう。

差別化作業とは
このセグメントの、こんなターゲットに、こんなポジションの価値で「差別化」して、
アピールしよう、というストーリーを決めることである。

その「差別性」の品質、即ち良し悪しは、
生活者から見て明確な差が一目で感じられるか、
その差から生まれる市場に収益性がある、即ち社会への貢献・自社への貢献があり利益を生むか?で判断される。

収益性があるかどうかは、社会に認められたかどうかというバロメーターである。
社会に、市場に認められた結果が収益という形でマネタイズされる。

バリュープロポジションは、マネタイズへの金の卵である。
価格がめちゃ安い!品質がメチャ凄い!・・・等々
何でもいい。
とにかく、生活者から見て、
差がわかりやすく明確かどうかがポイントとなる。

B.シャンシャン・上野のパンダのあかちゃんの名前、その発音の差別性とは?

ここでトピックスをひとつ。
昨年、中国外務省のおちゃめで、かわいいと評判の女性報道官・華春瑩女史と日本人記者との面白いやりとり???があった。

以下記事の抜粋。
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2017年12月20日、観察者網は、中国外交部の華春瑩(ホア・チュンイン)報道官がジャイアントパンダのシャンシャンに関する日本人記者の質問を聞き間違えて笑顔を見せる一幕があり、日本のネットユーザーから「ちょっと萌えた」との声が出たことを伝えた。
華報道官は19日の外交部定例記者会見で、「上野動物園でシャンシャンが公開されたことについてどう思うか」という日本人記者の英語による質問に対して「日本と中国がしっかり向き合い、日中間の4つの共通認識、4つの共同文書に基づいて関連問題を適切に処理することを望む」と回答。質問内容とかみ合わない答えに、中国人記者が「パンダのシャンシャンですよ」と説明、華報道官は「ああ、あのシャンシャンね。私はてっきり……」と屈託のない笑顔を見せた。その様子に、現場からも笑い声が出た。
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日本人記者が
上野動物園の4カ月のパンダのあかちゃん・シャンシャンが
一般公開がされることになったが
どう思うか?と聞いた。

女性報道官は、
上記のようにとんちんかんな?発言をした。
皆、きょとんとしたというお話である。

実は
シャンシャンという発音は、当時の杉山外務事務次官の杉山という名前の中国語発音とほとんど同じということから来る誤解だった。
日本人記者の発音があいまいだったので
シャンシャン(パンダのあかちゃん・シャンシャン)をシャンシャン(杉山さん)
と聞き間違えたのだ。
杉山のしゃんしゃんはSHAHSHAN、パンダのしゃんしゃんはXIANXIANということらしい。
いづれにしても日本人はそれを判断できないし、しゃべれないことからくるエピソードである。

この逸話、
「すこしの差別性」は、じつは本当の差別性にはならない、
ということの比喩として紹介させてもらった。

マーケティングの世界でも同様である。
小さな差別性を、「差」と考えて押し通すというマーケティングはうまく機能しない。
利益をもたらさない、
かえって競合との戦いを紛らわしいものにし、勝負の行方を見えなくする。
決して優位なポジションを獲得することは出来ない、ということが多い。

生活者は
少しの差を「差」と認めるために労力をかけて商品を勉強するということはない。
コモディディティ程その傾向が強くなる。
少しの「差」はメーカーサイドの独りよがりに終わる可能性が強い。

C.差別性の確保への姿勢について:

差別性の取り方で、決してしてはいけないこととは?
アリバイつくりの微妙な差で
何となく差をつくったというような振りをすることである。
例えば、社内稟議を通すために、
マーケティングの教科書にある差別性の視点が欠かせないので
無理をして差別性をつくった・・・・、
というような差別性はアウトである。
本当は
差がないものは差がない、少しの微差しかない、
という前提でどうマーケティングを組むか、
が議論されなければならない。

