日経新聞・MJ・日経ビジネス ・宣伝会議に学ぶ商品マーケテイング理論・・・篠原まーけブログ

日経新聞、日経ビジネス、日経MJ、宣伝会議の商品記事をケーススタディ化!
事例研究でマーケティングスキルのUPを!

■小学館の学習雑誌、小学五年生、六年生の廃刊、市場退場の意味!?

2009年10月31日 | Weblog
■小学館の学習雑誌、小学五年生、六年生の廃刊、市場退場の意味!?

A.雑誌戦争の厳しさ:

小学館の学習雑誌「小学五年生」、「小学六年生」。
87年の歴史の幕を閉じて休刊になるという。
雑誌名は小学館という社名の由来でもあった。

インターネット、携帯メール、アニメ、ゲーム・・・、
と子供達の生活にも、さまざまな刺激的な情報が溢れてきて、
部数減少に歯止めがかからなかったという。
普通の大人の雑誌マーケットと同じようなことが学習雑誌の世界にも起こっていた。

石油ショックの年(1970年代)には「五年生」が60部、「六年生」が50万部の最高部数を記録した。最近では5-6万部にまで落ち込んでいた。ジャニーズタレントの起用など勢力盛り返しをはかったが徒労に終わった。

なぜ、同雑誌は休刊に追い込まれたのか?

・子供の活字離れ、本離れ(親世代がそもそも活字離れしている)
・時間の使い方の多様化が進み雑誌に時間を使えなくなった。
(塾、習い事で忙しい、ゲーム、ネットも忙しい/時間がないから友人とはメールで擬似・バーチャルコミュニケーションを行う。

等々いろいろと理由はある。

しかし、休刊の根本的理由、
・それは雑誌が面白くないことに尽きるのではないか。

B.今後のコンセプトの方向性とは?:

創刊当初の話。

小学校の教育では、学年が一年ごとになっているのだから
あたえる本も、情報も学年別に吟味したものを与えなければならないという。
発想からできた本だという

当初は5-6万部
石油ショック時には60万部に達した。
今、創刊当時の部数に戻って終焉を迎えた。

そもそも、子供に情報を与えるということが、もう古い考え方なのかもしれない

ネット、メール、TV、ゲームで子供達の情報生活は、能動的に、積極的になり、
勝手に友人同士でインターラクティブに進んでしまっている。

子供とはいえ自我がでてくれば、
自分の感性で自分の欲しい情報を自分でとりに行く。

上から(親から、学校から・・・)与えられた情報は、
自分の感性にはほとんど合わないのだろう。

つまり、小学五年生、六年生がうまくいかなくなった理由は極めてわかりやすいのだ。

上からの目線の、あてがわれた情報、それも学習という硬派な内容ではどう見てもうまくいくはずはないのだ。
押し付けの学習は、塾、学校でもうたくさんというのが、子供たちの本音であろう。

また、社会背景から見ても、

・TVの情報が半端でなく、良くも悪くも刺激的で面白くなっている。

・インターネット、携帯でのメールでの情報のやり取りが刺激的で、
インターラクティブな対人関係性があって面白くなっている。

・社会的にみて精神的な成長が進み、ませてきている。
深窓の令嬢的な?まじめな雑誌を本人が読みたいという気分はなくなっている。
(親は読ませたいかもしれないが)

・もっと原理的な話をすれば、男女ジェンダーフリー誌は機能しない。
小学生の高学年といえば、男女を意識して趣味嗜好が全く違ってくる。
小学上級生の女の子はといえば、もう女の子ではなく女になってきているのである。
また、学習内容に男女差はないとしても、
その学習方法や学習のスタイルには男女間の
個人差がかなり出てきているのである。

つまり、超若年(小学生の女性!)の女性誌が求めらているのである。
同様に男性誌が求められているかも知れないのである。

まだ、低学年向けの学習誌ががんばれるということは、
上記の休刊理由が表面化していないだけなのだ。

読みたいものへの自己欲求がなく、親が与えれば子供は読む
というパラダイムが生きているからである。
子供がませてきて、自分で雑誌を選ぶようになれば、低学年の学習誌も風前の灯であろう。

この稿おわり

余談:

今、小学生5,6年の間で「ニコプチ」が大人気という。

新潮社が出している。
小さな女の子の反応がよくて、この雑誌の創刊にはまってしまったという。
41歳、編集長のおじさん曰く!

