しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

すばらしい新世界 ハックスリー著 松村達雄訳 講談社文庫 

2013-11-18 | 海外SF
本作、1932年発刊、‘12年ローカス社オールタイムベスト29位
オールタイムベスト100では3番目に古い作品です。

オーウェルの「1984年」と並ぶ代表的ディストピア小説です。

本作の存在は小学生のとき星新一のエッセイなどでたびたび紹介(ハックスレー的などという表現)されていて知っていました。
この本を入手したのは多分小学校6年生くらいのとき、地元の古本屋で50円で購入。
(価格は書いてあった)

奥付見ると、昭和49年11月15日の初版、

買ったのが昭和56年位。

多分私の未読本のなかでも一番長いくらいに積んでいた本です。
「SF」の古典として「必読書」っぽい感じがあり買ったのですが...。
当時の私では歯がたちませんでした。

内容(裏表紙記載)
人工授精やフリーセックスによる家庭の否定、条件反射的教育で巧妙に管理される階級社会――かつてバラ色の陶酔に包まれ、とどまることを知らぬ機械文明の発達が行きついた“すばらしい新世界”!人間が自らの尊厳を見失うその恐るべき逆ユートピアの姿を、諧謔と皮肉の文体で描いた文明論的SF小説。

読んでみて第一に思ったこと。
「うーん、これは小、中学生の私には無理」(笑)
人にもよるのでしょうが、私だったら会社に入って2、3年の25-6歳が読む適齢期だったような気がしました。
「1984年」は今年読んでかなりツボにはまりましたが、本作は「青春」な感じが43オヤジには今一つ入っていけないものがありました。
社会や異性に認められないコンプレックスとか「純粋」な恋愛感情などなどは比較的若い人の方が共感しやすいのではないでしょうか。

とはいえさすが歴史に残る代表的ディストピア小説。
いろいろ考えさせられる部分がありましたし、相当力を入れて書かれているのはよくわかりました。

ハックスレー家は生物学者を多く輩出している家系のようで、遺伝学的な描写や、生物学的描写は1930年代とは思えないですね。
生物学的にユートピアを創出していく発想はとてもユニークと思いました。

人間を発生レベルと潜在意識レベルで完全に制御して、テクノロジーの進歩で物質的(精神的にも薬で)満たされているとすれば、ある意味そこに住む人にとっては本当に「すばらしい」世界といえるのかもしれません。
主観的に幸せであればいいのか?どうかという問題ですね。
そのような社会のなかでアウトサイダーが活躍する物語です。

この社会実現性が「?」な気がしたのは、一部の権力者は「自我」を残しているわけで彼らが権力欲のようなものを克服できるか?と、このような社会のテクノロジーが退歩していかないかどうか?というところでしょうか。
まぁ一応アウトサイダーを包み込む仕組みも残しているわけですが...。

1984年の方が社会単位での権力欲とかいったものは深く突っ込んでいた気がします。

他、作中野蛮人サヴェッジが総統ムスタファ・モンドと政治やら社会について議論しますが、野蛮人のことばの発想は「シェークスピア」のみ...。
それだけで議論になるのか???ちょっと奇異な感じを受けました。
ジャレド・ダイヤモンドが「銃・病原菌・鉄」の中で文明人よりも未開人の方が平均的な「知性」は「高い」というのを思い出したりしましたが...。
でもちょっと無理があるような気はしました。

あと最後場面での野蛮人を追う「マスコミ」の激しさは今でも実現しているような気がしました。
野次馬根性はある意味人間の普遍的本能かもしれませんね。

細かく言えば突っ込みどころもあるとは思いますが、いろいろ考えさせられ、ディストピア小説としてよくできている作品だと思います。
中、高生にはお薦めしませんが....。

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