■ 0の饗宴(競演)、ビール業界の舞台裏の面白さ!
今、ビール業界は「0」が旬である。
A.「0ジャンル」のデビュー:
まず、キリンが09年に「キリンフリー」を出した。
アルコール成分0である。
発酵というプロセスを無くしてアルコール0%ビール?を実現した。
ついで、アサヒのクリア。
その後、「ダブル0」で、アルコール、カロリーの両者を0にして上市した。
サントリーは、さらに糖質を0にして「オール0」というネーミングで上市した。
売れすぎて1カ月で販売中止となってしまった。
ビール全体の売筋ランキングで、
5つほど「0ジャンル」ビールがランクインしている。
ビールを飲めない人に、飲めないオケージョンで、
大人気である。
妊娠している人、運転中の人、スポーツをしている人・・・・・
味が抜群という。
お酒がすきな人が飲んで十分耐えられ、
かつおいしいという。
単純ビール代替で、仕方なく飲んでいる、
ということではないところが凄い。
プロの香りの聞き手が苦味といい、甘みといい、バランスは半端でなくすごいらしい。
苦味、甘味のテーストでの苦労は半端ではなく超㊙の企業秘密という。
それなりのハイテク、ハイノウハウということらしい。
ここで忘れられてならないのは、「0ジャンル」も食品である。
原点はおいしいということがなければならない。
「0」の味付けは、
ビールが好きな人が、いつでもどんなときでも飲んでビールの味が味わえる、
さらに独特な味わいも感じられるという目標で開発されたという。
それを見事にクリアした。
B.ビール業界の凄さ:
ビール業界の過去を見ると、
古くは、ドライ戦争、パッケージ戦争、価格戦争、発泡酒戦争、
最近では、第三のビール戦争と、
キリン、アサヒ、サントリー、サッポロの4社は熾烈な争いを繰り返してきた。
ビール会社が凄いと思うのは、一社が何かすると他社がすぐ追随してくるその足腰の強さ、対応力、背景にある技術・ノウハウの蓄積の奥深さである。
ビール業界は、
日本の産業界でもっとも競合が激しく、
ダイナミックで見ていてわくわくする産業ジャンルである。
考えてみればビール会社は食品会社とはいいながらも、
半端でない装置産業で重厚長大産業である。
会社規模も日本有数のものである。
また、発酵という太古の昔から自然界にある、食の原点的な技術の宝庫でもある。
ビール会社というと、ビールを扱うので身近な存在だが、
冷静に産業視点で見ると、実は生活者からもっとも遠い、装置産業の雄であり、ハイテク企業である。
C.「0」に見るサブジャンル理論:
本論にもどる。
マーケット育成期では、協争原理(協争/競争ではなく)が重要である。
「0」ビールカテゴリー(サブジャンル)でも同様である。
一般的に、サブジャンルマーケットの争奪戦では、
各社がライバル意識をむき出しにして争う。
しかし、その各社のエネルギーの総量がそのサブジャンルを活性化し生活者へマーケット(商品)を認知させ定着させる。
しかし、その後が問題となる。、
そのサブジャンルで一位となって利益を謳歌するのは一社である。
・ビール分野(=ドライビール)ではアサヒの「スーパードライ」、
・プレミアム分野ではサンロトリー「ザ・プレミアムモルツ」、
・第三のビール分野では、キリンの「のどごし生」、
・ 発泡酒分野ではキリンの「淡麗」
となる。
今回の「0ジャンル」ではどうなるのか?
ここに面白いマーケティングの鉄則がある。
カテゴリー(今回で言えば0サブジャンル)ライフサイクルの中の、
参入時期(サイクルの開拓期)と成長前期、成長開始期、成長最盛期、・・・
という節目では、
マーケティング戦略のスタンスがまったく異なる、
という鉄則である。
「0」カテゴリーでも同じである。
つまり、キリンが最初にでて、プライオリティをとったとしても安穏とはしていられない。
すく到来する次の節目(成長初期)では、マーケティングのパラダイムは大きく変わる。
その変わったマーケティングのリンク(フレーム)での戦い方はまったく異なる。
いわゆる6Pが変わる。
プロダクト、プロモーション、プライス、プレース、
ポジショニング、パーソネル(ターゲット)が違ってくる。
商品に求められるニーズが変化するからである。
まず、マーケットに大量消費感がでてくる
ターゲットが拡大し、
様々な属性の人、様々な飲用機会がでてきて、
マーケットシーンが多様化し、きめ細かい施策が求められてくる。
例えば、広告宣伝、販促が俄然多くなる、
プライスの争いも厳しくなる(価格低下がおこる)
チャネル・売り場での陳列、場所、POPなどもガラッと変わる
競合(マルチプレーヤー)の出方も多様になり、
それに伴ってマーケティングの施策が多様になり、
かなりきめ細かいセンスも必要になる。
もちろんスピードも要求される。
当然ながら、商品の技術開発・進化への要求水準、スピードも俄然厳しくなる。
要するに、
いままで一番で、オンリーワンで上市したということ、シェアが一番だった、
ということには、
何の意味もなくなるということである。
(これが重要な点!!!)