どんな内容かというと、

・秋コレクション、夏のトレンド、
・パーティ特集
・母娘のイケアの使い方
・男の子の見方、八方美人タイプはダメとか!
・学校へ行くときの着まわしの仕方

と大変楽しそうは内容である。

かわいい女の子がランドセルを背負って出てくる、
かわいらしい雑誌である。

発行部数は13万部という
大人気である。
特集のテーマは、10代後半、20代の女性ファッション誌とほとんど同じである。

女の子は進化している。
男の子よりませている。
女の子の専門雑誌がファッションを機軸に誕生したのは極自然なことである。

休刊が決まった小学五年、六年生のコンセプトは、
基本的には、ニーズからずれていた、そして敗れたということになる。

小学低学年向けは、まだ刊行が続く。
今、「ニコプチ」にはまっている女の子も、
低学年の時には、普通に小学00年生を読んでいたという。

活字世代の筆者は応援したいと思う。
低学年学習雑誌には、是非頑張って欲しいと思う。
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■ユニクロは異常値の企業か?たまたまうまく言っている企業なの?

2009年10月25日 | Weblog
■ユニクロは異常値の企業か?たまたまうまく言っている企業なの?

A.今のユニクロの状況:

ユニクロは一人勝ちである。
7000億円弱の売り上げ、10%超の伸び、
1000億円強の営業利益、20%張の伸びである。

果たして、ユニクロという企業はどんな企業なのか?

以下思いつくままに列挙してみる。

・製造・販売企業(今はやりの業態/ニトリ、H&M・・・)
・ベンチャー企業
・グローバル企業(欧米での展開に熱心)
・カリスマオーナー企業(柳井CEOの半端でないエネルギー)
・ハイテク企業(フリース、ヒートテック・・・)

・アンビシャス企業(5兆円の世界一のアパレルを目指す)
・インテリジェンス企業(人の知恵、アイデアを生かす)
・行動系企業(思いついたことはやってみる)
・現場重視企業(販売の前線で試行錯誤)
・大量生産・大量販売企業(多店舗網を駆使して売れ筋を大量にさばく企業)

・時流企業(時流に敏感企業)
・不景気対応企業(安くていいものを供給)
・デフレ社会対応企業(いいものどんどん値下げ)
・HI/CP企業(ハイコストパフォーマンス商品)
・高品質企業(カジュアル衣料に性能、品質を持ち込んだ)
・流行変化敏感企業(趣味、気分、体型の変化に機敏に対応したい女性を代弁)
 服は買っても着ない一回だけきるということがよく起こる。
だったら安くていいものを、状況によっていくつも買って着まわしたい。

ユニクロは、今成長している成長企業のいい点をすべて持っている企業である。
大成長して、大もうけしている企業とは当然そのようなことになるのだろう。
当たり前のことだが、改めて痛感した。

B.ユニクロの宿命:

ユニクロは今が旬である。

頂点かどうかは今後に掛かる。

まだ、5合目でさらに上を目指すことになるのか、はたまた下り坂になるのか?
すべては、今のように高品質のハイテクウェアを出し続けていけるのか?
に掛かっている。

少しでも話題を取るヒット商品が出てこないと、
すぐ企業のパフォーマンスイメージは陳腐化する。
これまでが凄すぎるからである。

また、アパレルはなんだかんだ言っても、かっこよさ、スマートさが求められる。
一度勢いがなくなると何か冴えない感じがしてきてしまい、
人の目は潮が引くように去っていくことになるだろう。

ユニクロは勝ち組であるが故に、勝ち続ける宿命を背負った企業になってしまった。

成長の法則は、2つある。

・一つ目は、店舗を増やすという一次線形の単純拡大路線である。
国内、海外は問わない。
但し、リスクも大きい。
ヒット商品が出ないと固定費が大きな負担になりたちまち大赤字になる危険性が高い。

・二つ目は、ヒット商品をつくるR&D企業としての理念と行動力を持ち続けることである。
(多店舗を維持するためには、ヒット商品を常時持ち続けなければばならない、
という宿命を負うのである)

二つは一体不可分の関係にある。
ユニクロは、実はこれからが本番なのである。

C.ユニクロという業態の本質:

実は、ユニクロの本質はR&D企業である。

前述したようにユニクロは製造・販売業態であるといわれる。

単純な製造業でないことは事実であるが、本質はものづくり企業である。
ものづくりとは狭い意味での服を作る(商品開発)という意味でもあり、
広い意味では売り方を作る(販売開発)という意味でもある。

