ウィリスの「空襲警報」収載のスピーチで本書「大宇宙の少年」がウィリスの最初に読んだSFで、SF作家になるきっかけだったというようなことが書いてあり興味を持ちました。
丁度ハインラインの「夏への扉」の感想を書いているときだったこともあり手に取りました。
本自体は2,3年前にブックオフで見かけて購入済でした。
本書の解説でもローカス誌の「ハインライン生誕百周年記念特集」(2007年8月号)でウィリスが「本書が一番好きなハインライン作品だ」と語っているのを紹介しています。
なおウィリスのハインラン作品ベストは「大宇宙の少年」「夏への扉」「ダブル・スター」「宇宙に旅立つ時」「ルナ・ゲートの彼方に」だそうです。
自著「犬は勘定に入れません」に「ボートの三人男」が登場するのも本書の影響だとも語っているとのこと。
ウィリスの上げるハインライン作品がほとんどジュブナイル作品であるのをどう評価するかですが….。
「夏への扉」を書いた翌年の1958年に書かれた本作は巨匠ハインラインのジュブナイルでも評価の高い作品であることは間違いないでしょう。
内容紹介(裏表紙記載)
宇宙服は小さな宇宙ステーションだ――高校生のキップは懸賞に応募し、一等は逃したが、本物の中古の宇宙服を手に入れた。自力で整備し、着用して散歩しつつ夏休みを過ごす。だがやはり宇宙服を処分して大学に進もうと考えたそのとき……通信装置に着陸誘導を求める女の子の声が入ってきた! 彼は謎の宇宙船に誘枴され大銀河への旅に。50年代の傑作。(『スターファイター』改題)
一読後の感想、とてもハインライン的作品です。
説教くさいところ、なにやら哲人政治的な形態への憧れ、それと対極(?)にある科学的認識の的確さ、ドラマティックなストーリー展開と魅力的な登場人物といったところが特徴ですね。
月に行くことは夢ではなくなっているが、とても困難な時代。
高校生がなんとしても自分の力で月に行くことを決める。
そのための手段は…石鹸会社の懸賞に応募すること。
なんとか当たるためにドラッグストアで働き、5,782枚の石鹸包装紙を集め応募のための広告コピーを5,782通り考える。
なんとも涙ぐましい….。
その懸賞に「快勝」とはいかないわけですが、懸賞として宇宙服を手に入れます。
まやかしではなく宇宙で使われた本物の宇宙服が来たのですがあちこちガタがきており少年は夏休みいっぱいかけて独力で整備します。
リークチェックをヘリウムで行うなど描写が細部まで手を抜かずされており楽しめました。
1958年時点で宇宙服について「熱問題」まで含めここまで詳細に考察するハインラインの科学的センスには舌を巻きます。
やがて少年は月世界やがては冥王星、さらには..恒星感旅行・銀河系を抜け出しと遠くへ旅をすることになります。
少年自ら整備した宇宙服が月世界で活躍するところ、月面歩行の描写は相当科学的知見がないと書けないような描写でハインライン先生、ジュブナイルといえども一切手抜きはありません。
月面でのキップ・おちびさん・ママさんの冒険行もちても楽しめました。
おちびさんの頑張りとキップの「自尊心」もとてもアメリカンではありましたが…。(笑)
いまは「惑星」とされていない冥王星の描写は….現代でも正体よくわかっていないわけですが大気があるという想定はあたっていたようですね(wikipedeiaで調べてみた)風が起きるかどうかは???ですが….。
また活火山があるかどうかも???ですが、なにか元ネタがあって書いたんでしょうね。
緻密な科学的考証に比べ、登場人物は分かりやすく悪役は悪役、善玉は善玉で政治・道徳的な主張もストレートすぎるほどアメリカンですがまぁジュブナイルですからね。
ハインラインといえば「夏への扉」でロリコン疑惑がありましたが、「もうすぐ12歳」の天才少女「おちびさん」ともうすぐ高校を卒業する17歳のキップが惹かれあうのどうねんでしょうかねぇ…。
あとキップとおちびさんが地球を救う場面は、手塚治虫のW3(ワンター3)と似ているような…元ネタなんですかねぇ(W3は1965-66年)
そういえばその場面で「ネアンデルタール人が人間の祖先でない」というような描写がありましたが、科学的根拠があったのかハインラインの直観なのか….???でした。
素直に読めばひたすら「前向き」なキップの大冒険をとても楽しめる作品だと思います。
また宇宙服をいじるところは、機械いじりやらバイクいじりが好きな「男心」をとてもそそります。
ある意味宇宙服=オスカーが主人公ですからねー(原題:Have Space Suit-Will Travel)
深く考えると….どうかなぁ(笑)
最後に本作、矢野徹氏と吉川秀実氏の「共訳」になっていますが、その辺のいきさつを矢野徹氏が「嬉しいあとがき」として書いています。
とても本作にふさわしいエピソードです、なんともハインライン大好き翻訳者矢野徹さんらしい話です。
↓宇宙服いじりしたい!という方もその他の方もよろしければ下のバナークリックいただけるとありがたいです!!!コメントも歓迎です。
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丁度ハインラインの「夏への扉」の感想を書いているときだったこともあり手に取りました。
本自体は2,3年前にブックオフで見かけて購入済でした。
