しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

アマノン国往還記 倉橋由美子著 新潮文庫

2016-08-06 | 日本小説
倉橋由美子のSF(的)作品です。

1986年発刊、1987年泉鏡花賞を受賞(wikipediaによるとマンボウ賞も受賞しているようで…こちらの方がより気になりますが…)しています。

倉橋由美子の作品は先日「聖少女」を読んだのみなのですが、私の中で「いつかは読もう」という作家の位置づけで、古本屋で著作を見かけるたびに購入しています。
本書も10年位前に購入してそのままになっていました。

ふっと気が向き読んでみました。。

内容紹介(裏表紙記載)
モノカミ教団が支配する世界から、幻の国アマノンに布教のため派遣された宣教師団。バリヤの突破に成功した唯一の宣教師Pを待っていたのは、一切の思想や観念を受け容れない女性国だった。男を排除し生殖は人工受精によって行われるこの国に〈男〉と〈女〉を復活させるべく、Pは「オッス革命」の遂行に奮闘するが……。究極の女性化社会で繰広げられる、性と宗教と革命の大冒険


上記の内容紹介「オッス革命」のところがなにやら大江健三郎チックですが、読んだ印象はひたすら「エロ」で、そんなに難しい話ではありません….多分。

未来(と思われる)モノカミ教団が独裁的に支配する地球上の世界で、異色で謎の存在で不可思議なバリアで保護された鎖国状態となっていて、ほぼ女性で構成されているアマノン国に往還した宣教師Pの物語です。
往還記とはなっていますが本当に往ったのか…還ってきたかも最終期には怪しいような気はします…。

アマノン国、80年代の日本的社会を風刺している風でもあり天皇制やら宗教、マスコミ、政治等々当時の日本の社会を批判している部分もあるのでしょうが…そこはそんなに鋭い批判という感じでなく、まぁ「滑稽だねー」くらいなイメージです。

女性が支配する世界では宗教やら政治が「理念」的な面が薄れよりあけすけかつ実利的にになっているという見方は面白かったです。
お寺のお坊さんはわかりやすくお金のためだけに動いています。
そんな世界でもビッグマザー的存在の黒幕エイコス(田中角栄をイメージ?)はそれなりに理念的に動いていた感じもあるので「社会を支配するにはある程度理念的なものが必要」というメッセージもあったのかなぁとも思います。

対するPは「モノカミ教普及」というかアマノン国支配のため「オッス革命」=「アマノン国の女性とセックスしまくる」ことに注力し、アマノン国の政界の有力者や有名人とひたすらセックスしまくるテレビ番組「モノパラ」を企画し大当たりさせます。

書いていて恥ずかしくなるくらいあけすけですが….。

冷静に考えれば「そんなもので支配できるのか?」という話なのですが、本書の中ではPのその方面の非凡な才能の力により見事にその戦略が成功するようになっています、いやはや….。
著者の写真見ると真面目そうな風貌なのでこんな話を書くようには見えないのですが….意外ですね。

まぁ性描写はそれなりに巧みでよくも悪くもエロ小説として読ませています。
純愛の対象として、ティーンエイジャーの秘書(本書では「セクレ」なる呼び名)ヒメコを最後まで精神的な対象と残しておいたりするじらし方もまた巧みです….。

その他なんとも不気味な存在の不死人=イモタル人や天皇的存在=エンペラを描いた部分が不可思議感でていましたがなんだかそこだけ描写が浮いていた感じはしました。

ラストも唐突かつ力技過ぎるような…。
ギリギリ夢オチではないんでしょうが肩すかしされた感じはあります。

まぁ読み物として読んでいて面白い話ではあり、骨太で個別のエピソードは印象に残っています。
終盤のボスキャラとの相撲の場面などもなかなか迫力ありますが….。
ただ全体としてみると何ともまとまりないような気もしますし、何やら肩すかし感はありました。

「聖少女」の緊張感あふれる印象と大分異なります。
単なる失敗作なのか純文学者が娯楽小説を書くとこんな感じになるのでしょうかねぇ。

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