しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

人間の手がまだ触れない ロバート・シェクリイ著 稲葉明雄・他訳 ハヤカワ文庫

2013-04-12 | 海外SF
昨年末大森のブックオフで450円で購入。
最近ブックオフに行くとほぼ文庫海外小説のハヤカワと創元の段を覗いており、掘り出し物があるとなんだか幸せ。

本書も昔からSFの名作として名高いですが、かなりの期間絶版になっていた模様。
少なくとも私がSFを読んでいた80年代(小学生高学年-高校生)には出ていなかったはず。

昔から古本屋に行くのが趣味でよく探しましたが見つからなかった本のひとつなので入手しただけでうれしかった。

入手したのは2007年1月に復刊された新版、字は大きくなっていますが新訳というわけではない。
もしかしたら80年代からずーと絶版状態だったんだろうか.....ある意味すごい。

解説によるとシェクリィは日本での人気はすごいように書かれており、「筒井康隆氏などは和製シェクリィと呼ばれていた」(筒井氏本人の書評)とあり、たしかにそんな感じもありますがよく出す06年のSFマガジンオールタイムベスト翻訳短編でも名前が出てこない、ローカス誌の短編小説ランキングでも出てこない。
忘れられた作家なのでしょうか....。

本書はシェクリィの第一作品集で1952-1953年に雑誌に掲載された作品を集めたもの。

内容(裏表紙記載)
このままでは、ふたりとも餓死してしまう! 手違いのため食料を積み忘れた宇宙艇乗組員は、前方に現れた人席未踏の惑星に着陸し、食料を調達しようとするが!?ブラックなユーモアにあふれる表題作、時空にできた割れ目に挟まってしまった男の奇妙な冒険を描く「時間に挟まれた男」、殺人が特定のルール化で合法化された社会を舞台にしたサスペンス「七番目の犠牲」ほか、奇想天外でウィットに富んだ13編を収録する傑作集

とりあえず読んでみての感想。
最初の5編がすごい出来だと思いました。
乾いた調子で「不条理」というか常識を全然違う視点で眺めた世界が描かれた作品でうなりました。
頭がグラグラする感じ、素晴らしい。
「鋼鉄都市」を読了後読み出しましたのですが、「現時点で読んだ場合アシモフよりかなり上?」とまで思いましたが、表題作「人間の手がまだ触れない」から後の作品は乾いた感じが薄れ、若干安直かなぁという感じでレベルは正直落ちました。
この程度ならアシモフの落穂拾い作品でも十分書けそうなレベル(???)
でも全体として今読んでも十分通用する作品群です、一読の価値はあります。

ただ後半の作品も日本のSF作家やら漫画家がいかにも書きそうな内容だなぁと思いましたので、日本人向きな作家なんでしょうねぇ。
解説をみても初期の日本SF界に与えた影響は大きかったようですのでまぁ似てくるんでしょうねぇ。

以下各作品。

○怪物
度胆を抜かれました。
教訓じみたことをいわずこれを描けるというのはすごい才能です。

○幸福の代償
21世紀の日本を予言しているような作品。
ローンを抱えている中年オヤジにはキツく効くお話です。

○祭壇
ファンタジィ。
同じ場所で次元を変えていく手法は見事。
これもなんだかグラグラする。

○体形
ラストがちょっと教訓じみていて「?」ですが、これも常識をひっくりかえす発想。
うなります。

○時間に挟まれた男
着想としてはよくありそうなお話(「百億の昼と千億の夜」などもこんな設定ですね)ですが、それを終始乾いた調子で書く手腕がすごい。
SFだなぁ。

○人間の手がまだ触れない
この辺から安直な展開な気がする。
常識の世界でドタバタさせている感じです。
まぁつまらなくはない。

○王様のご用命
私は安直な気がしました。
アシモフにも似たような作品があったような。

○あたたかい
ファンタジィ。
不思議な香りですが、ヒネリがもう少し聞いていて欲しい。
嫌いではない。

○悪魔たち
星新一あたりが書きそうな作品。

○専門家
若干教訓じみたところもありますが着想が面白い。
お酒好きな専門家たちに共感を感じました。

○七番目の犠牲
これも星新一あたりもしくは藤子不二雄(AでもFでも)書きそうな展開。
スマートにまとまっていますが、グラグラまではしない。

○儀式
官僚主義を皮肉っているんでしょうが直接的すぎてどうも。

○静かなる水のほとり
ロボットもの、お涙ちょうだいものなんでしょうが...。
もう少しひねりが欲しいです。
「大きな古時計」的な展開はいかにも日本人が好みそうですが。

とにかく最初の2編、「怪物たち」と「幸福の代償」でびっくりしましたが、さすがにこのレベルでは続かないんでしょうね。
続いていたら物凄い作家として記憶されていたのではないでしょうか。

同作者では手持ちに「地球巡礼」があるのでそのうち読んでみようと思います。
(その前にいろいろたまっているのでいつになるかは???ですが)


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