その節目々々で最適、最高のマーケティング戦略を組んだメーカーが、
次のステージでは勝つという鉄則である。
(それ以前にたとえ負け犬だったとしてもチャンスはある!)
過去には、
日産サニーに勝ったトヨタカローラの例、
キリンラガービール、各社のドライビールに勝ったアサヒスーパードライの例
いろいろな教訓がある。
この稿おわり
追記:予断として!
ノンアルコールビールの20歳未満の人への訴求をどうするか?
大手4社ではなかなか出来ないかもしれない?
10代に飲酒への習慣をつけてしまうことの是非が問われかねない?
等の背景もありそうだ。
自主的規制も働くように思われる。
マイナーな地ビール会社がゲリラ的に出すということはあるかも知れない。
パッケージを完全に変えて、見た目はビールのような雰囲気をなくし、
清涼印象のような風情をかもしだして販売するという、
グレーゾーンでの上市は時間の問題かもしれない。
実際には、ワイン(お酒)と果汁飲料(通常飲料)で雰囲気の似ているものは多い。
お酒と普通のドリンクの際を微妙になくしている。
清涼飲料としての、ビール風ソフトドリンクの可能性は、
論理的にはかなりあることになる。
恐らく時間の問題で出てくるように思う。
どこが先に出してくるのだろうか?
今は、「ビ-ルからいろいろな成分を抜いた/0にした」、
という技術・ノウハウを訴えるマーケティングが主流である。
あくまでもビールジャンル・お酒ジャンルというパラダイムの中で語られている。
従ってビールが飲めない状況、状態の人への訴求マーケティングとなる。
もしかすると、この「0ビールジャンル」の味の技術・ノウハウを使えば、
麦を核としたおいしいソフトドリンクを、たくさんつくれるのではないだろうか。
ビールと気づかれないように!
といった人目を避けるような、隠れ飲料のような存在から、
世間の目にきちんと晒すようなマーケティングスタンスが必要なステージに入ってきているのでは??
「大麦からできたソフトドリンク」というアプローチで考えれば、
清涼飲料としての商品開発はもっと面白く、花開くように思う。
マーケティングライフサイクルで見ると、
「0」サブジャンルのマーケティングステージは、
第二次段階に入ったといえそうだ。
今、ビール業界は「0」が旬である。
A.「0ジャンル」のデビュー:
まず、キリンが09年に「キリンフリー」を出した。
アルコール成分0である。
発酵というプロセスを無くしてアルコール0%ビール?を実現した。
ついで、アサヒのクリア。
その後、「ダブル0」で、アルコール、カロリーの両者を0にして上市した。
サントリーは、さらに糖質を0にして「オール0」というネーミングで上市した。
売れすぎて1カ月で販売中止となってしまった。
ビール全体の売筋ランキングで、
5つほど「0ジャンル」ビールがランクインしている。
ビールを飲めない人に、飲めないオケージョンで、
大人気である。
妊娠している人、運転中の人、スポーツをしている人・・・・・
味が抜群という。
お酒がすきな人が飲んで十分耐えられ、
かつおいしいという。
単純ビール代替で、仕方なく飲んでいる、
ということではないところが凄い。
プロの香りの聞き手が苦味といい、甘みといい、バランスは半端でなくすごいらしい。
苦味、甘味のテーストでの苦労は半端ではなく超㊙の企業秘密という。
それなりのハイテク、ハイノウハウということらしい。
ここで忘れられてならないのは、「0ジャンル」も食品である。
原点はおいしいということがなければならない。
「0」の味付けは、
ビールが好きな人が、いつでもどんなときでも飲んでビールの味が味わえる、
さらに独特な味わいも感じられるという目標で開発されたという。
それを見事にクリアした。
B.ビール業界の凄さ:
ビール業界の過去を見ると、
古くは、ドライ戦争、パッケージ戦争、価格戦争、発泡酒戦争、
最近では、第三のビール戦争と、
キリン、アサヒ、サントリー、サッポロの4社は熾烈な争いを繰り返してきた。
ビール会社が凄いと思うのは、一社が何かすると他社がすぐ追随してくるその足腰の強さ、対応力、背景にある技術・ノウハウの蓄積の奥深さである。
ビール業界は、
日本の産業界でもっとも競合が激しく、
ダイナミックで見ていてわくわくする産業ジャンルである。
考えてみればビール会社は食品会社とはいいながらも、
半端でない装置産業で重厚長大産業である。
会社規模も日本有数のものである。
また、発酵という太古の昔から自然界にある、食の原点的な技術の宝庫でもある。
ビール会社というと、ビールを扱うので身近な存在だが、
冷静に産業視点で見ると、実は生活者からもっとも遠い、装置産業の雄であり、ハイテク企業である。
C.「0」に見るサブジャンル理論:
本論にもどる。
マーケット育成期では、協争原理(協争/競争ではなく)が重要である。
「0」ビールカテゴリー(サブジャンル)でも同様である。
一般的に、サブジャンルマーケットの争奪戦では、
各社がライバル意識をむき出しにして争う。
しかし、その各社のエネルギーの総量がそのサブジャンルを活性化し生活者へマーケット(商品)を認知させ定着させる。
しかし、その後が問題となる。、
そのサブジャンルで一位となって利益を謳歌するのは一社である。
・ビール分野(=ドライビール)ではアサヒの「スーパードライ」、
・プレミアム分野ではサンロトリー「ザ・プレミアムモルツ」、
・第三のビール分野では、キリンの「のどごし生」、
・ 発泡酒分野ではキリンの「淡麗」
となる。
今回の「0ジャンル」ではどうなるのか?