店というお客様接点をもつことで、
お客様からのレスポンスを
即経営に生かす、生産、研究開発に生かす、
ことができる。

超スピードが信条である。

ユニクロは、ファッション財をファジーなアナログ的な財としなかった。
感性型商品のように、
あいまいに勘に頼るマーケティング、R&Dをしなかった。
アパレルという業種を合理的に処理して、経営を安定させた。

似た企業を探してみた。

小林製薬が近いような気がする。
意外と思うかもしれないが、
小林製薬のアイデアベースで生活に密着した形でアイデアを商品化することの執念、マネジメントはよく知られている。

実は小林製薬も昔は問屋だったという。
世の中に敏感でなければ、扱い商品の在庫が積み増してしまい、
また仕入れに弱気がはいるとチャンスを逃してしまう。
社会に対するアンテナが間違いなくいいのである。
また、アイデアを商品化するセンスがあり、
最後は商品という形に纏め上げる執念も強いのである。

従って、ユニクロは製造業として、モノを作り続けなければならない。
ヒット商品をあくなき生み出さねばならない。

D.ユニクロ成長の源泉:

ずばり、柳井CEOの執念である。

あくなき事業欲といってもいいだろう。

戦後、日本を引っ張ってきた、松下、ソニー、ホンダ、京セラ・・・のオーナーと同じような事業欲でぎらぎらと燃えたぎったカリスマ経営者である。

以前、柳井CEOは引退的なポジションに引き下がった。

玉木氏が社長になり、それなりの実績を上げていた。
しかし、オーナーの柳井氏から見るとスピード感がなく思え、
いらいらしていたようだ。

一兆円企業を目指して復帰ということになった。
玉木氏は特に落ち度があるということではなかったようだ。

その後のユニクロは快進撃を続ける。
グローバル企業として世界に店舗網を築こうとしている。

5兆円の売り上げを目指すという。

是非実現して欲しいものと思う。

追記:

しかし、何十年かすればユニクロも間違いなく成熟化する。
そうならないためには、シュンペーターのいうところの創造的な破壊をし続けることが不可欠である。

5年、10年経ったら全然違う商品、店構え、デザインになっていた、
場合によっては店舗のストアアイデンティティが別の方向に向いていた、
というようなことが起こっているようでないと、
恐らくユニクロは市場から退場することになるであろう。
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■ 新車販売のパラダイム変化、ハイブリッド・環境車定着の意味!

2009年10月17日 | Weblog
■ 新車販売のパラダイム変化、ハイブリッド・環境車定着の意味!


A.車の責任:

車はダイナミックに変わる。

車は財の頂点にある。
生活、仕事、公共・・・・・となくてはならないインフラ財である。
車の交通事故による社会的、人間的な負担はもちろん大きい。
社会全体で克服しなくてはならないことである。

しかし、そのマイナスを凌駕する利益を社会にもたらしている、
という側面も認めなくてはならない。
世界では今から車の恩恵を受けるであろう地域がまだまだ多い。
アフリカ、インド、アセアン・・・

車産産業への期待は大きい。
が責任も大きい。

車は生活、謝意の隅々まで入り込んである。
当然多様な顔を持つ。

商品学的にいえば、もちろん耐久消費財である。

しかし視点をかえればいろいろな財の側面を持つことがわかる。

機能財(運搬を担うインフラ財)、
複合システム財、
社会・公共財、
ファッション財、
レジャー財、
嗜好財、
緊急、エマージェンシー財、
等々

従って車はいろいろな影響を社会に与える。
また、逆に受ける。

だから、車はダイナミックに変わる、変わらざるをえないのである。
車の責任がそこにある。

B.車はトレンドセッター:

このところの車の状況は大激変である。

‘08年以降のリーマンショック以来の世界規模の需要減は大きすぎた。
車のマーケットでも恐慌的な大不景気がおこった。

この4月以降、生産規模は持ち直しているが、2-3年前の勢いは全くない。
あの世界一の生産量を誇るトヨタも大赤字である。
GMはといえば、要因は多少違うがアメリカ政府の管理下にはいった。

車産業は、かくも社会の話題になる。

売れなければ、、なぜ?
売れれば、なぜ?
車が動けば、周囲に影響を与える。
何をやっても、実に絵になる、話題になる。

最近は環境問題で話題を取っている。

軽が減り、ハイブリッドが増えた、
政府のエコ支援で環境車全体が伸びた。
逆に、軽が相対的にお得感がなくなり減った。

プリウス、インサイトのハイブリッド車は、4-9月の新車販売台数の9%に達した。
プリウスは銘柄別でトップである。
何と10台に一台がハイブリッドになる。ストック全体で言えば、まだ1%ぐらいだろう。
ハイブリッド以外の減税対象エコカーも好調だった。

