しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

サリーはわが恋人 アイザック・アシモフ著 稲葉明雄他訳 ハヤカワ文庫

2017-07-29 | 海外SF
アシモフの短編集です。

夜来たる」の感想でも書きましたが本書はアメリカでの発刊時には「夜来たる」と一冊で”Night fall and Other Stories"として出版されたものを二分冊したものの後半部分となります。(原題”Night fall two")

年代順に他短編集未収録作品が掲載されています。
「夜来たる」が5編に対して本書は15編収録ですからショート・ショート含め比較的短い作品が多いです。

これも「夜来たる」で書いたことと重複しますが、アシモフのSF作品読破を目標にしています。
短編集は本作読むと「変化の風」と「ゴールド」(+「コンプリート・ロボット」収載の数編)で読破できるつもりです。

本書はまったくプレミアついていませんが…ブックオフでは見つけられなかったのでamazonで購入(1円+送料)

アシモフの他短編集同様著者本人による解説も楽しめます。

内容紹介(裏表紙記載)
アップル・グリーンに輝く流線形の車体に高性能の陽電子頭脳を搭載した完全自動制御の夢の車、それが“サリー”だ。ところが、そのサリーを盗みだそうとする、とんでもない男が現われた!―――表題作はじめ偉大な科学者ジョーンズ博士が発明した惚れ薬が巻き起こす、若い恋人たちの悲喜劇をユーモラスに描く「当世風の魔法使い」見るからに醜悪な異星人に襲われる美女という、パルプ雑誌でおなじみのパターンを逆手にとって、アシモフ流にアレンジした「この愛と呼ばれるものはなにか」など、巨匠がさまざまな技法を駆使して紡ぎだすヴァラエティ豊かな傑作短篇15篇を収録。


1951-1967年に発表された作品が収録されています。
短い作品が多いので食い足りない部分はありますが、「巨匠」アシモフのSFに対する愛と作品に対しての変わらぬスタンス、熟練を感じられる作品集です。

とくに「熟練」ですが年を追うほど「うまーく」まとめている感じがあります。
その分新鮮味は薄くなっていのをどうとらえるかですが…。

下記各編紹介と感想です。

○正義の名のもとに In a Good Cause─1951 稲葉明雄訳
銀河系宇宙連邦の心臓部の摩天楼地帯にある広場、その中央に立つ彫像はどのような人物で何をしたのか?

ずいぶんひねった話ですが、主人公(彫像の人物ではない)には後の「ファウンデーションと地球」などのあの人物(存在)の行動と同様な偽悪的なところがあります。
この時代からアシモフ的美学のようなものが確立していたのかもしれません、社会派アシモフを感じられる作品です。

○もし万一…… What If─ 1952 小笠原豊喜訳
運命的な出会いを経て結婚した夫婦、ノーマンとリヴィ。ニューヨークへ向かう列車の中で彼らと相席になった男は..。

アシモフいわく「真剣なロマンスはこれが唯一」の作品
確かにアシモフには珍しく真剣な恋愛小説で、ファンタジー色あふれる作品。
もやっとした感じで味わい深い作品です。

○サリーはわが恋人 Sally 1953 稲葉明雄訳
自動車に陽電子エンジンが搭載されるようになり、養車院と呼ばれる施設の管理者の基に現れた男は…。

アシモフのロボットものとも世界観の違う「陽電子頭脳」ものです。
「車」ということもあり「マルティバックもの」とも異なるわけですが、三原則に従わないという点では同一な気がします。
車自体人間よりは強大な力を持っているわけで「考えることのできる車」って確かにちょっと怖いかもしれないなぁという気にはなります。
「自動運転技術」の実用化も「もう少し」な現代的視点で見るとさらに怖さがさらに味わえそうです。

○蠅 Flies 1953 小川隆・斎藤ひろみ訳
大学の同窓会で20年ぶりとなる再会を果たした男3人サイバネティクスの権威となっていたポールンのみたものとは...。

ちょっと理解しずらいラストだったのですが…。
アシモフ本人の解説によると本来タイトルに「リア王四幕一場36~37」をつけようとしていたとのこと。
該当箇所あたると
”人は虫けら(蠅)と同じよ。
のときも息子のことを思うたが、しかしわしの心は息子に心からの同情はできなかった。
詳しい事情を知ったのはその後だ。
子供が気まぐれに虫けら(蠅)をいじるように、神々もわれわれを弄ぶ。
神々は戯れにわれわれを殺すのだ。”

とあります。
なんとなーく理解できましたが…ひねりすぎかつ、作中の「蠅の王」が殺虫剤の研究をしているというのも...(笑)

○ここにいるのは─ Nobody Here But─ 1953 小川隆・斎藤ひろみ訳
工科大学に努める数学者と電気技術者。彼らは共同で人工頭脳の小型化を試みていた。
が…その人工頭脳が...。

アシモフいわく「まず書かない」素直でスマートでもてるが「頭」は「まぬけ者」の物語。
典型的な「喜劇」です、アイディアは単純ですが楽しめます。

○こんなにいい日なんだから It’s Such a Beautiful Day 1954 山高昭訳
ある朝”ドア(DOOR)”が故障し。登校を控えた息子は別の方法で学校へ向かった。昔ながらのdoorを開け戸外へ踏み出したのだが…。

