しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

火星人の方法 アイザック・アシモフ著 小尾芙佐・浅倉久志訳 ハヤカワ文庫

2014-03-04 | 海外SF

ドゥームズデイ・ブック」読了後なんだか虚脱状態になってしまい長編を読む気にならず、昨年末実家からもって帰ってきたアシモフの短編集である本書を手に取りました。

実家にあったので読んでいるはずなのですが..内容をまったく覚えていませんでした。

アシモフの短編では「銀河系の多くの星に繁殖している人類の起源の謎」について書いた作品がなんだか記憶に残っていて、本書に収録されているかなぁと思っていたのですがなかった...。
もう他にアシモフの短編集を持っていない…記憶違いなのか???不思議です。

さて本書、アシモフがSF作家として油が乗り切っていた1955年発刊。
表題作「火星人の方法」は’12年ローカス誌オールタイムベスト中長編部門28位と評判も高い作品です。

内容(裏表紙記載)
火星植民地は長年の苦労の末、ほとんど自給自足できるようになった。ただしいまだに地球に頼らなければならない物がある。水と食料だ。特に水だけはどうにもならない。ところが地球には余分な水はないといって、その供給を制限するというのだ。地球には1.5×1000の6乗トンもの水があるのに! そこで火星の人々がとった火星ならではの方法とは・・・・・・? 表題作のほか、何一つ異常が認められないにもかかわらず、植民団全員が病死してしまった謎の惑星ジュニア――その秘密を探ろうとする科学者たちと完璧な記憶力を持つマーク少年の活躍を描く「まぬけの餌」など傑作四中短編を収録。

とりあえずの感想、アシモフの短編集はみんな同じに感想になっていますが…。
「よくも悪くもいかにもアシモフらしい短編集」

基本SF的アイディアをざんざん盛り込んで「ちゃっちゃっ」と仕上げている感じ。
じっくりと考えて書いているとは思えない。(笑)
「まぬけの餌」などは、もっと主人公の心理や立場・葛藤などを丁寧に書き込んで仕上げればいい作品になりそうな気がするのですが...。
そこまで書き込まず割とライトな作品になっています。

というわけで本書収録全作、現代のSFファンの眼から見ると「ありがちなアイディア」と「雑な作品」になってしまうかなぁという気もします。
でもまぁ全編「つまらない作品」というほどの駄作にはなっていないのですが「すごい」作品もないかなぁというのが正直な感想、アシモフ的だ(笑)

各編感想など。

○火星人の方法 The Martian Way
自給自足で火星を開拓している「火星人」たちは水だけは地球から入手していた。
地球からの水を止められた火星人の取った方法は...。

火星軌道上のスクラップ回収人、水で駆動するロケット、火星人の水を得る手段などSF的アイディアは盛りだくさんで、当時のSFとすれば斬新なアイディア盛りだくさんの作品だったんだろうなぁとは思いますが
ネタを塩胡椒でちゃっちゃっと炒めたような作品なのでさめると(現代からみると)ちょっとつらいような気もする。(笑)
じっくり書き込めばもっと良くなる気がしますが、ライトな作品になっています。
なお最後地球に対して開き直るところの描写はアシモフが楽しんで書いている感じでとても好きではあります。

○若い種族 Youth
子どもたちが見つけた動物はとても奇妙だった、一方でその親たちは交渉相手の異星人を待っていたのだが...。

現代SFファンからすると、まぁありがちな展開とありがちなラストという感想になる作品かと思います。
オチをそこに持っていかなくてももっと情感たっぷりに仕上げればブラッドベリ風に情感が出る気がするのですが….。
そうならないのがアシモフですね。(笑)

○精神接触 The Deep
移住先を見つけようとしていた異星人が精神だけ地球に来て体感した感情とは…。

これも主人公の「母」的存在などもっと深く書きこんでいけばいいと思うのですが...。
ワンアイディア的作品になってしまっています。
序盤のハード的設定はかなり凝っているんですけどねぇ、もったいない..。

○まぬけの餌 Sucker Bait
コンピューターが選んだ最適移住先惑星ジュニアは過去移民団が全滅したことがあったその謎に立ち向かう科学者と「記憶機関員」。

「記憶機関員」の設定そのものが、コンピューターとインターネットがこれほど普及した中では時代遅れ感はありますが、逆にこれだけ普及して頼り切っている時代に人間があらゆる記憶を持っておくということが大事?という感じも受けましたのである意味新しい問題なのかもしれません。
主人公の屈折ぶりがなかなか魅力的なのでその辺もっと書き込めば名作になったような気がします。
本書収載作品の中では一番好きです。

全体的に辛口評価になりましたが、1950年代ということを考えればSF的発想は斬新だったかと思いますのでいい作品集だったんでしょうね。
もっと丁寧に書いていれば現代でも十分通用するようなキラリとひかる部分は各編感じるのですが...。
「アシモフ」短編は結構いい加減に書いている感じを受けます。

その辺「聖者の行進」の記事でも書きましたが確信犯なんでしょうねぇ。
もったいないなぁ。

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