どうも節目が変わってきたようだ。
軽全盛の時代ではなく、
ライフスタイル、マインドスタイルに合わせた乗用車選びが進んでいる。

販売の大勢は、まだ軽である。
登録がいらない、使い勝手のよい「軽」はまだまだ根強い人気がある。
しかし、環境の時代を反映して、エコマインド志向の人に受ける「環境車」が、
タイムリーな政府支援にも支えられて急伸した。

車がトレンドをつくる。
車は社会の進むべき方向性を示唆する。

C.環境車のマーケティング的な意味:

環境車、特にハイブリッド車が伸びた理由は何か?

・経済性(半端ではない燃費のよさ)
・スマート・クールさ(時代に即応したファッション性)
・購入時のお得感(低下からの値引き感/セール心理感)
・流行感(世の中の環境ブーム、勝ち馬に乗りたいという、バンドワゴン効果の現れ)
・環境効果感(実際に環境に良いという社会貢献感)

の5つぐらいに集約される。

くしくも鳩山総理は、国連本部で演説し、日本国のCO25%削減を表明した。
電気自動車も実用に向かい、インフラ整備も走り始め
車産業は、だんだんと環境対応産業としての実態を備えつつある。

過去、車産業は、経済を引っ張り、生活・社会の近代化に貢献した。
個人の満足度を増幅した。
運搬手段、ファッション手段、レジャー手段として・・・・・社会、生活に影響をあたえた。

車産業は、今いろいろな意味で、新たなリーディング産業へと変貌しつつある。

今世界は、産業革命以来の大革新期に入っている可能性が高い。
環境はその中心的なエンジンである。
そのような時代の節目に、車の持つ意味は大きい。

車は産業構造の頂点にある。
あらゆる産業の粋をあつめて成立している産業である。

今でも車の価格の3-4割はITである。
車は、機械ではなく情報商品である。
トヨタのIT技術者の採用人数は、
あまたのシステム企業を凌駕して日本で一番だという話もある。

車から目を放せない。

車のマーケティングはいつの時代でも・・・・
面白い。

環境車の将来は明るい。

この稿終わり
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■ エコナ撤収、花王が抱えていた真のリスクとは?

2009年10月14日 | Weblog
■ エコナ撤収、花王が抱えていた真のリスクとは?

A.エコナ問題の意味:

エコナは花王の食品事業の目玉商品である。
脂肪がつきにくいという特質で「特定保険用食品」の認定を受け、
ヘルシー志向の生活者に受容されて、今食用油市場ではトップのシェアを持っている。

そのエコナの発がん性物質含有問題が波紋を投げかけている。
花王は状況を見極めて、9月16日に出荷を停止した。
消費者にとってはきわめて不安な話である。

しかし、詳細をみると、
現状では、疑わしいというレベルにあるようだ。
発ガン性物質が含まれているということではなく、
分解されると発がん性物質になる可能性がある
「グリシドール脂肪酸エステル」
という成分が普通の10-200倍入っているということらしい。

民主党政権の動きは早かった。
消費者庁福島大臣が音頭をとって、この製品について検討を加え、
「特定保険用食品」の認定をはずす方向で進んでいたという。
その状況を受けて、花王は自ら「特保」を自主的に返納した。

福島大臣の迅速な対応は、消費者の安全を考えたら当然だし、
民主党政権の生活者重視というコンセプトからしても仕方のない対応だと思う。

しかし、一方で「特定保険用食品」の認可を出したのは政府である、
という事実も重い。
花王だけが悪いというレッテルを貼られ、
様々な損失を蒙るということでは済まされないようにも思われる?