差別性は逃げで使われることが多い。
強い敵にまともに立ち向かっても勝てない、
として、何とか強引に小さな事柄を
ことさらに差と称してポジショニングするというようなことは害あって益なしである。
これは何としても避けなければならない。

例えば
数学的な検定の有意性を測定して
5%のリスク範囲で、異名だが差があるという論理構成は自殺行為である。
数学的な微差の有意性は
生活者にとっての有意差とは無縁のものである。

上記の話は
差別性は必ず必要か?!
差別性がないとマーケティングはできないのか?
という根本的なテーマを投げかけてもいる。

現状で微差しかないものは、その空間での差別性をあきらめて、
別の系を取り出して、全く新らしい差別性を探し出す、
もしくは
新規性というブルーオーシャンへ船出するような別の差を付加し、
チャレンジングな次元でクリアすることが求められている。

D.改めて数学的有意性のリスクについて:

統計的に見て、ある2つの数値の差があるかないかは、
重要な話である。
差があれば独自の道をいける。

例え微差であっても
数学的な優位性を認めて優位な方をとり
その差を信じてばがりがりと事を進めてもよい。
ひとつの考え方である。
数学的な補償がされているから、
確かにマーケティング戦略の正当性を担保している、
という側面は持っている。

しかし数学的な僅かな優位性というのは
生活者の目線では、強い意味は持ちにくいということも多い。
生活者の中では、その有意差はほとんど認知されないことが多く、
それで差が保障されたということにはならず、
紛れたままでマーケティング、コミュニケーションが進み、
なかなか収益をもたらす状況まで至らないことが多い。

生活者の素人の目線で見たときに
差が生じていない状況では、とても敵とは戦えない、
ということは基本の基本として押さえておく必要がある。

もし、差がなければ、
本格的なニッチなポジションを探すという努力とセンスが求められる。

ニッチは
上記のような逃げの差別性ではなく、立派な差別性である。
ニッチとは・・・・
プレーヤーが乱立するマーケットで、
皆が忘れている価値、
規模が小さくて大手が手を出さないが個性的な価値
を示すポジションのことをいう。

但し、基本は、
超・個性的で、一部の生活者から称賛の声があがり、
その小マーケットでは、一番でなくてはならない。

少し古い話になるが、
アサヒのスーパードライも発売当初は完全なニッチとして出発しているが
一部のビール好きの人々にとっては、半端ないNO1、ONLY1であった。
その後、時代の嗜好性のメガトレンドにのって、
あれよ?あれよ?という間に本当のNO1になってしまった。
しかしここへきて超メガブランドであるスーパードライもすこし陰りが出て来ている。
次の時代のビールとは何か?
という面白い局面に入ってきているように思われる。

話を戻して・・・・、
体力のある企業であれば、ニッチという選択をせずに、
強い競合の本丸へ真正面からしっかりと立ち向かい、倒すという
気概も必要である。

大きなメーカーが、あるマーケットへ新規参入するときに
そこのシェア一位の強いプレーヤーへ
真正面から物量作戦で堂々と攻略していくことがよくある。
大量のTVCM,大量の配荷、フェース数・・・・・・。

成熟したマーケットでは確かにきつい側面もある。
しかし、成長マーケットであればやり様によってはうまくいく。
これが得意なのがサントリーである?!

E..差別性の種類:

差別性には様々な次元がある。

・新規、優位、差異というレベル感の次元
・機能、情緒、人間という価値の次元
・トレードマーク、ハートマーク、ラブマークという本能の次元
・本質、選択、行動というマーケティング行動の次元

業種、商品によって、次元の取り方は異なる。

差別性の中で。最もポピュラーな次元、
機能、情緒、人間というべクトルについて触れる。

・まず機能的な差別性であるが、
技術やノウハウや品質感で誰が見てもわかりやすい差別性である。
これがあれば第一段階の差別性は成立したことになる。

経済学者シュンペーターが言うところの、
「技術的な創造的破壊」は
最大・最高の機能次元の差別性となる。
例えば、話は大きくなるが、自動運転のくるま、そして電気自動車は、
いままでの自動車のパラダイムを大きく変えてしまうもの凄い創造的破壊である。
生活、産業構造を変えるもので、今までの企業優位性を根底から覆すものである。
正に破壊というにふさわしいものである。