「広所恐怖症」なアシモフとしては皮肉な作品(笑)
ドアとドアの間の空間は果たして無駄なものなのか?、主人公の少年を応援したくなる作品です。

○スト破り Strikebreaker 1957 小尾扶佐訳
直径数百マイルそこそこの小惑星エルシヴィア。地球からやってきた社会学者が調査に訪れ見たものはこの特殊な環境に構築された社会の、頑なな拒否反応の一端であった。

アシモフいわくとても気に入っている作品なようですが…。
批判が直接的すぎてそれほど出来は…(笑)
アシモフの共通するある種の正義(差別・偏見に対する)が感じられる作品です。

○つまみAを穴Bにさしこむこと Insert Knob A in Hole B 1957 小隅黎訳
宇宙ステーションで貨物船から吐き出される補給物資を待ち受けた二人の男性が見たものは…。
ショート・ショートです。
宇宙ステーションという非日常的な場での二人の男性の「普通」の苦労がおかしい。

○当世風の魔法使い The Up-to-date Sorcerer 1958 山高昭訳
治安判事であるナイトリーは独身を通している。友人が問いただすと「少し前にすんでのところだった」とのことなぜ成就しなかったのか?

これまた今一つ理解できませんでした。
ギルバートとサリヴァンの「魔法使い」が下敷きになっているようですが…。
日本人には(少なくと私には)シェイクスピアよりさらに馴染みがない…。
あらすじをネットで見てみましたが…。
最後に登場する女性はどういう意味があったのでしょう?

○四代先までも Unto the Fourth Generation 1959 小川隆・斎藤ひろみ訳
青年マーテンは忙しく働く若手ビジネスマン。いつもの様にあたふたと過ごす彼の目につくのはレフコヴィッチ?いやルーコウィッツ?やがて彼が会ったのは…。

「レフコヴィッチが連呼される多数出てくる作品を書く」というお題で書いた作品のようです。
いささか不自然な感はありますが…ファンタジィとして味わう作品ですね。

○この愛と呼ばれるものはなにか What is This Thing Called Love? 1961 深町眞理子訳
目の前に並ぶ二つのサンプルは明らかに違う。それでも二つの個体は同じユニークな種族で「彼らは繁殖する際に二つの個体が協力し合う」と言うが…。

長さ的にはショート・ショート、1937-38年頃の異星人に女性が服を引き裂かれるようなSFを取り上げたプレイボーイ誌の記事を皮肉るパロディです。
(ややこしい...)
「真剣なロマンス」ではないですが…結末は結構ロマンスしているような…(笑)
1アイディアな作品ですがシンプルなコメディとして楽しめます。

○戦争に勝った機械 The Machine That Won the War 1961 小隅黎訳
十年来続いていたデネブとの戦いに勝利を収め、マルチバックも束の間の休息を得た。戦勝を記念した祝典の最中、司令官、主任プログラマ、主任技術者3名の告白は…。

これも長さはショート・ショート。
設定はSFですが...最後に出てくる二進法のコンピューターいいですねぇ(笑)

○息子は物理学者 My Son, the Physicist 1962 小隅黎訳
ある騒動で混乱する政府の建物へ場違いな老女が訪れた。彼女は自分の息子の物理学者を訪ねてきたのだが…。

これまたショート・ショート 「通信」を扱うPR誌用に書いたものらしいです。
全然PRになっていないような気がしますが…アシモフの女性観を反映したほほえましい作品です

○目は見るばかりが能じゃない Eye’s Do More Than See 1965 小隅黎訳
銀河には実体を放棄した知性が漂っており、ある時ふと思いだし物質を用いた新たな芸術を出す模索し、一兆年も昔の彼の姿を再現しようとしたが…。

これもショート・ショート。
プレイボーイ誌の依頼で「お題」に基づき書いた作品ですが、プレイボーイ誌には没にされた作品だそうです。
SFらしい雄大さはありますが…発想は安直かなぁとも思います。


○人種差別主義者 Segregationist 1967 小川隆・斎藤ひろみ訳
ある男が非常に高度で限られた医療処置を受けることになりその男は金属製心臓を望むが…。

長さ的にはこれもシュート・ショートですかねぇ。
アボット社のPR誌掲載の作品ということで「医療」がお題。
ラストの意外感ありきの作品ですが、「平等」とは?を問い続けたアシモフらしい作品です。


前述もしましたが、手慣れておりどれをとってもそれなりに楽しめます。
「蠅」と「当世風の魔法使い」は今一つ理解できませんでしたが....。
コメディ・ユーモアはアシモフらしい軽妙かつとてもSF的に皮肉が効いている文章と展開で楽しめますが....。
出されたお題(テーマ)を基に書いた作品が多いこともあり「これはすごい」というのもなかったように思いました。

収載作のなかで私的に好きな作品は正統派ロマンス・ファンタジィの「もし万一」とアシモフが「ある意味」楽しんで書いただろう「こんないい日なんだから」ですかねぇ。

両方アシモフらしくない作品と言えそうで楽しめました。(後者はアシモフらしいともいえますが)

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