「発がん性が疑われるというレベル」で企業に黒的な判断を下すことの意味、影響は
もっと議論されていいと思う。

行政としては、製造業者全体に反省、注意を喚起するという狙いがあろう。
先取りして消費者の安全を確保するという意味もあろう。
また、花王をいじめるということではなく、
むしろ大事に至る前に花王を救うという意味もあろう。
いずれにしても、いろいろな観点から最終判断が下されることが、
望ましい。


B.エコナ問題のマーケティング的な影響とは:

話はかわるが、
まず、この案件の花王へのダメージを微分してみたい。
以下、3つに微分されるように思う。

ダメージの1:収益低下

花王のエコナの売り上げは200億円、一兆円超企業の花王からしてみれば、
量的なダメージはほとんどない。
しかし、エコナの200億円という売上金額は、
昨今の新製品の売り上げを見たとき、10-20億円あればそれなりのヒットといわれる
時代に半端ではない金額になる。



ダメージの2:花王の信頼イメージの損失

実はこれが一番大きい。
花王の食品類はもう買えない。
もしかすると洗剤でも同じことが起こるに起こるのでは、
と主婦が疑心暗鬼になってしまう可能性がある。
これはボディブローのようにじわじわと花王の業績に影響してくるかもしれない。

ダメージの3:インナーモラールの低下

エコナにかかわったインナーの人々のこころが萎えてしまう。
全社的に花王のベンチュアマインドが萎縮して、冒険的な開発作業、マーケティングのチャレンジ精神がなくなってくる可能性が高い。
特に口に入る食品については、必要以上に慎重になる力(羹に懲りて膾を吹く)がしばらくは働くだろう。

ダメージの4:マーケティング全体の損失

このメガヒットをみすみすなくするというのは、
マーケティング的観点から見て花王という一企業の問題を超えて痛手である。
大型ヒット商品がでにくい昨今、
エコナは新技術で、ヘルシーという旬のマーケットを切り開いたという点で、
意義のあるマーケティング行為であった。
結果として、それが否定されたということは大きい。

C.エコナ問題のマーケティング的な本質とは:

次に、別の視点、研究開発的な視点を提示したい。

界面活性剤のプロ・花王が、
その基礎技術をつかって石鹸カテゴリー以外に進出したことのリスクである。
特に食品的なナーバスな分野への進出についてのリスクである。

今回の件については、以下のような見方がある。

・食品のプロからみれば事前に仔細な検討を加えある程度予測できたのでは、
・食品技術に長けた人物が見れば、ある種の勘でいやな予感がしてもっときめ細かく検討していたのでは、

というような見方が言われ始めている。

花王は、いわば食のアマチュアなので、このようなプロの観点を見逃したのではないか、
ということである。

界面活性剤の世界であれば、当然の如く、花王はこのようなリスクを未然に予期し防いだのではないか?
海面活性剤の世界では、
花王は博士号をもったあまたの人財がおり、
かつそのリスクマネジメントが充実しているはずだからである、
という論である。

素人が、新しい世界に飛び込むから怪我をする、という話と
素人だから、新しい世界でイノベーションが出来る、という話が
あるが、今回は前者の良くない側面が出てしまったということだろうか。

この話は、
企業が多角化でなじみのない業界へ進出するときには誰もが抱える、考えておかねばならないリスクを示している。

今後、企業では、
専門ではない領域には、踏み込まないほうが身のため、社会のためという萎縮した気持ちに陥る可能性がある。

追記:

以下、日経MJからの引用である。

”消費者は「発がん性物質」という言葉に敏感に反応した。
応答センターでは電話してきた一人ひとりに時間をかけて安全であることを説明したが、納得しない人が多く返品と返金に応じざるを得なかった。
花王の関係者は「日用品では考えられない反応」という。
口に入る食品では、消費者は時に理屈よりむしろ感情で動く。
花王は日用品と異なる食品の恐ろしさを思い知らされた。”

そういえば、生協で起きた中国餃子問題を思い出す。

いまだに解決されない事件である。
この事件で生協は大きな痛手を蒙った。
長年培ってきた生協ブランドの信用と信頼を大きく損ねてしまった。
生協という食の専門家にしてこのリスクである。

食の世界に新技術で挑むリスクは、創造を超えたものなのか、読み切れるものなのか?

永遠のテーマである。

この稿おわり



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■ ディズニーの顧客満足度、真のCSの姿とは?

2009年10月05日 | Weblog
■ ディズニーの顧客満足度、真のCSの姿とは?

今、CSが陳腐化して、いろいろな企業でその見直しが行われている。
ディズニーランドで、CS見直しのヒントをみた。


A.小さなトイレの真のCS:

生理現象は理屈抜きに、即解消したいと思う。
食、性、トイレ・・・・・

この連休(シルバーウィーク)で見た、ディズニーランドのトイレのCSは感動した。

私は男性なので男性のトイレのことしか話ができないが・・・・・。

人気アトラクション、スペースマウンテン前の小さなトイレでのこと。

こんな小さな男性トイレに3人のスタッフが張り付いて、
トイレしたい男性をいろいろと差配していた。

しかし、男性トイレがこれほど混むとはさすがディズニーランドである。
そのトイレはどんな様子かというと・・・!