本書の解説でもローカス誌の「ハインライン生誕百周年記念特集」(2007年8月号)でウィリスが「本書が一番好きなハインライン作品だ」と語っているのを紹介しています。
なおウィリスのハインラン作品ベストは「大宇宙の少年」「夏への扉」「ダブル・スター」「宇宙に旅立つ時」「ルナ・ゲートの彼方に」だそうです。
自著「犬は勘定に入れません」に「ボートの三人男」が登場するのも本書の影響だとも語っているとのこと。
ウィリスの上げるハインライン作品がほとんどジュブナイル作品であるのをどう評価するかですが….。
「夏への扉」を書いた翌年の1958年に書かれた本作は巨匠ハインラインのジュブナイルでも評価の高い作品であることは間違いないでしょう。
内容紹介(裏表紙記載)
宇宙服は小さな宇宙ステーションだ――高校生のキップは懸賞に応募し、一等は逃したが、本物の中古の宇宙服を手に入れた。自力で整備し、着用して散歩しつつ夏休みを過ごす。だがやはり宇宙服を処分して大学に進もうと考えたそのとき……通信装置に着陸誘導を求める女の子の声が入ってきた! 彼は謎の宇宙船に誘枴され大銀河への旅に。50年代の傑作。(『スターファイター』改題)
一読後の感想、とてもハインライン的作品です。
説教くさいところ、なにやら哲人政治的な形態への憧れ、それと対極(?)にある科学的認識の的確さ、ドラマティックなストーリー展開と魅力的な登場人物といったところが特徴ですね。
月に行くことは夢ではなくなっているが、とても困難な時代。
高校生がなんとしても自分の力で月に行くことを決める。
そのための手段は…石鹸会社の懸賞に応募すること。
なんとか当たるためにドラッグストアで働き、5,782枚の石鹸包装紙を集め応募のための広告コピーを5,782通り考える。
なんとも涙ぐましい….。
その懸賞に「快勝」とはいかないわけですが、懸賞として宇宙服を手に入れます。
まやかしではなく宇宙で使われた本物の宇宙服が来たのですがあちこちガタがきており少年は夏休みいっぱいかけて独力で整備します。
リークチェックをヘリウムで行うなど描写が細部まで手を抜かずされており楽しめました。
1958年時点で宇宙服について「熱問題」まで含めここまで詳細に考察するハインラインの科学的センスには舌を巻きます。
やがて少年は月世界やがては冥王星、さらには..恒星感旅行・銀河系を抜け出しと遠くへ旅をすることになります。
少年自ら整備した宇宙服が月世界で活躍するところ、月面歩行の描写は相当科学的知見がないと書けないような描写でハインライン先生、ジュブナイルといえども一切手抜きはありません。
月面でのキップ・おちびさん・ママさんの冒険行もちても楽しめました。
おちびさんの頑張りとキップの「自尊心」もとてもアメリカンではありましたが…。(笑)
いまは「惑星」とされていない冥王星の描写は….現代でも正体よくわかっていないわけですが大気があるという想定はあたっていたようですね(wikipedeiaで調べてみた)風が起きるかどうかは???ですが….。
また活火山があるかどうかも???ですが、なにか元ネタがあって書いたんでしょうね。
緻密な科学的考証に比べ、登場人物は分かりやすく悪役は悪役、善玉は善玉で政治・道徳的な主張もストレートすぎるほどアメリカンですがまぁジュブナイルですからね。
ハインラインといえば「夏への扉」でロリコン疑惑がありましたが、「もうすぐ12歳」の天才少女「おちびさん」ともうすぐ高校を卒業する17歳のキップが惹かれあうのどうねんでしょうかねぇ…。
あとキップとおちびさんが地球を救う場面は、手塚治虫のW3(ワンター3)と似ているような…元ネタなんですかねぇ(W3は1965-66年)
そういえばその場面で「ネアンデルタール人が人間の祖先でない」というような描写がありましたが、科学的根拠があったのかハインラインの直観なのか….???でした。
素直に読めばひたすら「前向き」なキップの大冒険をとても楽しめる作品だと思います。
また宇宙服をいじるところは、機械いじりやらバイクいじりが好きな「男心」をとてもそそります。
ある意味宇宙服=オスカーが主人公ですからねー(原題:Have Space Suit-Will Travel)
深く考えると….どうかなぁ(笑)
最後に本作、矢野徹氏と吉川秀実氏の「共訳」になっていますが、その辺のいきさつを矢野徹氏が「嬉しいあとがき」として書いています。
とても本作にふさわしいエピソードです、なんともハインライン大好き翻訳者矢野徹さんらしい話です。
↓宇宙服いじりしたい!という方もその他の方もよろしければ下のバナークリックいただけるとありがたいです!!!コメントも歓迎です。
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じつは私が初めて読んだハインラインがこの作品でして、
子供向けに翻訳されたものを小学校高学年で読みました。
ある意味、作者が想定した通りの読者だったのかな?
結果、すっかり作者の術中にはまり、SF好きになってしまいました。
その後読み返していませんが、懐かしい作品です。
こんにちは。
少年向けということは福島正実氏の抄訳ですね。原書で影響された人も多いんでしょうが、
福島正実氏訳で影響受けた人が日本にもいっぱいいるんでしょうねぇ。
私のファースト・ハインラインは同じく福島正実 氏訳「夏への扉」でした。
こちらも影響は...大きいですね^_^
スゴイ!