・次いで情緒的な差別性は、
その商品・サービスから感じる気持ちや感情における差別性である。
商品からオーラが出て、そこから生活者が何らかの情動を刺激され、
気持ちの高揚感を感じたときに、情緒価値が生じたという。
ブランドオーラという概念で呼ぶこともある。
いま、マーケティングの世界では、もっとも大切な差別性として重要視されている。
消費財がコモディティ化され、機能での差別性が取れなくなってきたときの
よりどころとなっている。
しかし、一方では、単なることば遊びになる可能性もあるので要注意である。

また、視点を5W1Hにおき、時間をかけて独自のブランド体験シーンをつくることも
情緒的な差別性の一つだが、
それを維持し増幅させるには手間とお金がかかることを覚悟しなければならない。

また、「ルーティン」という情緒的な差別性の取り方もある。
商品のことではなく、
その商品カテゴリーの行為そのもののインサイトを語ることで生活者の心をグリップするという方法である。
例えば洗剤というカテゴリーで、洗剤の差別性を訴えても
各社それなりの性能・機能を持っている中では、
なかなか商品へのロイヤルティを獲得することは難しい。
そこで洗濯という家事に着目して、
そのルーティン的な家事行為に対する主婦の気持ちを代弁することで、
主婦の気持ちを掴もうというものである。
商品のPRはしないで、その洗濯という家事を日々黙々とこなす主婦の辛い・気持ちに
寄り添い、語りかけることで、
結果として主婦の、メーカー、商品へのロイヤルティを獲得するという方法である。

・最後に人間関係・心理的な差別性について:

これはややあいまいな概念である。
「自己表現価値」と呼んでもいい。
ある商品を買う、使うことで、自分の個性が発揮され、
他人に対して何らかの関係性の中で価値を見出すことをいう。

例えば
ベンツを買って、社会的なステータスを感じたり、
ある時計を購入したときに、
自分が所属する集団の中で、自分のポジションを確保する、
そのなりたい自分に近づくことが出来たと感じたたりする
そのような価値を指す。

その商品を使う時に生じる、人同士の関わり合いについて関与し
差をつくろうというものである。

F. 最後に、差別性のマーケティング的なメリット:

差別性により得られる利益は大きい。
最終的に、商品は、
その象徴点、連想点を通してイメージが蓄積され、ブランド化される。

商品はヴァリュープロポジションにより、その象徴点、連想点が明確になり
市場の生活者の称賛が得られ、サステナブルな利益がもたらされる。
因みに、
象徴点とは:その商品の機能的な特徴を一言で表現したもの
連想点とは:その商品のことを聞くと、最初に思い出す、クリエイティブ的な表現のこと
例えば、色、形、触感、キャラクター・・・・等
のことを言う。

マーケティングで重要なことは
何といってもオンリー1でブルーオーシャンに乗り出し、
確固たる橋頭保(ポジション)を作ることである。
拙速でも、多少のリスクがあっても最初にやることが大切である。

まずはオンリー1でスタートして、そのマーケットが面白いとなると
少しずつ競合が現れて来て
それら複数のプレーヤーでマーケットが盛り上がり、規模が大きくなり、
各社が利益を享受できる状態になる。
成長初期では、競合同士が醜く争う競争原理より、
「協争」というお互いに協力して切磋琢磨しマーケットを大きくするという、
いわゆる「良きライバル」というマーケティング原理が生じてくる。

その中で、
オンリー1からNO1へ移行し、トップであり続けるためには、
象徴点、連想点による、
差別性(バリュープロポジション/競合にはない戦略的な差別性)が不可欠となる。

マーケティングで優位であり続けるために、
『差別性』は唯一無二のマーケティングのツールということが言える。

この稿おわり

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