3人のスタッフの様子とは?

・一人はトイレ前で、通行人の邪魔にならないようにお客様に並んでもらっている。
お客様をガイドしている。
何かいっている。
”個室を利用される方いらっしゃいますか!”
(個室とはおしっこではない方のこと)

・中の一人は、中の個室の状況を見て個室が空くと表のスタッフに空きを伝える。
並んでいる列の中から急いでいる人をピックアップする。
中には女の子を連れたお父さんもいて、女の子なので個室でさせようとする人もいる。

・もう一人中にスタッフがいる。
個室中心にお掃除できれいにしている。
小さなトイレに3人掛かりである。

実にきびきびしている、トイレも一種のエンタメになっている。


B.ディズニーの多様な満足心理:

小さなトイレの出来事は、
このシルバーウィーク連休に一泊ででかけた、
孫のディズニーデビューでの出来事である。

しかし、ディズニーランドは凄い。
混んでいるの混んでいないのって!?半端ではない。
さすがにディズニーだと感心してしまった。

ディズニーランドは開業から25年、ディズニーシーは開業から8年である。

何でこんなに人気なのか、
魅力的なアトラクションは1-2時間並ばないと乗れない。
ショーも込んでおり、いい場所はかなり前からとらないと満喫は出来ない。
決してよいサービスの提供状況ではない。

実は、ディズニーの楽しみ方はいろいろとあって、
この混み方でも何とか人気を維持できているのである。

ではどんな楽しみ方か?

・エリアの雰囲気が味わえれば、
という思いでみると、
あくせくしなくても楽しめるようになっている。
園内をあるくことで得られる空間の空気である。

・子供がキャラクターに会い嬉しそうな顔をすれは、
親も、祖父母も十分嬉しくなる。

・ディズニーの中では混んで大変だったとしても、
ディズニーへいったことを、家に帰って友達、家族に話せば、
それが嬉しい。

・園内で写真をとって後でみると何か嬉しくなって、
混んでいて肉体的に疲労困憊になったことも、逆に楽しい思い出になり許してあげられる。
混んでいることもひとつの思い出にさえなる。

・混んでいるディズニーを、
来場者が皆で味わっている、
時間を共有している、
との思いもある。
ある程度混んでないとディズニーの場合困るのだ。
人気のない、がらがらのディズニーなんて誰も行きたがらない。

どれもこれも全部ディズニーのブランド価値である。
いろいろと不満足なことがあっても、
ディズニーだから、人気があるから仕方がないと、許してしまう心理がある。
ディズニーのブランド価値に触れるという至福の時間がたまらないのである。
ディズニーが人気があるのはひとえにそのブランド価値による。


C.ディズニーの満足度の本質:

ディズニー空間は異次元の、夢の空間である。

何よりも、
ディズニー空間の空気に触れ、雰囲気を味わうことが大切になる。

閉じられたディズニー空間の中の、
ハード、アトラクション、キャラクター、レストラン、
ポップコーンワゴン、ゲーム、ディズニーグッズ、おみやげショップ、
にいたるまで、あらゆる空間演出要素を味わうのである。

そしてディズニーのお土産をたくさん入れたバッグを
舞浜駅から電車に乗って持って帰る風景まで、
子供が疲れて寝ている姿まで、
すべてがディズニーのブランド価値になる。

ディズニーの本質は、夢を抱かせてくれるその無形の価値である。
子供が思わず夢をみてしまうその雰囲気である。

ウォルトディズニーは言った。
夢を見続けることが使命である、
夢を見ることが仕事であると。

夢を見ることが出来るか?そのような空間か?
それがディズニーランドが追求している価値の本質である。

しかし、忘れてはならないのは、
最後になるが、サービス業の原点である顧客満足度への気配りである。

小さなトイレのCSが、意外とディズニーへの評価を支えている。
夢を見てもらう空間だから、生理現象までも徹底的に気を使うのである。

この小さなCSの積み重ねがディズニーを支えている。

この稿おわり

追記:

あるレストランが、
女性に人気があるかどうか、
リピートしたくなるかどうか、
はトイレをみればわかるという。
きれいで広くて清潔なトイレはサービス業の原点である。
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