ここに面白いマーケティングの鉄則がある。
カテゴリー(今回で言えば0サブジャンル)ライフサイクルの中の、
参入時期(サイクルの開拓期)と成長前期、成長開始期、成長最盛期、・・・
という節目では、
マーケティング戦略のスタンスがまったく異なる、
という鉄則である。
「0」カテゴリーでも同じである。
つまり、キリンが最初にでて、プライオリティをとったとしても安穏とはしていられない。
すく到来する次の節目(成長初期)では、マーケティングのパラダイムは大きく変わる。
その変わったマーケティングのリンク(フレーム)での戦い方はまったく異なる。
いわゆる6Pが変わる。
プロダクト、プロモーション、プライス、プレース、
ポジショニング、パーソネル(ターゲット)が違ってくる。
商品に求められるニーズが変化するからである。
まず、マーケットに大量消費感がでてくる
ターゲットが拡大し、
様々な属性の人、様々な飲用機会がでてきて、
マーケットシーンが多様化し、きめ細かい施策が求められてくる。
例えば、広告宣伝、販促が俄然多くなる、
プライスの争いも厳しくなる(価格低下がおこる)
チャネル・売り場での陳列、場所、POPなどもガラッと変わる
競合(マルチプレーヤー)の出方も多様になり、
それに伴ってマーケティングの施策が多様になり、
かなりきめ細かいセンスも必要になる。
もちろんスピードも要求される。
当然ながら、商品の技術開発・進化への要求水準、スピードも俄然厳しくなる。
要するに、
いままで一番で、オンリーワンで上市したということ、シェアが一番だった、
ということには、
何の意味もなくなるということである。
(これが重要な点!!!)
その節目々々で最適、最高のマーケティング戦略を組んだメーカーが、
次のステージでは勝つという鉄則である。
(それ以前にたとえ負け犬だったとしてもチャンスはある!)
過去には、
日産サニーに勝ったトヨタカローラの例、
キリンラガービール、各社のドライビールに勝ったアサヒスーパードライの例
いろいろな教訓がある。
この稿おわり
追記:予断として!
ノンアルコールビールの20歳未満の人への訴求をどうするか?
大手4社ではなかなか出来ないかもしれない?
10代に飲酒への習慣をつけてしまうことの是非が問われかねない?
等の背景もありそうだ。
自主的規制も働くように思われる。
マイナーな地ビール会社がゲリラ的に出すということはあるかも知れない。
パッケージを完全に変えて、見た目はビールのような雰囲気をなくし、
清涼印象のような風情をかもしだして販売するという、
グレーゾーンでの上市は時間の問題かもしれない。
実際には、ワイン(お酒)と果汁飲料(通常飲料)で雰囲気の似ているものは多い。
お酒と普通のドリンクの際を微妙になくしている。
清涼飲料としての、ビール風ソフトドリンクの可能性は、
論理的にはかなりあることになる。
恐らく時間の問題で出てくるように思う。
どこが先に出してくるのだろうか?
今は、「ビ-ルからいろいろな成分を抜いた/0にした」、
という技術・ノウハウを訴えるマーケティングが主流である。
あくまでもビールジャンル・お酒ジャンルというパラダイムの中で語られている。
従ってビールが飲めない状況、状態の人への訴求マーケティングとなる。
もしかすると、この「0ビールジャンル」の味の技術・ノウハウを使えば、
麦を核としたおいしいソフトドリンクを、たくさんつくれるのではないだろうか。
ビールと気づかれないように!
といった人目を避けるような、隠れ飲料のような存在から、
世間の目にきちんと晒すようなマーケティングスタンスが必要なステージに入ってきているのでは??
「大麦からできたソフトドリンク」というアプローチで考えれば、
清涼飲料としての商品開発はもっと面白く、花開くように思う。
マーケティングライフサイクルで見ると、
「0」サブジャンルのマーケティングステージは、
第二次段階に入ったといえそうだ。